2019.01.10

貫いた“鉄人の矜持”。中澤佑二は最後まで「プロフェッショナル」だった

今月8日に現役引退を発表した中澤佑二 [写真]=J.LEAGUE
横浜F・マリノスを徹底分析するWEBマガジン『ザ・ヨコハマ・エクスプレス』主筆

『プロフェッショナル』とは中澤佑二のような選手を指す言葉だろう。数々の記録を打ち立てた偉大なDFは、現役引退を決断するまで変わらない姿勢を貫いてきた。その最たる例が徹底された食生活だ。

 脂質の多い揚げ物は一切口にせず、朝から食べる肉も赤身中心。実は興味津々なスイーツも目を輝かせるだけにとどめ、ほとんど口にしなかった。そもそも食さないインスタント食品は、ラベルに表記されている脂質と糖質の含有量を確認してから例外を認める。飲酒や喫煙などもっての外だ。

 これらがストイックの内実だが、一方で『食』の重要性を理解し、しっかり食べることを誰より意識している選手でもあった。30歳過ぎまではとにかく節制を意識した。クラブと代表活動を両立していく状況下で、負傷に見舞われることも少なくなかった。そこで自身二度目のワールドカップ出場となった南アフリカ大会を終えてからは、生活スタイルを少しずつ変化させていく。「最近は節制ではなく、しっかり食べている。食べたらその分、動けばいい」

2013年から2018年にかけてリーグ戦178試合連続フル出場の記録を樹立 [写真]=J.LEAGUE

 そんな鉄人には庶民派な一面もあった。ある時期、『レバニラ炒め』にハマっていた。中華料理屋ならどこにでもある、あのメニューだ。シーズン初めのメディカルチェックでクラブの専属管理栄養士に「鉄分が足りていない」と指摘されたことがきっかけだった。朝早くにクラブハウスを訪れ、練習開始前に補完トレーニングを行う。練習終了後はレバニラ炒めを求めて足早に去り、ご飯をモリモリ食べた。

 自信の源となっていた練習も、その内容を年齢や状況とともにアップデートしてきた。昔はオフの日も休まず、年末年始もフル稼働することで有名だったが、30代半ばを過ぎてからは休むことの重要性に気づいた。「昔は不安が先行してオフの日も走っていたけど、最近はウォーキングでリフレッシュするくらい。走らなくなっただけでも成長。今はオフに走ると疲れが残ってしまう」

 すべてはオフ明けのトレーニングに100パーセントの力で臨むため。こなすだけの練習はしたくない。「練習で手を抜くことは試合で手を抜くということ。キツイのは当たり前」が持論だった。

 偉大な連続試合出場記録が途絶えた昨夏以降は、左ひざ痛に悩まされて全体練習を離れる時間も長かった。それでも通常より早い復帰を果たし、全体練習をしっかりこなした後、リーグ最終節で途中出場ながらピッチに立った。鉄人の矜持と言えるだろう。

昨季のリーグ最終節が現役最後の試合となった [写真]=J.LEAGUE

 経歴から多くの人がイメージしているように、中澤は間違いなく“努力の人”だ。決して才能に恵まれていたわけではない。「自分は下手くそだから」と口癖のように話し、何歳になっても前を行く者を必死に追いかけた。

 道中、努力する内容は変わった。その時々に必要な食事や練習メニューを自身に課し、常に進化を目指す。しかし努力する生き様は、最後まで全く変わらなかった。無我夢中に走り続け、気がついたらゴールテープを切っていた。そんな引退発表だった。

文=藤井雅彦

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