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【J1優勝独占インタビュー①】横浜FMを優勝に導いたチアゴ マルチンス…セレモニーで日の丸を掲げた理由とは?

2019.12.10

横浜F・マリノスのチアゴ・マルチンスが優勝後のインタビューで喜びを語った [写真]=兼子愼一郎

 横浜F・マリノスが15年ぶりにJ1リーグを制した。アンジェ ポステコグルー監督の下、2人そろって得点王に輝いたマルコス ジュニオールと仲川輝人、そしてエリキやマテウスら、強力アタッカー陣にけん引された攻撃的サッカーは、王者の称号にふさわしい魅力的なものだった。だが、この男の存在がなければ、タイトルは手に入らなかっただろう。ブラジル人センターバック、チアゴ マルチンスだ。

 昨年8月にパルメイラスからの期限付き移籍で横浜FMに加入したチアゴは、対人の強さだけでなく、ハイラインの後方をカバーする圧倒的なスピードと高いビルドアップ能力を見せつけ、すぐにレギュラーポジションを確保。今季は全34試合中33試合に出場し、畠中槙之輔とともに最終ラインからチームを支えた。


 23歳という若さで母国ブラジルを離れ、日本でのチャレンジを選んだチアゴ。そんな彼はどんな気持ちで優勝の瞬間を迎えたのか。チームが成長した要因はどこにあったのか。優勝直後のインタビューで、思いを語ってもらった。

インタビュー・文=本間慎吾
写真=兼子愼一郎

チアゴ
 
――まずは優勝おめでとうございます! 今の率直な感想を教えてください。
チアゴ ありがとうございます。大きな喜びと、やるべきことをやったという達成感があります。

――タイムアップの笛が鳴った瞬間はどんな気持ちでしたか?
チアゴ なかなか表現するのが難しいけど、今まで積み重ねてきたものが一瞬で蘇ってくるような、頭をよぎるような感じでしたね。あとは自分を丈夫な体に、努力ができる体に産んでくれた親に感謝しています。

――今日の日産スタジアムにはJリーグ史上最多動員となる63,854人のファン・サポーターが詰め掛けました。
チアゴ 今日だけじゃなく、F・マリノスのファン・サポーターは常に、どこに行っても応援してくれて感謝の言葉しかないです。いい時も悪い時も常に応援してくれました。その中でも特に今日の試合は新記録ということで、これだけ多くのファン・サポーターの中でプレーしたのは初めてのことだったので、本当に感謝しています。

――緊張はしましたか?
チアゴ もちろん(笑)。実は昨晩から早く試合がしたいという思いや緊張など、いろいろな感情でソワソワしていたんです。でも、本当にいい緊張感を持ってピッチに入れたし、笛が鳴ってゲームがスタートしたところで頭の中のスイッチがオンになって、しっかりと集中力を高めることができました。

――今日の試合では後半に朴一圭選手が退場してしまって1人少ない状況になり、一瞬だけFC東京に流れが傾きかけたようにも見えました。それでもすぐに修正することができた要因はどこにあったと思いますか?
チアゴ なによりも、『勝ちたい!』という強い気持ちを全員が持っていて、それが前面に出た結果だと思います。残念ながらパギ(朴一圭)くんが退場になってしまったけど、すぐに全員でコミュニケーションを取りました。例えばエリキと話をして、もう少し戻ってほしいとか、そういうコミュニケーションを取れたことが良かった。その中で、自分たちがやるべきことを曲げずに、全員で守って全員で攻撃する。それができたのがリズムを取り戻すことができた要因だと思います。

チアゴ マルチンス

試合後のセレモニーでは日本国旗を肩にかけてスタジアムを周った [写真]=兼子愼一郎

――試合が終わって、最終戦のセレモニーでスタジアムを一周している時に日本の国旗を掲げていたのが印象的でした。どのような思いがあったのでしょうか?
チアゴ 日本に来てからこれまで過ごしてきた感謝の気持ちと喜びを表したくて、日本の国旗を持ちました。来日してからピッチの中でも外でも、日本での生活も含めてすべてが楽しくて、すべてが充実しているんです。本当にいろいろなものをこの国で手にして、本当に良くしてもらっていることが多いので、感謝の気持ちがすごく大きいですね。

