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【サッカーに生きる人たち】全身タイツのサポーター道|コハロン(YouTuber)

2019.03.29

インタビュー・文=東和 誠(スポーツデジタルメディア編集講座1期生)
写真=兼子愼一郎

 味スタの、”全身タイツ”はもはやお馴染みの光景である。全身タイツ姿の彼の名は、コハロン。YouTuberだ。

 サッカー界にも新たな仕事の波が来ている。サポーターとしてFC東京や日本代表を応援する姿が好評を博し、2016年から始めた動画の登録者は2万人を超える。香川選手とインターネットCMでの共演も果たした。


 その突飛な恰好は、どこからきているのだろうか。

「背が高くて顔が長いという変わった体つきが一番シャープに出る衣装を着るようにと、(撮影・編集を行う)『ぽんP』に言われたんです。最初はちょっと恥ずかしさもあったんですけど、注目を浴びるうちにどんどん気持ちよくなってしまって……。今ではこれが正装です」
 
 スタジアムだけではない。この日もそうだったのだが、彼は街中から全身タイツ姿で現れる。彼にとっては全身タイツがまさしく”正装”なのだ。

予想外の反響

 今やJリーグサポーター界隈では名の知れた有名人のコハロン。視聴者の中にはJリーガーもいる。しかし、本人は「まだまだ、有名人なんてとんでもないです」と遠慮がちに言う。

「ただ、動画を見たのをきっかけに試合を見に来てファンになったという方がいたのはうれしかったですね。応援動画を上げている最大の目的が、Jリーグを盛り上げたいことだからです。それが伝わって、新しくファンになってくれた方がいたというのは本当にうれしかった」

 しかし、観戦動画をアップするようになったのは単なる思いつきで、「どうせなら自分たちが本当に好きなものを動画にしてみよう」と、毎年恒例で中学3年生の頃から『ぽんP』と観戦している多摩川クラシコ(FC東京vs川崎フロンターレ)の試合を応援する姿を撮影し、公開してみたことがきっかけのよう。こうした大きな反響が得られたことは予想外だったという。なぜ反響が得られたと思うかと問うと、少し考え込んでから、こう答えた。

「YouTubeを見ている人には、動画をアップしている人が本当に好きでやっているかどうかはすぐに伝わると思います。自分が本当に好きなFC東京の応援にスポットを当てたことが反響につながったんじゃないかと思っています」

 しかし、周囲からの反応は必ずしもはじめから好意的だったわけではないようだ。今では各スタジアムで撮影をしていると次々に声をかけられ、対戦相手のサポーターからも山のような差し入れをもらうコハロンも、当初は周囲からの冷たい視線を感じていたという。

「最初は悪目立ちして、煙たがられているんじゃないかと感じることもありました。色物だろうという目で見られることもありました。しかし、それでも継続して動画を上げ続けていくことで、自分が本当にFC東京、そしてJリーグが好きだと分かってもらえたように思います」

Jリーグの魅力を伝えたい

 Jリーグへの愛が伝わり、多くのファンを獲得したコハロンは、企画を考えるときに意識していることがあるという。

「Jリーグに興味がない方の目線を意識して、試合内容だけでなくて、スタジアムグルメ、イベント、遠征の道中、応援歌、サポーターへのインタビューなどを動画に盛り込んでいます」

 FC東京を応援する動画が中心にもかかわらず、他チームのサポーターからも高い支持を得ている理由がここにあるのかもしれない。Jリーグに興味がない人の目線を意識した結果、すでにJリーグにどっぷりハマっている他チームのサポーターの共感も得られたのだ。

「他チームのサポーターからも共感を得られているのであれば、それはとてもうれしいことです。Jリーグのクラブはそれぞれに魅力があるので、常に他のチームに対するリスペクトを忘れないよう心がけています。それもあって、動画の中には必ず相手のサポーターへのインタビューも入れるようにしています」

 応援しているFC東京だけでなく、相手チームのサポーターにも話を聞く。そんなコハロンは、Jリーグのどのような点に魅力を感じているのだろうか。

「よく言われていることだと思いますが、Jリーグの魅力は、チームの実力が拮抗していて、どのチームにも優勝のチャンスがあること。そして、老若男女が安心して観戦できるということ。フーリガンはいないし、スタジアム内に危険物が持ち込まれることもほとんどありません。外国人にインタビューをすると、その点をよく指摘されます。ゴール裏にも子どもからお年寄りまでいるのが、その証拠です。そしてなんといっても、私が特に魅力と感じているのは応援です。Jリーグの応援歌は耳に残りやすく覚えやすいものが多い。自分がサポーターになるきっかけも応援でした。友人を観戦に誘っても、応援歌や応援の一体感などが必ず話に出ますね。もっと多くの方にJリーグの応援の素晴らしさを知ってほしいと思います」

影響力を高めて、少しでもJリーグを盛り上げる力になりたい

 一方で、一つ残念なことがある。Jリーグの規約で、スタジアム内での動画撮影が一切認められていないことだ。そのため、応援する自分の姿だけを撮影して動画を公開することすらも禁止されている。試合を応援するコハロンを見たいという視聴者の要望は多い。そのことを尋ねると、次のように熱い言葉が返ってきた。

「もっと影響力が高まったタイミングで Jリーグ側に働きかけたいと考えています。自分の影響力はまだまだです。具体的に言うと、Jリーグ側にメリットがないとダメだと思うのでJリーグ公式チャンネルの登録者数(3月11日時点で約35万人)を上回るところまでいかないとお話をさせていただくのは難しいかなと思っています。僕らはJリーグの魅力を広めるために、動画にさせていただいているので、Jリーグに迷惑をかけたくはありません。今後もJリーグのルールを厳格に守りながら表現し続けていきたいです」
 
 最後に今後の活動について聞いてみた。コハロンはJリーグを愛するYouTuberとして、どんな目標を掲げているのだろうか。

「まずは、周りに気持ち悪いと止められるまで全身タイツの観戦動画をYouTube上に公開し続け、Jリーグの魅力を伝えていきたいと思っています。そして、YouTuberではありますが、より魅力を伝えていくためにテレビや他の媒体にも依頼があれば出ていきたいです。そして、FC東京のリーグ優勝をこの目で見たい。また、日本代表がワールドカップで優勝するのも見たい。微力ではありますが、この活動を通じて少しでもJリーグを盛り上げていけたらこの上ない喜びです」

KOHALON TOKYO CHANNEL


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