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黒船来航でどうする、どうなる、2020年のJ1は?

ポステコグルー体制2年目の昨季、横浜FMはリーグトップの得点力でJ1を制した [写真]=J.LEAGUE

 2020シーズンの明治安田生命J1リーグが2月21日(金)に開幕する。それに合わせ、雑誌『SOCCER KING』で連載中の「北條聡の寝ても覚めてもJリーグ」から、今シーズンを展望した第10回「黒船来航でどうなる?」(1月15日発売号掲載)を特別公開!

 来ちゃいましたね、黒船が。いかにも西洋風のポステコグルー艦隊が横浜に現れて大暴れ――というのが2019年のJ1リーグだったかと。いや、ホントにすごかった。横浜F・マリノスは。

 とにかく、よく回し、よく走り、よく闘った。1試合平均の項目別数値はその証。ボール保持率、走行距離、スプリント回数はいずれも断トツだ。ただでさえ持てる者に走力まで使われたらお手上げだろう。

 何しろ、戦術思想は時代の最先端をゆく西洋のそれ。ピッチを広く使い、外に開いたウイングが縦に仕掛け、守備側の最終ラインと守護神との隙間に素早くボールを転がせばゴールラッシュという寸法だ。技術とスピードを兼ね備えたウイングの活用は西洋の常識でも、日本では異例中の異例。天国にいるヨハン・クライフが「それでよし」なんて言っているかも。

 守護神のパク・イルギュも頭数に入れた「つなぎ」の妙も西洋風。守備側の出方に応じて各々が規則的に位置取りを変えながらボールの循環をスムーズにする。ああ来ればこうするという形が事前に決まっているわけだ。スペースのご利用は計画的に―という具合に。割り当てられたポジションで「一所懸命」になりがちな日本人の癖とは無縁ということですな。

 陣容も3人から5人に拡大された外国籍選手枠をフル活用。そこにカウントされないタイ人のティーラトンも使い、スタメンの過半数を傭兵部隊で固めていた。これまた西洋の常識である。Jリーグの企図する「門戸開放」の流れが黒船を呼び込んだ格好。まあ、史実とは逆ですが。

アンジェ・ポステコグルー

2018シーズンから横浜FMを率いるアンジェ・ポステコグルー監督 [写真]=J.LEAGUE

 ご承知のとおり、西日本でも港のある神戸に別の黒船がやって来た。イニエスタ提督の率いるヴィッセル神戸だ。当初はバグだらけの艦隊だったが、夏場を境にガラっと様変わり。当然、5人の外国籍選手枠をフル活用。さらに横浜FMからリベロキーパーの飯倉大樹まで引き抜き、当世風の陣容を整えて勝ち星を積み上げた。

 思えば2019年は新種のGKが脚光を浴びた年でもあった。パク・イルギョと飯倉、さらに昇格組の大分トリニータにもいましたね。スリルとサスペンスに満ちた「出たがり男」の高木駿が。いや、誉め言葉ですよ。近年、西洋ではこの手のタイプの需要がウナギのぼり。すでに強豪クラブはしっかり大物を抱えて、その恩恵にあずかっている。その筆頭がリヴァプールのアリソンでしょうね。フィードは司令塔も真っ青というレベル。最後尾からタッチダウンパスまで繰り出すような恐ろしい人です。

 日本も個人レベルで「西洋化」が進行中ということか。横浜や神戸の黒船には攻撃陣にも西洋風のスピードスターがいましたね。得点王とMVPの二冠を手にした仲川輝人古橋亨梧が。FC東京永井謙佑を含め、日本の韋駄天たちがこれほど躍動したシーズンもめずらしい。そういえば、リーグ3連覇を逃した川崎フロンターレの御大(中村憲剛)がボヤいておりました。速いって、いいなあ。うちにもテル(仲川)みたいな選手が欲しいなあ――と。

 韋駄天のニーズは最終ラインでも高まる一方。やっぱり横浜の黒船には西洋風の快足センターバックがいましたね。チアゴ・マルチンスが。そりゃ、攻撃陣の高速化が進めば守備陣もそうなる。最終ラインをガッツリ押し上げて戦うなら、なおさら必要かと。戦術思想や陣容ばかりか、肝心の選手たちも西洋風。これが泣く子も黙る黒船の正体だったわけですね。

 で、どうする、どうなる、2020年のJ1は――。

 黒船来航で一気に「維新→開国→近代化」という流れになるかどうか。幕末に見立てれば、坂本龍馬的な存在が指導者に現れるとおもしろい。維新三傑の西郷隆盛、大久保利通、木戸孝允的な人でもいいけれど。とにかく、日本サッカーの近代化は急務と考えるような監督たちが。大分の片野坂知宏監督なんかはその有力候補の一人か。

片野坂

昨季、大分は9位でフィニッシュ。片野坂監督はJ1優秀監督賞を受賞した [写真]=J.LEAGUE

 スタメンはほぼ日本人という和風の編成ながら、やることなすこと西洋風。守護神の高木を組み込んだ後ろからの巧みなつなぎ、適宜移動する各々の位置取り、さらにピッチを広く使ったスペース活用術は横浜FMのそれとそっくりだった。昇格組が主体的にボールを動かして強豪クラブとも互角に渡り合い、9位に食い込んだのだから恐れ入る。間違いなく近代化の担い手でしょう。

 西洋ならば、今オフに資金力に恵まれたクラブに引き抜かれているでしょうね。あちらは仁義なき弱肉強食の世界。日本は良くも悪くも牧歌的かと。ともあれ、今年の大分がどこまでやるのか。片野坂監督率いる維新軍の動向から目が離せませんね。オフの補強がうまく運べばさらに楽しみが膨らむ。

 助っ人だらけの名古屋グランパスも本来は開国派でしょう。ただ、風間八宏前監督が率いた頃はピッチを狭く使って守り、攻める独自路線。西洋式への対抗策を追求しました。後任のマッシモ・フィッカデンティも西洋風というよりも純カルチョ風。今年も黒船には……。むしろ、ツネさま(宮本恒靖監督)率いるガンバ大阪のほうが西洋風に近い。

 一方、いかにも日本風の密集破りで二度も天下を取った川崎は攘夷派か。オーソドックスな堅守速攻を貫くFC東京も開国派に斬りつける新選組みたいな存在かと。どちらも主力に助っ人が少ない点では似た者同士。ただ、ベンチでくすぶっている傭兵が……。で、幕府みたいな存在の鹿島アントラーズはどうなるのか。すべては新体制が始動してからかと。ただ、鹿島は鹿島という伝統を貫くんじゃなかろうか。

 人もクラブもそんなに急には変われない―となると今年も強いか、横浜FMは。しかし、今年はACLがあるので一筋縄ではいかないでしょう。最大の敵は過密日程かもしれない。選手層も厚くする必要がある。とくにセンターバックの補強は急務。負傷離脱のリスクはもちろん、畠中槙之輔が夏に海外進出する可能性も考慮しないと。昨年同様、抜かりのない補強策で万全を期することができれば、黒船の脅威は続くような……。

 そういえば、海外から助っ人を連れてくる場合、世界中にスカウト網を張りめぐらせる『シティ・フットボール・グループ』がこれという人材を推薦する仕掛けが。もうピッチの外まで西洋風となると、そのうち太刀打ちできないレベルへ行ってしまうかも。でも、見る側からすると、和食も味わいたい。西洋風でも日本風でもいいけれど、そればっか――というのだけは勘弁を。

 多様な個性に満ちた2020年を願っております。

文=北條 聡

『SOCCER KING』2020年3月号

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