2019.03.14

清水MF中村慶太の原動力は“長崎への恩”…培われた視野の広さと判断力

今季から清水の一員となった
サッカーキング編集部

 今でこそ明かせる話がある。中村慶太はV・ファーレン長崎に加入する前、少々不満を漏らしていた。

 加入内定のリリースが出されたのは流通経済大学4年時の2015年7月だった。当時、長崎はJ2で3年目のシーズンを戦っており、J1昇格歴はなし。J1クラブへの憧れはあった。加えて、「今までずっと田舎暮らしだったから、もっと都会で生活したい」なんて冗談めかした言葉を口にしていた。実にヤンチャな性格の彼らしい。

 結局、流経大のスタッフ陣が強く薦めたこと、そして本人も「長崎が最初にオファーをくれた」というクラブの誠意に対して感謝の思いがあったことから、早期決断に至った。もしこの時、別の道を辿っていたら、今の中村慶太は存在しなかっただろう。大げさかもしれないが、もうプロの世界からいなくなっていた可能性もある。それだけ長崎への加入は、彼のサッカー人生における大きなターニングポイントとなった。

 プロ4年目の今シーズン、新天地に選んだ清水エスパルスでは、開幕からレギュラーの座を確保している。明治安田生命J1リーグ第2節のガンバ大阪戦では、移籍後初ゴールも決めた。中でも印象的だったのは、大きなサイドチェンジでチャンスにつなげ、清水サポーターからどよめきの声が挙がった場面だ。本人は「何であれでどよめいたのかなって思った(笑)」と受け流したが、それこそ紛れもなく彼が長崎での3年間で培ったもの。少なからず手応えを感じたに違いない。

 ドリブルに関しては、プロ入り前から自身の武器としていた。大学時代にフランスへ留学した際にも、外国人選手を相手に通用すると実感した。ただ、「頑固で、自分が好きなプレーしかしていなかった」という彼の魅力でもある強気な性格は、時に成長を妨げる短所にもなってしまっていた。流経大の中野雄二監督からは、「周りの選手に合わせるプレーができれば、もっと上に行ける」と何度も口酸っぱく言われた。プロとして成功するためには、周囲との連携も大切なこと。頭では分かっていてもプライドが邪魔をし、100パーセント耳を傾けることはできていなかった。

 長崎でプロ生活が幕を開けると、がむしゃらにゴールへ向かうプレーでインパクトを与えることはできても、結果に結びつかない日々が続いた。“ジョーカー”的役割として途中出場するパターンが定着し、先発で出場したい焦りから無理矢理にドリブルを仕掛けてボールを失い、カウンターを食らう場面も少なくなかった。それでも「観客を沸かせることもプロの仕事だから」と自分に言い聞かせ、スタイルを貫こうとしていた。

 高木琢也監督(当時)に先発出場を直訴したこともあった。そこできっぱりと告げられた。「今のままでは、先発では使いづらい」選手だと。

「高木監督は選手との距離が近くて、心に刺さった言葉はいくつもあります。一番は、途中出場が続いていた時期に『プロは結果を出し続けないと、いつか存在を忘れられてしまうよ』と言われたこと。それは選手個人としても、チームとしても同じこと。やっぱり90分間試合に出たかったし、チームが勝つためには、まず高木監督が目指すサッカーを理解しなきゃいけないんだって思いました」

 結果を残し続けなければ、信頼は失っていく。では、いかにしてゴールや勝利の確率を高めていくのか。プロの世界で生き残るために、中村は本気で変わろうとした。それまで正面から向き合うことのなかった戦術理解は「難しかったし、人一倍苦労した」。少し時間は掛かったが、判断力と視野の広さが加わったことで、ここぞという時に繰り出すドリブルはより生かされ、昨シーズン末には複数クラブが関心を示す選手になっていた。

昨季は初挑戦のJ1で7得点を記録した [写真]=Getty Images

「視野の広さはグッと変わりました。それ以前とはもう、見える光景も違って、仲間の良さも見えてきたんです。当たり前のことなんですけど、自分一人じゃなくて、11人でプレーしているんだなって。どうしたら11人の力を最大限に生かせるのか。自分はチームの駒としてどうあるべきなのか、ちゃんと考えるようになりました」

 新天地の清水では、キャンプ中から4バックと3バックを併用する中で2トップの一角やシャドー、サイドハーフなど様々なポジションを任されている。「ポジションによってやるべき仕事は違うけど、差し支えなくできているのは、長崎にいたからこそ」

 約3年半の月日が経ち、改めて冒頭の話を振ってみた。「ハハッ。言いましたね、そんなこと(笑)」と懐かしむ彼は、真っ直ぐな目線で今の心境を明かす。

「(長崎に加入したことは)間違っていなかった。今ならはっきりと言えます。僕も長崎が好きになりました。サポーターはほんとに温かくて、どこに行っても応援してもらえたし、田舎ならではの人柄というか……そう言ったら失礼なのかもしれないけど(笑)。なんだか地元(千葉県大網白里市)に近い雰囲気があって、すごく居心地が良かった。みんな本当にV・ファーレン長崎や選手たちのことを愛してくれていましたし、僕も愛していました」

 移籍後も長崎の試合は映像やSNSでチェックし、「勝ったら自分のことのように喜んじゃいます」と顔がほころぶ。そんな安住の地を離れる決断が簡単でなかったことは、想像に難くない。悩み抜いたからこそ、清水での新体制発表会見で何度も口にした「覚悟」という言葉に重みがある。

「清水に移籍したのは僕自身のキャリアアップのためなので、この選択が間違いではなかったと証明するためにも結果を残したい。でも、それだけじゃなくて、僕が活躍することで長崎の評価も上がっていくと思うんです。僕が結果を出せなければ、『長崎から来た選手って、こんなもんか』と思われてしまう。それは絶対に嫌だから、結果を出し続けることが長崎への恩返しになると思っています」

 長崎サポーターを虜にしたゴールに向かう推進力と、笑顔の映える丁寧なファンサービスは清水でも変わらず。すでに心をつかまれた清水サポーターもいるかもしれない。だが、中村は語気を強めて否定した。

「まだまだ。(サポーターの心をつかめるのは)やっぱりゴールを決めて、チームが勝ってこそ。清水は昔から『サッカーの街』と言われているだけあって、街全体から“熱”が伝わってきます。ここでも認められる選手になるために、結果を残したい。そこはブレずに続けたい」

「結果を残したい」と口にする言葉は変わらなくても、含まれるニュアンスは3年前と違う。自身を変えてくれた長崎のためにも、新たに迎え入れてくれた清水のためにも、中村は“チームの勝利”を最優先に考えながらピッチを奔走する。

文=平柳麻衣

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