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代名詞の速攻はそのままに、攻撃に“プラスアルファ”を【J1クラブ展望/湘南】

2020.02.20

[写真]=湘南ベルマーレ

 今季掲げるスローガンに、湘南ベルマーレの見どころは隠されている。すなわち、「PROGRESSION -前進-」だ。

 新シーズンを迎えるにあたり、浮嶋敏監督は語っている。


「もともと持っている縦に速い攻撃は変わらず大事にしながら、カウンターではないシーンでいかに前進していけるか。速く攻められない状況も当然あるわけで、そこの攻撃の質をどう上げていくかが課題。湘南スタイルをより良くするためにも攻撃の質を高めなければいけない」

 たとえば昨季、ボールを奪ってから10秒以内の得点がリーグでも上位のデータを弾き出したように、ハイプレスや攻守のよどみない切り替え、ボールを奪うや一気呵成にゴールへと殺到する攻撃は、湘南の代名詞と言えるだろう。背景には、相手を凌駕する走力や球際の強さがあり、押し込まれた際に体を張る粘り強いディフェンスも含まれている。いわゆる湘南スタイルだ。

 アカデミーダイレクターを長らく務め、昨季終盤よりトップチームの指揮を引き継いだ浮嶋監督は、これまでクラブとして培ってきた哲学を自分たちの軸に据えたうえで、縦に速い攻撃が封じられた際にいかにボールを動かしゴールを奪うか、さらなる得点力の向上を期して、攻撃のプラスアルファに目を向けている。事実、始動から1月に行ったスペインキャンプを含め、トレーニングや練習試合、ミーティングを通じてチームは戦術の理解と共有を深めてきた。

 新たな取り組みとともに、フォーメーションの変化も見逃せない。3バックはこれまでどおりながら、指揮官は選手個々の特徴を踏まえ、2トップに3ボランチという3−5−2を一貫して採用している。期限付き移籍から復帰したメンバーを含め、14人の仲間が新たに加わったなかで、チームの競争力は増し、また組み合わせも多彩だ。人数分の個性が切磋琢磨し、活発に意見を交わしながら、日々コンビネーションの向上に余念がない。

 シーズン初戦の硬さもあったろう、リーグ開幕に先駆けて行われたJリーグYBCルヴァンカップ大分トリニータ戦は難しい展開となった。とりわけ前半は高い位置でボールを奪えず、相手に押し込まれ、幾度かピンチも迎えた。ただ、それでも体を張って守るべきを守り、後半修正して流れをつかみ、試合終了間際に梅崎司がPKを仕留めて1−0の勝利を収めた。難しい展開にも粘り強く勝ち点3をもぎ取ることもまた、タフなシーズンを戦い抜くうえでは欠かせぬ術と言えるだろう。今季取り組む戦いの幅は、日々の積み重ねとともに前進していくに違いない。

【KEY PLAYER】FW 20 岩崎悠人

[写真]=湘南ベルマーレ

 攻守にわたる躍動が目を奪う。豊富な運動量をベースに前線で守備のスイッチを入れ、二度追い三度追いやプレスバックなど守備に献身。ボールを奪えば素早く攻めに転じ、豊かなスピードと切れ味鋭いドリブルを武器に果敢に仕掛けていく。相手の背後への意識も抜け目ない。今季チームが採用する2トップの一角に入り、前線で攻守を牽引することはもとより、ゴールへの推進力を生かし、ときにウイングバックを担えるのも強みだ。

 今季札幌から期限付き移籍で加入した。古巣では出場機会が限られたものの、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督のもとでビルドアップや遅攻を学んだ経験は、今季湘南がトライしている取り組みにきっと生かされるだろう。付け加えれば、途中部屋替えがあったスペインキャンプでは、前半は梅崎司、後半は石原直樹と組み、経験豊富な両ベテランからも学びを得たようだ。

 新天地での挑戦となる今季、結果に対する意欲は強い。ゴールやアシストで勝利に貢献すると誓い、実際、プレシーズンの練習試合では仲間との連係の先で得点も記している。自ら局面を打開し、ゴールへの推進力を加速させ、なにより生き生きと躍動するプレーがチームに勇気を与えるに違いない。

文=隈元大吾

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