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【五輪世代の主役は誰だ #1】多芸は無芸? 注目は一芸に秀でた若者たち

左から遠藤、小川、森島 [写真]=Getty Images

 2020シーズンの明治安田生命Jリーグが、いよいよ幕を開ける。優勝争いだけでなく、今夏に開催される東京五輪のメンバー入りを懸けた争いからも目が離せない。そこでスポーツライター3名に五輪世代の注目選手を挙げてもらった。

文=北條 聡

「男子三日会わざれば刮目して見よ」。そんな故事がある。人というのは三日もあれば驚くほど成長する。だから目をこすって、よく見てみなさい――という意味だ。相手が若者なら、なおさらだろう。

 今夏の東京五輪本番まで、まだ半年もある。最終メンバー入りをもくろむ五輪世代が急成長を遂げるには十分な時間か。もちろん、海外組だけではない。国内組にとっても台頭、飛躍のチャンスが等しくある。

 もっとも、本大会のメンバーは狭き門。枠はたったの18だ。そのため、複数のポジションに対応できる使い勝手のいい人材が重宝されやすい。だが、多芸は無芸とも言う。その実はどれもこれも中途半端じゃないのかと。

 そこで、2020年に注目したいのが一芸に秀でた若者たちだ。コレという武器を持った3人の五輪世代にスポットを当ててみたい。

 まず、1人目はジュビロ磐田小川航基だ。とにかく、点を取ることに特化したスペシャリスト。日本では数少ない本格派のストライカーと言ってもいい。

小川航基

今季、ジュビロ磐田に復帰した小川は背番号9を背負う [写真]=Getty Images

 実戦に強い。使えば点を取る。昨年6月のトゥーロン国際トーナメントでメキシコとの準決勝、ブラジルとの決勝でいずれも値千金の同点ゴールをマーク。さらに昨年末のEAFF E-1サッカー選手権の香港戦では史上3人目となるA代表デビュー戦でのハットトリックを演じた。

 得点パターンは多彩。右足、左足、頭を自在に使いこなし、裏抜け、クロスへの飛び込み、ボレー、PKなど何でもござれ。こと点を取ることにかけては多芸多才の人である。昨季は夏にJ2の水戸ホーリーホックに期限付き移籍。17試合に出場し、7得点をマークした。スタメン、途中出場を問わず――である。今季は磐田に戻り、J1昇格へのキーパーソンとして期待されるシーズンだ。

 ただ、典型的な点取り屋だけに周囲の協力は不可欠。出来不出来がアシスト環境に左右されやすい。組み合わせや相性次第で数字が大きく跳ね上がる可能性を秘めた存在だろう。ともあれ、相応の数字を残せば、狭き門をくぐり抜けるだけの資質も資格も十分にある。

 そして、2人目がJ1王者の横浜F・マリノスで左の翼を担う遠藤渓太。この人の一芸は何と言ってもスピード豊かな縦への仕掛けだ。大外からの鋭い切り崩しは、この世代随一の破壊力を秘めている。

遠藤渓太

昨季は途中出場が多かった遠藤。勝負の1年となる今季、サブに甘んじるつもりはない [写真]=Getty Images

 五輪世代の2列目と言えば、海外組の堂安律や久保建英など逸材ぞろいだが、縦に切り裂く力に秀でたタイプは少ない。ウイングに分類できるのは遠藤と相馬勇紀名古屋グランパス)くらいか。その意味で希少価値が大きい。

 昨季の序盤はマルコス・ジュニオール、終盤はマテウスとポジション争いしながら、33試合に出場し、7得点をマーク。途中出場でも結果を残すなど、確実に地力をつけてきた。今季もFUJI XEROX SUPER CUPで途中出場ながらアシストを記録し、敵地に乗り込んだ全北現代モータース(韓国)とのAFCチャンピオンズリーグ初戦では先発に名を連ね、マン・オブ・ザ・マッチに選ばれる働きを演じた。

 ひとたびピッチに立てば、確実に仕事をしてみせる。そんな頼もしい存在へと育ちつつあるわけだ。五輪代表の活動では3-4-2-1という基本布陣との兼ね合いからベンチに回る機会が多かった。2シャドーの一角や守備の負担が大きいウイングバックでは、その持ち味を存分に生かすのが難しいからだ。

 A代表と同じ4-2-3-1の布陣なら一転、左の翼の有力候補に浮上しても不思議はない。縦に深々とえぐって折り返すアシスト量産機でもあるだけに点取り屋とは相性抜群。先に触れた小川や上田綺世鹿島アントラーズ)の得点力を引き出すには打ってつけの人材だろう。

 最後の3人目はサンフレッチェ広島森島司だ。最終ライン手前の狭い空間で巧みにボールを出し入れするトップ下の適材。パスワークのテンポや敵陣での攻め手に変化を加える技術と企画力が素晴らしい。

森島司

今季から広島の10番を背負う森島。16日のルヴァン杯横浜FC戦では2得点を演出した [写真]=J.LEAGUE

 昨季はベンチの信頼を勝ち取り、2シャドーの一角に定着。まだ線は細いが、今季から10番を託されたあたりにクラブ側の期待の大きさがうかがえる。この世代では自らボールをもって斬り込むドリブラーの存在が際立つが、1本のパスやワンタッチで局面を変える森島の異才にも相応の値打ちがあるはずだ。

 しかも、ライバルたちの追随を許さぬ一芸を持っている。プレースキックだ。僅差の勝負になれば、この人の一振りがモノを言うかもしれない。CKはもとより、FKの場面で直接ネットを揺らす大技も備えているのだから頼もしい。特典付きのトップ下というわけだ。

 敵のボールにがっつくプレスの強度を高め、守備のハードワークをこなせば、当落線上からの脱出も難しい話ではない。そもそも森保一監督が広島を率いた時代に見出された秘蔵っ子だ。そのぶん、厳しい目で見られているのも確かだが、利点もまた大きい。

 飛躍も伸び悩みも本人次第。ともあれ、本番は三日後ではない。まだ半年もあるのだ。それまでに見違えるほどの成長を遂げる選手が何人いるか。今から楽しみで仕方がない。

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