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西日本豪雨から1年、「みんなを笑顔に」…広島が復興支援マッチで意地のドロー

2019.07.07

試合前に広島の選手らが募金活動 [写真]=湊昂大

 西日本豪雨から1年を迎えた。昨年7月に西日本を中心に記録的な大雨が襲い、広島だけでも138人が亡くなる“平成最悪の豪雨災害”に見舞われた。そのちょうど1年後の7月6日、サンフレッチェ広島は2019明治安田生命J1リーグ第18節で、ホームのエディオンスタジアム広島にセレッソ大阪を迎えて「復興支援マッチ」を行った。

 試合前には復興支援活動が行われた。ベンチ外だったMF青山敏弘やDF水本裕貴らの現役選手に加え、クラブOBの森崎和幸氏(クラブ・リレーションズ・マネージャー)、森崎浩司氏(アンバサダー)、久保竜彦氏、熊本で震災を経験した巻誠一郎氏らが募金活動やイベントに参加。集まった46万3743円は日本赤十字社を通じて広島県に全額を寄付される。


 キックオフ前には復興支援の映像がスクリーンに映されて、C大阪のサポーターの「広島コール」には暖かい拍手が巻き起こった。両チームの選手は、センターサークルを囲って犠牲者に30秒間の黙祷を捧げた。「災害のちょうど1年後に試合があることもなかなかない」。広島出身のMF川辺駿は被災地への思いを抱いて試合に臨んだ。「サッカーを通じて少しでも復興に貢献できるようにという思いで今日はピッチに立ちました」

 広島は前半こそC大阪にペースを握られ、19分に直接FKで先制を許したが、後半から意地の反撃に転じた。66分に「特別な思いで戦った」というパトリックが力強いヘディングシュートで同点弾。「みんなが少しでも笑顔になってもらえるように、今日来てくれた人にエネルギーをあげられるように、ピッチで戦いました」と自身のゴールで元気を届けた。

 これで広島の逆転ムードが加速した。選手たちは最後までボールを追い続け、ゴールを目指して粘り強く走りぬいた。約1万5000人のファンも拍手と声援で後押しする。選手たちが貫いた全力プレーが人々の心をつなぎ、スタジアムは一体感に包まれた。

 惜しくもあと1点が遠く、試合は1-1で引き分けた。城福浩監督は「昨年のことを考えたら、大変なときに応援に来てくれた方々に勝利で感謝を示したかった」と悔やんだが、「選手が力を出してくれて、(勝利への)姿勢は見せられた」と劣勢から挽回した闘志を称えた。

 試合後は選手たちが「がんばろう広島」のTシャツを着用し、スタジアムを一周して観客に感謝を示した。「こういう試合だからこそ勝って、『がんばろう広島』のTシャツを着て周りたかった。結果には満足していない」。川辺は復興への思いが強いからこそ勝利にこだわった。「復興にはまだまだ時間がかかるので、少しでも貢献できるように、力を注いでいきたい」。

 被災地に勝利は届けられなかったが、選手たちは懸命に戦う姿を見せた。そんなサッカーのチカラが今後も人々を勇気づけていく。

By 湊昂大

Kota Minato イギリス大学留学後、『サッカーキング』での勤務を経てドイツに移住して取材活動を行う。2021年に帰国し、地元の広島でスポーツの取材を中心に活動中。

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