2019.01.15

[特別トップ対談] ムンディファーマ×横浜F・マリノス
『イソジン®』ブランドの新商品は 理想的なパートナーシップから生まれた

サッカー総合情報サイト

プロスポーツクラブと企業による“スポンサーシップ”の関係が、時代の移り変わりとともに変化し始めている。2017年からパートナーシップ契約を結ぶアメリカ発祥の製薬会社ムンディファーマと横浜F・マリノス。ムンディファーマ日本法人の社長の木村昭介氏とシティ・フットボール・ジャパン代表の利重孝夫氏(横浜F・マリノスが提携するシティ・フットボール・グループの日本法人)に、企業とプロスポーツクラブの理想的な関係について聞いた。

インタビュー・文=細江克弥
写真=鷹羽康博

 横浜F・マリノスとムンディファーマの関係が注目されたきっかけは、昨年秋に新発売された『イソジン®のど飴』だった。
 アメリカ発祥の製薬会社で世界120カ国以上に展開するムンディファーマは、3年前から日本人なら誰もが知っていると言っても過言ではない“うがい薬”『イソジン®』ブランドのリニューアル展開に着手。2017年には横浜F・マリノスとパートナーシップ契約を結び、密接な相互関係を築いてきた。そうした活動の中で生まれた新商品が、『イソジン®のど飴』である。
 ユニフォームやピッチ看板にロゴを掲出するだけではない、現代的かつ理想的なパートナーシップとは何か。『イソジン®のど飴』誕生の背景には、そのヒントが隠されている。

ファン・サポーターには特別な熱量がある

■木村昭介(きむら・しょうすけ)
1968年生まれ。92年に早稲田大学政治経済学部を卒業し、東燃に入社。ボストン・コンサルティング・グループで製薬会社等のプロジェクトを担当し、ノバルティスファーマ及びサンドでは各部門の責任者を務めた。14年、ムンディファーマ日本法人の社長に就任。


――まずは、2017年夏に始まった両者のパートナーシップについて、その経緯を聞かせてください。

ムンディファーマ 木村昭介社長(以下、木村) 弊社ムンディファーマは、グローバル事業のひとつとして横浜F・マリノスがパートナーシップを締結しているシティ・フットボール・グループ(CFG)傘下のイングランドのマンチェスター・シティとスポンサーシップを結んでいました。そうした背景をきっかけとして、2017年夏、日本法人である私どもも横浜F・マリノスさんとパートナーシップ契約を結ばせていただくことになりました。

 私たちは2016年から消費者向けのサービスを開始し、日本人なら誰もが知っている『イソジン®』というブランドをリニューアル展開してきました。しかし、残念ながら「ムンディファーマ」という社名については、ほとんど知られていません。そうした状況を少しでも変えるための手段のひとつとして、横浜F・マリノスさんとのパートナーシップ契約に至りました。

――いわゆる“B to C”を業態とする企業にとって、消費材のPR手段はいくつもあると思います。その中から“プロスポーツクラブとのパートナーシップ”を選択された理由はどのあたりにありますか?

木村 おっしゃるとおり、より多くの人に知ってもらうという意味においては他にもいくつかの方法があると思います。例えば、テレビCMもそのひとつですね。

もっとも、このパートナーシップで私たちが重視したのは、ただ“知ってもらうこと”ではなく、知ってもらった上で“行動につなげること”でした。そうした意味において、プロスポーツクラブ、特に横浜F・マリノスを支えるファン・サポーターの皆さんには特別な熱量があり、ピンポイントに訴えかけた上での“行動促進”を期待することができる。それによって、私たちの活動とより密接な関わりを持っていただけるのではないかと考えました。

――プロスポーツクラブである横浜F・マリノスとして“できること”について、利重さんはどのようにお考えですか?

