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新戦力で課題を打開…ロティーナ体制2年目の上積みとは【J1クラブ展望/C大阪】

2020.02.21

開幕戦で大分と対戦するC大阪 [写真]=Getty Images

 ミゲル・アンヘル・ロティーナ監督に率いられた昨シーズン、セレッソ大阪は立ち位置による優位性で相手を凌駕することをベースに、攻守において組織的なスタイルを志向した。攻撃では、ボールを後ろからつなぎ、攻め急ぐことはせず、相手の陣形を見定めて局面で数的優位を作り、打開する。守備時も決められたポジショニングがあり、攻撃から守備に切り替わった際のバランスも常に気にかけ、危険なスペースを埋め、ピッチに穴を空けることは少なかった。

 序盤は新たなプレーモデル習得に苦しむも、途中から戦術が浸透し始めると、最終的には5位でフィニッシュ。“変革の1年”としては上々のシーズンを送った。もっとも、残した数字は長所と課題を顕著に示している。25失点はリーグ最少の一方で、39得点は上位チームの中では少ない。今季を迎えるにあたり、改善すべきポイントは明確だった。それは“攻撃の上積み”だ。
迎えた今季最初の公式戦、2020 JリーグYBCルヴァンカップ第1節の松本山雅戦は、昨季の公式戦では1度しかなかった逆転勝ちを収め、早くも攻撃の活性化が結果となって表れた。豊川雄太の獲得や都倉賢の復帰でFWの層の厚みも増したが、プレシーズンマッチの京都サンガ戦も含め、攻撃陣で大きなインパクトを残したのが、2試合ともに右サイドハーフを務めた、山形から加入した坂元達裕だ。そもそも、ロティーナ監督の頭の中に、右サイドに左利きの選手を置くプランは就任当初からあった。メリットは、中にカットインして入っていけること。右利きとは取れる視野も違い、攻撃にバリエーションが増える。昨季のリーグ開幕戦では左利きの舩木翔を右ウィングバックで試していたほど、こだわりも強かった。

 既存選手の大半が残留した今季。先発における変更は、今のところ水沼宏太(横浜F・マリノス)が移籍して抜けたこのポジションのみ。もちろん、水沼も昨季の躍進を支えた一人であり、チームへの貢献度は高かったが、両者はタイプが異なるため、この一つの変更でチーム全体に様々な変化が生まれた。まず、坂元は個ではがせる。昨季のチームに欠けていた“ドリブル突破”という新たな武器が加わった。他にも、切り返して左足でゴールに巻いて向かう鋭いクロスもあれば、中にカットインすると見せかけて、縦に仕掛けて右足でクロスを上げることもできるなど、多彩なバリエーションを持つ。個だけではなく、作りや連係でも新たな効果は生まれている。坂元が仕掛けて相手を引き付けることで、右サイドバックの松田陸がフリーになる。坂元がボールを持った際に松田が攻撃参加してDFを引っ張れば、坂元が空いて中を見る時間ができる。2人の関係性で、右サイドで時間と溜めができれば、逆サイドもフィニッシュに備える準備ができる。マテイ・ヨニッチのパスから松田、坂元とダイレクトで右サイドを崩し、最後は丸橋祐介が仕留めた松本戦の2点目のようなシーンは、これから先も見られそうだ。得点力アップを果たす上で、進化を遂げる“右サイド”は、今季のC大阪の注目ポイントになる。


【KEY PLAYER】MF 17 坂元達裕

今季公式戦初戦となった松本戦で早速輝いた坂元達裕 [写真]=J.LEAGUE


「ドキドキ坂元」。ルヴァンカップ第1節の松本戦で、ヤンマースタジアム長居に掲げられた横断幕だ。早速、サポーターの心を掴んだ様子だが、選手たちの反応も同様。宮崎キャンプでは、柿谷曜一朗が「すぐにフィットした。一緒にチームを引っ張っていきたいし、自分たちでいい攻撃を作っていける確信がある。チームを強くしてくれる選手だと思っている」と坂元を絶賛していたが、松本戦後は「坂元は前に運べる分、相手も下がる。相手からしたら厄介な選手だと思う。僕たちにとっては強みになっていく」と丸橋も語るなど、チームメートも賛辞を惜しまない。当の本人は、「常にインパクトを残すプレーをしていかないと、こういうレベルの高い舞台では生き残れない。1試合1試合に懸けているし、『失敗したら終わり』くらいの気持ちでやっている」と、常に“背水の陣”で挑んでいる心境を明かす。自身初のJ1挑戦。「清武さんや曜一朗さんのような高い技術を持った選手たちと一緒にプレーすることで学ぶことは多い」と謙虚に現状を捉えている。昨季のJ2では、知る人ぞ知る存在だった。今季、J1の舞台で活躍すれば、その名は全国に広がり、将来的な日本代表入りも夢ではない。坂元自身、そういった希望を胸にC大阪入りを決断したが、その心には、常に「山形サポーターへの感謝」の思いがある。「山形のサポーターには、昨年すごく支えてもらった。『頑張れ』と快く送り出してもらったので、セレッソで結果を出して、期待に応えたい」。古巣への思いも胸に、大阪で飛躍を遂げることを誓う。

文=小田尚史(サッカーライター)

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