2018.12.24

【ライターコラム from山形】継続と積み上げの重要性が浮き彫りになった2018年。木山体制3年目の来季に試されるクラブ力

木山体制2年目で飛躍が期待された山形だったが、結果は12位と不本意なシーズンとなった [写真]=J.LEAGUE
広告代理店等勤務を経てコピーライターとして独立。2006年からサッカー取材を始め、モンテディオ山形を中心にライティングを行っている。仙台市在住。将棋×サッカーコラボに傾倒する“観る将棋ファン”。

 J2リーグ第39節で水戸ホーリーホックに敗れ、数字上残されていた昇格プレーオフ出場の可能性が完全に消えた。その頃、何度目かの首位に返り咲いた大分トリニータについて、躍進の要因を木山隆之監督に尋ねたことがある。

「積み上げて来たものがあるし、メンバーが変わらなかったのが大きい。補強もうまくいった。あとは、点が取れるところが彼らの一番のストロング」

 この答えはそのまま、今季の苦悩の吐露であるように思えて、強く印象に残っている。

 昨オフの大分は、レギュラーではGK上福元直人とMF鈴木惇が移籍したが、チームの変化を最小限に留めた。一方で、MF丸谷拓也やFW馬場賢治など補強した選手がチームの中心になって活躍。片野坂知宏監督がJ3から継続して育て、新たな戦力を加えてチーム力を積み上げた成果を見事に出した。木山監督は「それは監督の手腕です」と繰り返したが、木山体制2年目の今季は、継続し積み上げを図るにはあまりにも多難なスタートだった。

今季は主力の流出や新外国人選手の不振などで苦しい戦力での戦いを強いられた木山監督は「非常に苦しい1年だった」と振り返った [写真]=J.LEAGUE

 ボールを保持し後方から組み立ててゴールに向かう、木山サッカーの片鱗を見せて2017年シーズンが終わり、飛躍が期待された2018年。その新体制のメンバーリストには、木山サッカーの攻守の体現者だったDF菅沼駿哉(ガンバ大阪)やFW鈴木雄斗(川崎フロンターレ)、司令塔のMF佐藤優平(東京ヴェルディ)、成長株のDF高木利弥(ジェフユナイテッド千葉→柏レイソル)など、昨季のレギュラー数人の名前がなかった。1月の時点で木山は「(2017年の)最終戦に出ていた選手が何人かいないというだけ。一年間トレーニングをしてチームの積み上げを作ってきた選手が大多数残っている。そこに新しい力が加わったので、戦力としては去年より確実にアップしている」と強気の発言をしたが、今季終了後は「僕自身は非常に苦しい1年だった」と本音がこぼれた。

 やはり、選手の入れ替わりの影響は大きかったという。ブラジル人選手を中心に、補強した選手が期待したパフォーマンスを発揮するのにも、予想以上の時間を要した。

「その中で、去年できていたことを諦めて、シーズン序盤で仕切り直して勝点を積んで行くことをチョイスせざるを得なかった」

 開幕戦で水戸に0−3と完敗し、その後も続く失点と守備の内容に危機感を抱いた指揮官は、昨季手応えを得た4−3−3を諦め、第6節から3−4−2−1のシステムに変えた。この頃、出遅れていたベテランのMF本田拓也、DF加賀健一が戻り、少しずつ守備を安定させたチームは第13節から10試合負けなし(6勝4分)。7位にまで浮上した。しかし、センターバックの栗山直樹、熊本雄太の急成長には目を見張るものがあったが、加賀の負傷離脱とともにチームは再びバランスを崩す。シーズン後半は2連勝が1度あっただけで波に乗れず、ターニングポイントになるべきいくつかの試合で最終盤に失点して勝点を失った。結局、一度も6位以内に入ることなくリーグ戦を終えた。

■木山体制3年目の来季に求められるもの

リーグ戦で苦しんだ山形だが、天皇杯ではJ1の3クラブに勝って準決勝まで進出する快進撃を見せた [写真]=J.LEAGUE


 皮肉にも、リーグ戦で苦しんだ後半戦の天皇杯で、J1クラブを撃破する快進撃が始まる。3回戦(7/11)で柏に2−1。4回戦(8/22)はFC東京と1−1、PK戦で勝ち上がる。リーグ戦の合間の水曜日、起用されたリザーブメンバーがここぞとばかりに意地を見せた。そして準々決勝(10/24)では、ベストメンバーを組んで来たJ1王者の川崎を相手に3−2で勝利。一時は3−0とリードを奪う劇的な展開だった。この日のヒーローは、リーグ戦で先発の座を掴みきれずにいたMF汰木康也。3点目をアシストした長距離ドリブルや、川崎のGKチョン・ソンリョンを退場させた仕掛けに、山形サポーターは溜飲を下げた。

 リーグ戦42試合終了後の天皇杯準決勝は、仙台とのみちのくダービーという大舞台になった。だが、川崎戦とは逆に試合の入りで躓き、2度目の決勝への切符を宿敵仙台に譲った。生え抜き11年目で主将を務めたMF山田拓巳は試合後、大きな瞳を潤ませたまま取材に応じた。

「試合後、悔しさを我慢できずに涙する選手も多かった。今日の気持ちを忘れずに、来シーズンを戦うべきだと思う。この悔しさは、ここまで来ないと感じられないもの。この経験をプラスにして来年こそはJ1復帰という目標を果たせるように頑張っていきたい」

 J1に復帰し、定着できるチームづくりをしようと招聘した木山監督の2年目は、まずは下を見てJ3降格を回避するための手当てからスタートすることになってしまった。この原因の全てを「監督の手腕」に求めるのは酷だろう。J1で活躍した選手が海外へ渡るハードルが低くなった一方で、J1クラブはJ2で活躍する選手に常に目を光らせる。自らの下部組織で育てた選手なら尚更だ。2015年にJ1を戦った後は、「J1昇格の可能性が高い」という理由で山形を移籍先に選んだ選手も多かったが、そんなJ1の神通力も、J1から3年も遠ざかれば薄れる。こうした環境の下で、いかに継続したチーム作りの環境を作っていくか。リスク管理を幾重にも考えた、クラブの中長期に渡るプランニングがより求められる時代になった。

 勝点56の12位。昨季以下の結果にも関わらず、クラブはシーズン終了を待たずに木山監督の続投を発表。もう一度、継続と積み上げの環境を整えて木山サッカーの浸透の成果を見ようということかもしれない。栗山、熊本、中村駿など、木山監督の下で成長してチームの中心を担った選手もいる。彼らが今季と同じ方向を向いてサッカーに取り組めるという意味でも、木山続投は良い判断だったと思っている。

 つい先日、チームトップの12ゴールをあげた小林成豪(神戸から期限付移籍)が大分へ完全移籍することが発表された。継続性の視点では出鼻をくじかれた感があるが、年明けには楽天野球団やヴィッセル神戸のフロントで手腕を発揮した相田健太郎氏がクラブの代表取締役社長に就任する。逆説的ではあるが、この大きな変化が、山形というクラブが普遍のフィロソフィーを携えて続いていくためのきっかけになるのかもしれない。

文=頼野亜唯子

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