シティ・フットボール・ジャパン代表/横浜F・マリノス取締役 利重孝夫(以下、利重) プロスポーツクラブとしてできることは企業の業種やニーズによって異なりますし、そうした多様性や柔軟性こそがスポーツマーケティングの魅力なのではないかと考えています。木村さんがおっしゃられたとおり、ムンディファーマさんのように消費者向けのサービスを展開している企業様に対しては、我々の活動を通じて、ファン・サポーターの皆様に商品の魅力をダイレクトに伝えられるというメリットを提供できる。まずは、その部分が大きなフックになると考えています。

また、プロスポーツクラブにおける従来型のマーケティング手法として、やはりテレビによる試合中継がPR手段の中心に据えられる傾向が強くありました。しかし、時代の変化によって、今やプロスポーツクラブはオウンドメディアを通じたPRのバリエーション、あるいは可能性を広げています。クラブの公式HPには一定数のファンが集まりますし、公式SNSを有効活用することで発信力は高まっています。ファン・サポーターにダイレクトにアプローチできるという側面を活かすためにも、オウンドメディアをうまく活用することで、従来型のスポンサーシップとは違う提案ができるのではないかと思います。

■利重 孝夫(とししげ・たかお)
1965年生まれ。高校時代は読売SCユース所属。東京大学を卒業後、日本興業銀行に入行。アメリカ留学を経て楽天に入社し、要職を歴任しながらヴィッセル神戸の経営にも携わった。2014年11月にCFGの日本法人シティ・フットボール・ジャパンの代表に就任。現在は、横浜F・マリノスの取締役も務める。

木村 確かに、以前と比較するとスポーツマーケティングの“可能性”は大きく拡大しているように感じます。私自身は、ターゲットを絞ったマーケティングがやりやすくなったと感じています。

利重 プロスポーツクラブを支えてくださるファン・サポーターの皆さんには、特別な“熱量”があります。もちろん、スポンサードする相手がマンチェスター・シティという世界的ビッグクラブであれば“マス”に訴えることも可能ですが、横浜F・マリノスにそれはできなくても、無差別的なPR活動よりはるかに熱量の高いPR活動が期待できる。ムンディファーマさんとのパートナーシップは1年半を経過しましたが、その点については、木村さんにも実感していただけているのではないでしょうか。

木村 そうですね。間違いありません。

両者の関係性がなければ新商品は生まれなかった


――ちなみに、木村さんは以前からサッカーとの関わりをお持ちなのですか?

木村 いえ、実はほとんどありませんでした。野球で育った年代ではあるので、サッカーとここまで深い関わりをもったのは、今回のパートナーシップが初めて。まだ1年半という短い期間ですが、本当にいろいろと勉強させていただきました。例えば、選手全員の名前を覚えたり(笑)。

利重 ありがとうございます(笑)。

木村 サッカーを見るようになって、まずは純粋に「面白い!」と感じました。実際にスタジアムに足を運ぶとよく分かるのですが、ファン・サポーターの皆さんのサッカーに対する気持ちが、想像よりもはるかに強い。私どものような製薬会社がどのように受け入れてもらえるのか不安だったのですが、まずはユニフォームの背中の裾部分に「イソジン®」のロゴを入れさせてもらい、ムンディファーマの社名を記したピッチ看板を置いていただくところからスタートしました。私自身が感じたのは、非常に好意的かつ前向きに、ファン・サポーターの皆さんが私どもを受け入れてくださったこと。それはSNS上でのコミュニケーションにも表れていたので、私どもが期待していた「打ち上げ花火のような一過性のものではないパートナーシップ」について、すぐに大きな手応えを感じました。

利重 これは私見ですが、そうしたサッカーファンの熱量の大きさは、“1点の重み”や“1勝の重み”が非常に大きいという特長にも由来している気がします。だからこそ、自分たちが応援するクラブをともに支えてくれるスポンサー企業に対しても、まるで“仲間”のような目線で接してくれる。もちろん他のスポーツにも共通するところがあると思いますが、特にサッカーの場合は“1点の重み”や“1勝の重み”が大きいからこそ、クラブを介してつながるファン・サポーターとスポンサーの密接度も高いのではないかと思います。

――ムンディファーマとして、この1年半の成果についてはどのように感じていますか?

