2018.11.14

【会見要旨】引退表明の川口能活「決断は後悔していない。次は指導者として経験を伝えたい」

川口能活
今季限りでの引退を決断した川口。会見中は涙ぐむ場面も
サッカー総合情報サイト

 今季限りでの現役引退を表明した元日本代表でJ3のSC相模原に所属するGK川口能活が、14日に相模原市内で記者会見を行った。

引退を決めた理由は?

――これだけ多くの人が集まっていますが、どんな気持ちでしょうか。
先ほど、会見の前に(MCの)ケチャップさんがこの風景の写真を僕に見せてくれました。その時に、僕のために、これだけのみなさんが集まってくれたことに、本当に感謝の気持ちしかありません。多くの人に支えられて、選手として、サッカー選手として続けることができました。

自分が、まず、サッカー選手として必要な丈夫な体を授けてくれた両親、サッカーに出会わせてくれた兄、指導していただいた先生方、それから、プロ選手として認めてくれた横浜マリノス、ポーツマスFC、ノアシェラン、ジュビロ磐田、FC岐阜、SC相模原のクラブの皆様、そして、アドバイスあるいは常にサポートしていただいた方々、ともにプレーした先輩方、仲間たちには、時には後ろから聞きたくないようなコーチングを……うるさいと思っていたと思うんです。そういう、うるさいコーチングも、快く受け入れてくれた選手のみなさま、そして、家族、子供たち、そして妻。本当に感謝の気持ちしかありません。

――引退を決めた理由について。
実は、この1、2年ぐらいですね、プレーを続けるか、あるいは引退するか、その狭間で揺れていました。サッカーは大好きですし、続けたい。でも、試合に出られない時もありましたし、揺れてはいたんですけど、今年のロシア・ワールドカップをはじめ、日本代表の戦い、各カテゴリーのアジアでの戦いぶりを見まして、僕が代表でプレーしていた時よりも、上のレベルというか、世界で戦える日本のサッカーになってきているなと思ったんですね。その状況の中で、また違った形で貢献したいなと。日本サッカーに、自分が選手としてではなくて、違った形で貢献したいという思いが強くなって、それで引退する覚悟を決めました。

――誰かに相談はしたか?
最初に相談したのは、良い時も悪い時も、常に近くで支え、応援してくれていた妻に、まず相談しました。良い時というのは、何をやってもうまくいくんですけど、自分が思い通りにいかない時というのは、周りに当たってしまったりとか、傷つけたりもしたこともある。そういった時でも、常に近くで支えてくれた妻に、まずは相談しました。

――背中を押してくれましたか?
一番身近で見ていますから、僕が続けたいと伝えた時も、「もういいんじゃない」というやり取りがあったんですけど、最初に僕が辞めると伝えた時には、「なんで?」と。常に僕の逆をついてくるというか、そういうやり取りがあったんですけど、最終的には僕の意思を尊重してくれました。

――決断して、この日を迎えた気持ちは?
やり遂げた気持ちと、まだできるというか、体はすごく元気なので、完全燃焼したかといえば、まだ余力はあるんですけど、ただ悔いはないし、自分が常にピッチ上で、あるいはピッチ外でもベストを尽くしてきて、この決断に至ったので、後悔はしてませんし、次のステップに行くという、強い意思はあります。

――現役生活で一番うれしかったこと、一番悔しかったことは?
うれしかったことは、試合に勝って、自分がプレーして、優勝した瞬間。一番辛かったことは……うーん、なんでしょう。良いことも、悪いことも、数多く経験してきたので、辛いことはサッカーができなかったときですかね。ケガあるいは試合に出られなかったこと。そういう時は一番辛かったと思います。

――自分自身が一番驚いたセーブは?
いくつか挙げたほうがいいですか? まずは、アトランタ・オリンピックでブラジルと対戦した時に、ロベルト・カルロス選手のシュートをキャッチした時です。自分でもキャッチできるとは思っていなかった。トレーニングでもマリオGKコーチからとにかくキャッチだと。キャッチしないと終わらせてくれなかった。その賜物でキャッチすることができました。数多くあるんですけど……ドイツ・ワールドカップの時にジュニーニョ・ペルナンブカーノのシュートを止めたけど、ちょっとでも指の位置がずれていたら折れていたかもしれないぐらい強烈なシュートだった。他にもあるけど、自分の中では忘れられないものです。

――理想のGK像というのは?
自分のプレースタイルというのは、サッカーとともに進化させないといけないんですけど、ゴールマウスをしっかり守るというのは前提の上で、より攻撃的に、広い守備範囲がベースになって、攻撃的なフィード、常に攻撃の第1歩としてプレーする。失敗を恐れない。それが理想のGKだと僕は思います。

――それに近づけましたか?
今まで、一度も自分が完成形の近づいたと思ったことはなかったので、自分にはできなかったことを、将来自分が指導者になった時に。そういう選手を育てたいなと思います。

引退後のプランは?