――今季は同じブラジル出身のチームメイトが増えました。昨季途中に一足早く横浜FMに加入しているチアゴ選手から、同胞の選手へ何かアドバイスをしたことはありますか?
チアゴ 昨年、僕が来た時はブラジル人選手がいなくて、誰も知らない環境に一人で飛び込んできたけど、ウーゴ(ヴィエイラ)選手やドゥシャン選手を始め、日本人選手のみんながすごく助けてくれました。特に日本人選手はすぐにグループに受け入れてくれたから、こうしてやってこれた。だから僕も同じように、今年新たに加わった選手たちには自分ができることをやって、他のチームメイトに紹介したり、一緒に過ごしたり、日本人選手とも一緒にいる時間を増やすようにして、できるだけ早くみんながチームに溶け込めるように努力してきたつもりです。それが少しでも他のブラジル人選手にとってプラスになったのなら、僕もうれしいですね。でも、なによりもやっぱり僕らは日本人選手たちに一番感謝していますよ。

チアゴ マルチンス

センターバックでコンビを組んだチアゴ マルチンスと畠中槙之輔 [写真]=J.LEAGUE

――今季は退場による出場停止で欠場した1試合を除いて、すべての試合で畠中槙之輔選手とコンビを組みました。手応えはいかがでしたか?
チアゴ ハタ(畠中槙之輔)はすごく素晴らしい選手だから、彼とはとてもプレーしやすいです。そういえば今、思い出したんだけど、退場になって試合に出られなかったのはタカ(扇原貴宏)のせいだから、それは彼に伝えておいてほしいな(笑)。ハタとは今年ずっと一緒にやってきて、常にコミュニケーションを取りながらやっています。言葉が通じなくても、プレー中に目が合えば阿吽の呼吸でできていた部分もあって、お互いに試合を重ねて成長してきたと感じています。彼は日本代表にも選ばれているし、それは僕としてもすごくうれしい。彼がそういう立場になるために、ちょっとでも自分が力になれていたらうれしいですね。

――年間の失点数が昨年の「56」から今季は「38」と大幅に減りましたね。
チアゴ 今年の初めからチームとして取り組んできたこと、なるべく相手にプレーさせないということを、全員が努力を惜しまずに積み重ねてきた結果だと思います。昨年は確かに失点が多かったので、今年はそこにフォーカスして、全員でトレーニングをしてきました。その結果として、攻撃的なサッカーの中で失点を減らすことにつながったと思っています。

――チアゴ選手は昨年8月に加入し、すぐに出場機会をつかみました。Jリーグ、そしてアンジェ ポステコグルー監督が志向する攻撃的なサッカーに慣れるまでに苦労はなかったのですか?
チアゴ サッカーよりも、私生活が大変でした。初めて国を出て、妻は一緒でしたが、家族とは離れることになりました。ブラジルでは違う街でプレーしていても家族と顔を合わせることはできたし、常に家族と一緒にいたのですが、日本に来たことでそれができなくなった。友人とも離れたし、とにかくいろいろな環境が変わりました。もちろんチームメイトはたくさん助けてくれたけど、やっぱり自分の国にいるのとはちょっと違うので、日本の生活に慣れるのが一番苦労しましたね。

――昨年はJリーグYBCルヴァンカップ決勝で敗れて悔しい思いをしましたが、今年はその経験を糧にクラブとして15年ぶりとなる悲願のリーグ優勝を手にしました。この1年で、何が横浜FMを強くしたのでしょうか。
チアゴ ルヴァンカップは今、思い出してもつらい記憶ですし、本当に残念な結果でした。あの時、僕は来日してすぐに決勝を戦うチャンスをもらってすごくワクワクしていたし、タイトルを取って次のシーズンに繋げられると思っていたからね……。でも、今年に入ってメンバーが大きく変わりました。昨年のチームも強かったですけど、監督が就任2年目を迎えたことで、チームがより同じ目標を持って一つの方向を目指すことができたし、全員で日々の厳しいトレーニングを積み重ねることができました。昨年以上に全員が監督の考えを理解することができましたし、それが優勝という結果に結びついたと思っています。

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