木村 具体的なデータを算出するのは難しいのですが、実感としては非常にポジティブな成果を得られていると実感しています。例えば、横浜周辺のエリアでF・マリノスさんを絡めたイベントを実施すれば、ほぼ例外なく対象商材が飛ぶように売れてしまう。昨年9月にはイソジン®ブランドの新商品となる『イソジン®のど飴』を発売したのですが、やはりSNS上では、F・マリノスのファン・サポーターの皆さんが「(スポンサードしてくれている)ムンディファーマの新商品だ」というリアクションを取ってくださり、『イソジン®のど飴』の存在を広く拡散してくださいました。私たちにとっては、とても嬉しい出来事でした。

――『イソジン®のど飴』については、F・マリノスさんとの関わりから生まれた商品であるとお聞きしました。

木村 私たちにとっても非常に嬉しい誤算でした。『イソジン®』については「茶色のうがい薬」として多くの方に知っていただいていると思うのですが、やはり、時代の変化とともにうがい薬の市場は縮小傾向にあります。そうした状況における“新たな可能性”について、ある日、F・マリノスさんとブレインストーミングのようなミーティングをさせていただいたのです。その中で、「ムンディファーマは製薬会社だが、新商品がいつも薬である必要はない」「日本人にはのど飴文化がある」という話が出て、さらに、F・マリノスさんから「日頃から激しいトレーニングを積んでいる選手たちは、練習後に免疫力が低下して、風邪をひきやすくなってしまう」という話をお聞きしました。であれば、いつでも誰でも手軽にできる感染対策として、のど飴はとても理想的な商材なのではないかと。「そのアイデアは面白い」という話から、あっという間に商品化に至りました。

――発想としては、意外な盲点だった。

木村 そう思います。だからこそ、F・マリノスさんとの関係性がなければ生まれない商品でした。『イソジン®』はとても認知度の高い商品であると自負していますが、我々はブランドホルダーとして、それを古びたものにしない努力をしなければなりません。そうした意味においても、のど飴は理想的な商材でした。イソジンは直接的に“のど”を連想させる商品ですから、のど飴になってもまったく違和感がないですよね。

――確かに。しかも、イソジン®ブランドは他にもいくつかの商品を展開していますが、それらをPRするという意味においても、『イソジン®のど飴』の発売は大きな転機になったのではないかと。

木村 3年前にブランド戦略について見つめなおし、私たちは「総合感染対策」というテーマを掲げてイソジン®ブランドのリニューアルに努めました。そうした背景から、『イソジン®除菌ウェットシート』や『イソジン®薬用泡ハンドウォッシュF』、『イソジン®きず薬』や『イソジン®軟膏』などを展開し、イソジン®ブランドの拡大を続けてきたのです。今回、F・マリノスさんとのパートーナーシップを通じて『イソジン®のど飴』を発売したことで、“うがい薬以外”のイソジン®ブランドについて知ってもらう機会を作ることができましたし、「イソジン®が何か面白いことをやっている」と思ってもらうことができました。その効果は、弊社にとってとても大きかったと感じています。

相互的に価値を高め合える理想的なパートナーシップ

2017年7月のパートナーシップ発表会見では、ムンディファーマCEOのラマン・シン氏(左)と木村社長(右)、横浜F・マリノスのGK飯倉大樹等が出席した [写真]=©Y.F.M


――プロスポーツクラブとスポンサー企業によるパートナーシップの新たな可能性として、利重さんは大きな手応えを感じているのではないかと思います。

利重 もちろんです。ただ、少しできすぎですね(笑)。スポンサー企業様の新商品開発そのものに関わらせていただいたのはあくまでムンディファーマさんとの“呼吸”が合ってこその成果かと。ただ、プロスポーツクラブと企業のパートナーシップが、そうした可能性を秘めていることは間違いないと思います。

だからこそ、私は両者の関係性におけるベースとなる部分がとても大切なのではないかと思います。ユニフォームの背中の裾部分に「イソジン®」のロゴを入れていただいたこと、新商品発表の場に選手を登壇させていただくこと、その他にもF・マリノスというクラブに対して“タッチ”していただけるポイントはたくさんあります。そうしたいくつもの接点を持ちながら、少しずつ関係性が深まり、新しいアイデアが生まれる。『イソジン®のど飴』も、まさにそうしたベースから生まれたものではないかと考えています。

――F・マリノスと言えば国内屈指のアカデミー組織を有していることでも知られていますが、そこにもパートナー企業としての“タッチポイント”があったのでは?