川口能活

――今後については、どのように考えているか。
自分はやっぱりサッカーでここまで、人生を歩んできたので、やはり現場で、指導者として、自分の経験したことを伝えたい。サッカーは常に進化していますから、自分も指導者として、そのための勉強をしていきたい。指導者としての歩みを始めたいと思っています。

――今の日本代表にワールドクラスのGKがいれば、もっと上位を狙えるのではないかという指摘がある。マイアミの奇跡の立役者となって4度のW杯出場、この経験を生かしてワールドクラスのGKを育てて欲しいという声があるが。
GKが人気のあるポジションになるためにはどうしたらいいか。どうすれば、みんながGKを一番最初にやりたいとなるか、というところだと思うんです。ですから、GKのプレーのかっこよさというか、ただダイブすればいい、ただセービングすればいいという問題ではないですが、見た目の派手なプレーというか、動きがかっこいいと思えるところから入るのもありかなと思うんです。

ですから、フォームというか、形にこだわって。見栄えって僕は大事だと思うので、容姿とかそういうことではなく、プレーのかっこよさということで、そういう選手が出てくる、あるいは自分が育てれればいいかなと思うんですけど。まだそのノウハウもないし、指導実績もないので、これから勉強していきたいなと思います。

――SC相模原で選手生活の最後を迎えたが、どういう意味を持っているのか。
自分が代表、あるいはJ1、J2とプレーしてきた中で、J3でプレーするというのは自分の中での挑戦でした。その中で適応するための努力はしてきたし、もちろん厳しい状況もありましたけど、サッカーができる、サッカーが好きというのを再認識できた。プレーできる喜びを実感できた。そして選手、あるいはスタッフの絆。カテゴリーが下がるほど、スタッフも少ないし、それからボランティアの数も多いんです。そういうところを目の当たりにして学ぶことができた。

出場機会も減っていき、自分が選手として納得のいく結果を得られたかどうかは疑問に思うところもあるかもしれないですけど、自分が当たり前に思っていたことを、また大切さというのを知ることができた。非常に濃い経験ができた3年間だったと思います。

――GKを始めたきっかけは?
僕には兄がいるんですけど、その兄の勧めです。兄が公園でサッカーチームに入る前からGKの練習をしてくれた熱心な兄だったんですけど、やはり『キャプテン翼』ですね。僕はどちらかというと、翼くんや日向くんより若林くんや若嶋津くんにあこがれていました。

――GKというポジションが与えてくれたもの、ことは。
何をもたらしてくれたかというと、僕は上背があるわけではないし、その中で、練習をして、努力を重ねて、これだけのプロ生活を送ることができた。努力をすることの大切さ、常に自分は代表クラス、ワールドクラスのGKに比べて、身長がないと言われ続けて。高校生の時まではほとんど言われなかったんですけど、プロの世界に入って言われるようになって。強がってはいましたけど、内心、悔しさというか。身長がないことはどうしようもないですよね。それをなんとかしたい。動きの速さだったり、ジャンプ力だったり、自分にとってのコンプレックスを克服する。足りないものを努力するためのエネルギーというのを、GKを始めることで知ることができた。エネルギーを出すやり方、手段というのを学ぶことができたと思います。

――お兄さんや家族にこの引退のことを報告された時は、どんなリアクションだったんですか。
父と母は、内心ホッとしてました、僕が大きなケガをして続けていることが辛そうに見えたみたいなんです。だからホッとしていました。ただ兄は、改めて引退するということはリリースする前には伝えたんですけど、そのリリースが出た時に、寂しさというのは実感として湧いてきたという話はしていました。そのあとに会った時にもお前らしく頑張れと、結果を出してここまでやってきたんだから、また次のステージに行っても頑張れと声をかけてくれたけど、内心悔しさというか、まだまだやれるだろうという思いもあったみたいです。

――GKとしてもっとも大事にしてきたものは。
GKというのは最後の砦で、頼れる存在であるべきだと思うんですよね。自分にとって、環境の変化、心情の変化によってプレースタイルが変わり、若い頃のアプローチと、中堅、ベテランになっていくアプローチをまた変えていくという作業を続けていく中で、全てにおいて、進化、あるいは変化を加えていくべきポジションなのかなと思いつつ、ただ、自分の中で譲れないものというか。そういう強さもしっかりないといけない。そのバランスが非常に重要なポジション。ごめんなさい、他のポジションをやったことがないので、そこまで断言はできないんですけど、自分らしさ、信念、プラス、変化に応じての適応力、そのバランスがより高いレベルで求められるものがGKなのかなと。ただ、考え過ぎても、そこは難しい。自分らしさというのもしっかり、全てにおいて頼れるポジションでなければいけないんじゃないかと思います。

――その中で大切にしていたものは?
やっぱり不動のメンタルですかね。メンタルの浮き沈みがあってはいけない。浮き沈みがあったときに隙を突かれるし、自分のプレーするカテゴリーも下がっていったと思います。

――もう一度、サッカー人生を歩むなら、どのポジションがいいですか?
やっぱり、GKですね。大変なこともありましたけど、GKの練習が好きですし、もう一度サッカーをやれるとしても、もう一度GKをやると思います。

