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【ライターコラムfrom磐田】厳しいときこそ問われる真価…名波監督続投で目指す“黄金期超え”

2018.12.18

プレーオフを制し、J1残留を果たした磐田 [写真]=J.LEAGUE

 2019年のJ1リーグへ、ジュビロ磐田が18番目に名乗りを挙げた。8日のJ1参入プレーオフ決定戦。磐田はJ2リーグの6位から勝ち上がった東京ヴェルディに2-0と完勝した。しかし名波浩監督に笑顔はなく、会見では「来シーズンに向け、個人的な進退について今、話せることはない。負けたら間違いなく辞めるつもりだった。クラブに迷惑をかけるかもしれないが、少し時間をもらえればいいかなと。このゲームに至った責任はすべて自分にあるのは事実」と話した。

 ヤマハスタジアムでの試合後、大久保クラブハウスでは木村稔社長と服部年宏強化本部長が名波監督を待ち構えていた。すぐに三者会談が始まった。時間にして約30~40分。服部強化本部長は「社長から心に響く言葉をいただいた」。続投の受諾へ、思い詰めていた名波監督だったが、首を縦に振るまでの時間はそう長くはかからなかった。


 J1年間優勝3回を誇る名門が、どん底に沈んでいた14年。初めてのJ2で苦しみ、シャムスカ監督の後任として9月に招かれたのは、現役時代に黄金期を築いたかつての中心選手。名波ジュビロが誕生した。

名波浩

2014年9月に磐田の監督に就任した [写真]=J.LEAGUE

 14年はJ1昇格プレーオフ準決勝で山形のGKに許した得点が決勝点となり、1年でJ1復帰を果たすことができなかった。当時の社長が辞任。後任が木村社長だった。ジュビロの前身チームであるヤマハ発動機サッカー部出身。同じサッカー人として、名波監督をバックアップする一方、同監督の防波堤のような存在でもあった。

 その後のチームはとてつもないスピードで巻き返しを図っていく。15年はJ2の2位で自動昇格を果たすと、16年はJ1で13位。元日本代表MF中村俊輔を横浜F・マリノスから獲得した17年は6位に浮上した。

「トップ5」を狙った18年だったが、不運が重なって残留争いへ。12月1日の最終節・川崎フロンターレ戦で後半アディショナルタイムに逆転を許し、13位から16位に転落してプレーオフに回ることとなった。

 木村社長は不振にも関わらず、早い段階から名波監督に6季目の来季続投を要請してきた。10月7日の清水エスパルス戦で1-5と大敗した後、木村社長は「辞めるのも地獄、続けるのも地獄なら、だったら最後までやり切れ」などと名波監督にゲキを飛ばしたという。

 シーズンを16位で終えたが、プレーオフ前の1週間で名波監督続投の考えはさらに強くなった。「厳しいときこそ真価が問われるが、選手、監督、コーチ、スタッフ、クラブ職員がとにかく1つになった。一番下を向いていたのが私だった。結果がすべての世界だが(名波監督就任後)、積み上げたもので、残留という成果を出すことができた」。ジュビロの復活に方向性を示し、具現化している途中で辞めさせるわけにはいかないとの判断だった。

 東京V戦後、ピッチではFW川又堅碁ら数人の選手が木村社長を胴上げした。その2日後、2期4年務めあげた木村社長が今月いっぱいで退任し、ヤマハ発動機顧問の小野勝氏が来年1月1日付で新社長に就任することが発表された。小野新社長は「名波監督、服部強化本部長、この2人を中心とし、ジュビロらしいサッカーへどんどん向かっている。最終的に目指すのはジュビロの黄金期に負けないチーム作り」と継続路線からさらなる進化を目指す考えを明かした。

「サッカー部で入ってヤマハ人生の42年間の集大成がプレーオフまでの1週間。生涯忘れない」と退任会見の最後に話した木村社長。来月からは取締役マネジメントアドバイザーとして、もうしばらく名波ジュビロを見届ける。

文=岩田大五
写真=J.LEAGUE

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