木村 おっしゃるとおりです。「感染対策」に関する商品は年代カテゴリーを問わずに必要とされるものですから、例えば、うがいや手洗いに関する商品を提供してその重要性を訴求することや、子どもたちに対するうがい教室を実施することもできます。トップチームの選手にも感染対策の必要に応じて製品を使っていただいているので、改めて我々の商材との相性の良さを実感しました。


――プロスポーツクラブと企業の理想的なパートナーシップについて、おふたりはどのようにお考えですか?

利重 時代背景が大きく影響していることは間違いありませんが、まずは、両者の関係性が「スポンサー」ではなく「パートナー」として大きく変化していることが言えると思います。プロスポーツ界における従来型の“スポンサーシップ”とは、極端に言えば、企業がクラブに“見返り”を期待しないものがほとんどでした。それはバブル期の“余裕”に由来しており、ある意味では慣習的に続いてきたものだと思います。でも、今は時代が違う。ただお金を出してもらうスポンサーとしてではなく、ともに利益を得る、あるいは互いの価値を高めていくパートナーとしてタッグを組むわけですから、その関係性が一方的なら長続きしません。ですから、まずはより強固で、より深い相互的な関係を築くことが理想的であると考えています。

木村 そうですね。加えて、そうした相互的な価値の高め合いを、決して作為的ではなく自然発生的に享受できる関係が理想的であると思います。私どもも、そもそもの動機として「横浜F・マリノスを応援したい」という思いがありました。その上で、「ところで、こういうアイデアがあるのですが」という話から関係性が発展し、お互いにとってプラスに作用する可能性が生まれる。そうした意味において、やはり根幹にはプロスポーツクラブを支えるファン・サポーターの皆様の熱量があると思います。「イソジン®のど飴」もその熱量によって自発的に誕生した商品だと思っていますし、そこに、プロスポーツクラブとのパートナーシップを結ぶ大きな魅力があると感じています。

――組織の経営に携わるおふたりは、さまざまなチャレンジをしているという印象を受けます。

利重 チャレンジ自体を目的としているわけではありませんが、やはり、クラブとして何らかの特長を持つことの重要性は感じています。そうした特長が、パートナーシップを結ぶ企業様にとっても魅力に感じてもらえればより良い関係が築けると思いますね。

木村 私の場合はチャレンジそのものが付加価値につながると考えていて、保守的と見られがちな製薬業界において、だからこそ立ち止まらずにチャレンジし、新しい価値を生みたいと考えています。頭で考えているだけでは何も始まらないから、とにかく動くこと。そこから見えたことを反省材料として軌道修正し、少しずつ独自の価値を見いだしていく。それがやがて企業のDNAとなる。そうした活動の根源にあるのが、チャレンジ精神であると思っています。

――『イソジン®のど飴』は、そうしたチャレンジ精神を象徴する商品と言える気がします。

木村 そうかもしれません。これは1年前のプランにはまったくなかった事業ですから、少なくとも製薬業界ではあり得ない展開なのかなと感じています(笑)。そうした我々の姿勢と、スポーツ業界、とくにサッカーやJリーグ、横浜F・マリノスさんとの相性はとてもいい。スポーツ業界の動きはとても速く、変化に対応できる柔軟性が常に求められている。『イソジン®のど飴』も、そうした姿勢を持つ横浜F・マリノスさんとのコラボレーションによって誕生した商品ですから、まさに今の我々が掲げる企業精神を象徴する商品であると思います。

イソジン®のど飴

■商品名と容量
イソジン®のど飴 フレッシュレモン (91g)
イソジン®のど飴 はちみつ金柑 (91g)
イソジン®のど飴 ペパーミント (91g)

■特徴
のどにやさしい成分の亜鉛とヘスペリジンにより、のどを総合的にサポートするおいしさにもこだわった新しいのど飴です。フレーバーは「フレッシュレモン」、「はちみつ金柑」、「ペパーミント」で展開します。

■メーカー希望小売価格
300円(税抜)

■発売時期
2018年9月

■商品の詳細はこちら
https://www.isodine.jp/nodoame

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