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徹底したハイプレスで“ワンランク上の”成熟を【J1クラブ展望/G大阪】

2020.02.18

[写真]=J.LEAGUE

 今季のスタートにあたり、3シーズン目の指揮となる宮本恒靖監督は、チームスローガンである『GAMBAISM』になぞらえ、目指すサッカーを言葉に変えた。

「昨年のスローガンでもあった『GAMBAISM』を、僕自身も貫くシーズンにしたいと思っています。我々の強みである攻撃力をもっと磨きながら、より多くの得点を見出せるチームを作っていきたい」


 その実現のため、宮本監督が今季のカギに挙げていたのが「攻撃をするための守備」だ。今年のガンバ大阪について話が及ぶと決まって「ハイプレス」というワードが聞こえてくるほど、プレシーズンから徹底して取り組んできた。

「前線からの守備によって高い位置でボールを奪い、ウイングバックやインサイドハーフを含めて枚数をかけた攻撃が仕掛けられるようになれば、より攻撃にパワーを割ける。それによって連動してボールを奪えるようになれば、うちのチームには宇佐美貴史やアデミウソン、倉田秋、小野瀬康介、藤春廣輝といった前線に飛び出していける選手がいるので、より彼らの強みを生かせる展開に持ち込めると思っています」

 これは何も、前線だけに求めるものではない。たとえボールを奪うゾーンが中盤や後ろになったとしても、「プレッシャーをかける」、「ボールを奪い切る」ことの二つは、戦術以前のベースとして備えたいと宮本監督は言う。試合によってその部分でバラつきがある限り、安定した「結果」を求められないと考え、選手も自覚している。

「僕が前線からしっかり守備をすることは、チームを鼓舞するという意味もある。一番前で、攻撃をリードする選手がハードワークを見せることは味方に対して与える影響も大きい。であればこそ、大げさなくらいにやることを自分に求めていきたい」(宇佐美)

「根本的な局面での強さ、インテンシティを意識することで、攻撃のための守備がより定着する。選手同士の距離感が良くなれば、攻めているなかでボールを失ったとしてもすぐに奪い返せるし、自分たちがボールを保持できる時間も長くなる。そうすると昨年の終盤のようにポゼッション率を高めながら相手を押し込む攻撃がより実現しやすくなると思う」(DF三浦弦太)

 ただし、90分の戦いにおいて最初から最後までハイプレスをかけ続けるのはほぼ不可能だ。そのため、流れや相手の出方に応じて、あるいは夏の暑い時期や連戦の最中は「いつ、どのタイミングでスイッチを入れて畳み掛けるか」といった共通理解が必要だろう。つまり、「理想とするスタイルを臨機応変に使い分けられる、チームとしてのワンランク上の成熟」がタイトルに近づくカギになる。

【KEY PLAYER】FW 33 宇佐美貴史

[写真]=J.LEAGUE


 なんといっても、宇佐美貴史だ。昨年の終盤、コンディションがフィットするにつれて示した抜群のキレは、オフシーズンを挟んでも色あせることなく、今年に入ってからの練習や練習試合では常に目を引く輝きを見せてきた。もっとも本人も言うとおり「公式戦で取れないと意味がない」。だが、少なからず今のパフォーマンスを続けながら早い段階で“1点目”を奪えれば、自身初の得点王も夢ではない。

「どのタイミングで出るか、どういう形で出せるかはすごく大事だし、一発目がスムーズに出ればどんどん乗っていけると思う。だからこそできるだけ早く、と思っています。誰よりも自分が自分に期待しています」

 抜群のトーク力でも知られる宇佐美。彼の周りには常に人が集まり、笑いが絶えないが、それもあってか今季のガンバは例年にも増して雰囲気が良く、いい空気が流れている。宇佐美にそのことを尋ねると、密かな思いを聞かせてくれた。

「僕らにとってのサッカーは仕事でもあるけど、楽しむことも大事やから。チーム内に、ところどころで小さな盛り上がりがあったり、誰かが笑っている瞬間があったらいいなって思う。大げさな言い方やけど、僕と絡んだ人が少しでも笑顔になってボールを蹴るとか、そうなっていけばうれしいし、その楽しさってガンバのサッカーにもマッチすると思う」

文=高村美砂

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