最後までプロ選手としてやるべきことを全うしたい

川口能活

――静岡のファン・サポーターへの一言。静岡時代の思い出は。
まず、小学校、中学校、高校と僕のサッカーの、やる上での礎を作ってくれた指導者のみなさんに感謝の気持ちを伝えたいし、ジュビロ磐田に入るときに静岡のみなさんが温かく歓迎してくれたことは忘れません。長い間応援していただいてありがとうございました。感謝の気持ちしかありません。

――横浜マリノスはどんな存在だったのか?
Jリーグが始まる前、前身の日産自動車時代から憧れがありましたし、横浜マリノスになってからも常に上位を争って、GKに当時日本代表でプレーしていた松永成立さん。松永さんの存在が非常に大きくて、将来自分が日本代表になるためには松永さんから吸収して、成長しないと日本代表になれないという思いがありました。自分が横浜マリノスを選んだ理由といのは、松永さんの存在が大きかったです。

――マリノスから一番学んだことは?
マリノスに入団した時に、元日本代表や日本代表の方々がいて、ものすごい強烈なオーラを放っていまして、とても気軽に話せるような環境ではありませんでした。「ああ、日本代表、Jのトップクラスというのは、こういうオーラが必要なんだな」と思いました。プレーするだけじゃない、また違った雰囲気を出すことも大事なんだと。もちろん、サッカーにおけるレベルの高さ、質の高さも学ぶことができましたけど、それだけじゃない選手として必要なオーラをマリノスに学びました。

――このゴールを決められてやられたなというのがあれば。このゴールが決まってうれしかったのは?
今まで受けたシュートで一番強烈だったのは、ドイツ大会のブラジル戦の時に受けた、ジュニーニョ・ペルナンブカーノの2点目のゴール。あのシュートはもう一度受けても……もしかしたら今だったら予想できるかもしれませんが、あの衝撃は今でも覚えています。素晴らしいシュートでした。

一番印象に残っているゴールは、いくつもあるんですけど、一つはオリンピック出場を決めたサウジアラビア戦、マレーシアで行われた準決勝で2-1で勝った試合の2点目のゴールですね。前園(真聖)さんが松原(良香)さんとのワンツーから決めた。ジョホールバルでの、中田英寿のミドルシュートからの、岡野(雅行)さんのこぼれ球のゴール。あの2つのゴールは、世界大会に出るために必要なゴールだったので、自分にとってはかけがえのないゴールですね。

――プロとしての基礎を作られたのは高校時代だと思いますが、母校の清商への思い、大滝先生にはどんなことを伝えたのか。
自分が在籍していたチームには同じような特別な思いはあるんですけど、清商時代はキャプテンとして全国制覇を成し遂げたので、思い出深いチームです。大滝先生には引退しますというのを伝えた時に、指導者として能活が経験したことを伝えてほしいと。W杯に4回出ているのはお前しかいないんだという声をかけてくれて、その経験を伝えてほしいと。

――50以上あるクラブの中でSC相模原で最後を過ごして、田中雄大という20歳以上下の選手とプレーしましたが、彼に引退を伝えた時のリアクションは。
ちょっと見てないんですけど……まだ3試合残っていますし、トレーニング期間も3週間あるので、田中雄大なりの何かがあるんじゃないかなと思いますけど。

――引退を伝えた時の子どものリアクションは?
プレスリリースが出る前に息子には話していて、最初は「いいよ」と言ってたんですけど、先日練習試合があった時に、「パパ、12月2日で引退するの?」って聞いてきたんです。「引退するよ」って言ったら、突然寂しくなってしまったみたいで。少しずつ、いろいろなことがわかる年齢にはなってますけど、自分の息子が記憶に残るまでプレーできたことは誇れることかなと思います。

――代表でも、これまでの所属チームでも、PKを止める姿が印象に残っているが、心がけていたことや、コツみたいなものがあれば教えてください。
特にないんですよね(笑)。目力で相手を威圧するぐらいですかね。特に、最近はキッカーの質も非常に上がってますし、PKを止めるGKも増えていますので、特にコツというのは、ないです。相手をいかに威圧するかだと思っています。

ケチャップさんがこの会見の風景を、写真を撮っていただいた時に、その写真を見て、実は会見をする前に泣いてたんです。これだけの多くの方が来てくれるとは思っていませんでした。自分にとって川口能活というのは、この1年、2年なんです。自分が代表で、J1でプレーしていた時の川口能活は過去のものなんです。ですから、僕のためだけにこれだけの方が集まってくれた。もしかしたら、自分がプレーしてきた中で今日が最高にうれしい日です。プレーを続けてきて、正直大変なこと、辛いことのほうが多かったです。でも、今日、これだけの方々が来ていただき、全て過去のものになりました。

あと、残り3試合。それから、トレーニングは2日までですから3週間あります。最後、プロの選手として、やるべきことを全うしたいと思っておりますし、皆さんにしっかり恩返しできるように、ただ最後の試合も出場確定ではありません。今まで通り、試合に向けての準備をしっかりしたいと思います。今日は、自分がプレーしてきた中で、最も喜ばしい日になりました。みなさん、ありがとうございました。

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