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4バック移行で活きる個の力…眠れる強豪が起こす赤いセンセーション【J1クラブ展望/浦和】

2020.02.18

今季も引き続き浦和を指揮する大槻毅監督 [写真]=Getty Images

 昨季にAFCチャンピオンズリーグ(ACL)で準優勝も、明治安田生命J1リーグでは最終節まで残留が確定しない14位。そこから復権を目指す。クラブ全体の体制としても強化部門は一新された。現役時代を浦和レッズで過ごし、その後は長年GKコーチを務めた土田尚史氏がトップチームの強化責任者に就任。3年計画を打ち出しての強化策で、初年度の今季はACL出場権の獲得と得失点差プラス2桁が明言された。

 昨季途中に就任した大槻毅監督が続投し、オフの補強も4人。しかし、「僕やスタッフはもちろん、人一倍に悔しい思いをした選手たちが残ってやっていくことはプラスになる」と指揮官が話すチームの中身は大幅なリニューアルが図られた。その大きな要素は、4バックへのシステム変更にあると言えるだろう。


 合計27日間にわたった第1次、第2次のトレーニングキャンプでは、その戦術浸透が図られた。大槻監督が陣頭指揮を執る形で作り上げてきたものは、「枝葉を増やすよりも徹底を図る段階」と話すものの、選手たちの言葉を借りれば「サッカー人生で4-4-2をやったことがない人はいない」というオーソドックスなものへの変化だけに、急ピッチで進んだ。その片鱗はキャンプ中の対外試合を5戦全勝して、公式戦の初戦2020 JリーグYBCルヴァンカップ・ベガルタ仙台戦を5-2で勝利したことからもうかがわれる。

 元より、個々の選手たちを見たときのポテンシャルの高さには誰もが一目を置くチームだ。システム変更は、ここ数年の加入選手たちにとって本来得意とするポジションが復活し、同時に本領発揮の期待を高めるものになっている。浦和で3年目のマルティノスと2年目の汰木康也は、サイドハーフとして後方からのサポートを受けながら武器である突破力を存分に発揮する。同じく2年目の杉本健勇は、定位を求められる1トップよりも広範囲に顔を出しながら、マークを外した状態でゴール前に飛び込める2トップの方が確実に生きるだろう。クラブの掲げるコンセプトの1つは「個の能力を最大限に発揮すること」にあるが、それは今季のピッチで表現されるはずだ。

 残す2つは「前向きに、積極的に、情熱的に戦うこと」、「攻守に切れ目なく、常にゴールを奪うためのプレーを展開すること」にある。特に後者は、東京オリンピックの関係で過密日程になるシーズン中に大槻監督の選手起用も含めてチーム全体の運動量を維持できるか、相手チームとの駆け引きの中で崩れないチームの芯を構築できるかが大きく関わる。その課題をクリアできるならば、昨季の順位からダークホース扱いに甘んじている評価を大きく覆す成績を残すことは、決して不可能ではないはずだ。

【KEY PLAYER】DF 6 山中亮輔

本来のポジションに戻り輝きを増した山中亮輔


 浦和で2年目を迎える山中亮輔にとって、4バックへの変更は歓迎する要素しかない。「自信はあるし、このポジションならしっかりできる。3バックのワイドとは選択肢の多さが全く違うし、個の突破だけでなくコンビネーションで崩せるのが一番の違い」と話す左サイドバックの働きは、チームにとって必要不可欠だ。他のサイドバックと比べて中央に進出するプレーに長所を持ち「僕のところでバランスを取りながら、ボール回しを安定させられる」という部分は、柏木陽介やエヴェルトンのような攻撃的な長所を持つボランチを高い位置に押し上げることも可能にする。もちろん、サイドを駆け上がるスピードや、左足での正確無比なクロス、強烈なミドルシュートも大きな魅力だ。ルヴァン杯ベガルタ仙台戦では、自陣から猛スピードで駆け上がると「狙い通り、相手を寝かせて股下を通ことができた」という正確なラストパスで、新加入FWレオナルドのゴールをアシスト。鮮やかな金色に染め上げられ、トレーニングのときからバシッと決まって崩れないヘアスタイルは、ピッチ上でもよく目立つ。中央でのプレーに関わりながら、ここというタイミングで左サイドを疾走する姿は、昨季とは比べ物にならない輝きを放つだろう。


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