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【ライターコラムfrom千葉】“救世主”の名は大野哲煥、初の公式戦で得た「自信」を胸に真の守護神へ

2018.09.08

山口戦で公式戦デビューを飾った大野哲煥 [写真]=J.LEAGUE

 J2第31節レノファ山口FC戦、4-0でリーグ戦5試合ぶりの勝利、そして10試合ぶりとなる完封試合を見事に完遂したジェフユナイテッド千葉。この試合のターニングポイントとなったのがリーグ戦初出場&初先発を飾ったGK大野哲煥のファインセーブだった。その場面は41分に訪れた。CKのこぼれ球を拾ったジュリーニョが強烈なシュートを放つと味方選手に当たってコースが変わる。大野は俊敏に反応し、左手一本でビッグセーブ。一気に流れを引き寄せた。

「ポジショニングを含めて、自分の準備が出来ていたからこそ反応することが出来ました」とリフレクションのカバーが上手くいった理由を話す。


 そして千葉は前半アディショナルタイムに船山貴之が先制点を決めると、自慢の攻撃力を見せつけるかのように56分に町田也真人、77分に指宿洋史と立て続けにゴールネットを揺らす。試合終了間際には大野のロングフィードから矢田旭が4点目を決めた。

「ラリベイの競り合いから、旭くんが反応して良いタッチをしてくれました。僕のキックはおまけです(笑)。もっと狙える力はあるので、チャンスがあればどんどん狙って行きたいです」。そして大野は試合を振り返りこう話した。「加入3年目で初出場となりました。やっと出れたというのが率直な感想です(笑)。ただ、ずっと試合に出場するための準備はしてきました。勝ったことは本当に嬉しいですね」。立ち上がりから集中し、ファーストプレーを手際よく処理したことで、緊張を吹き飛ばしていたことも波に乗ることが出来た要因の一つだ。

 また、試合当日に大きなサプライズがあったこともここで紹介したい。地元・広島にほど近い山口での試合だったこともあり、親戚をスタジアムに呼んでいたのだが「出るのか、出ないのか、分からなかったので両親は呼んでいませんでした。でも、親戚の方が両親を呼んでくれていて、試合を見てもらえたので嬉しかったです。試合後には『おめでとう』と言ってもらえました」と照れ笑いを見せた。

 妥協せず、一歩ずつ。今は成長を続ける歩みの途中だ。山口戦でゲームキャプテンを務めていた町田はこう語る。「彼のおかげで勝ちを拾えて、なおかつ無失点は評価できると思います。ただ1試合、2試合は良いプレーは出来ます。それが続いてきた時に、落ちて行く選手が多いので、謙虚にやってもらえればどんどん成長できると思っています」。プロの競争社会を生き残るためのアドバイスを送られた大野は「試合後に也真人くんに言われました。良いパフォーマンスを継続することが大事なので、その言葉を頭にしっかり入れて準備をして行きたいです」と語気を強めた。

 日々の練習がアピールへとつながったことは間違いない。大野はなかなか試合に絡めない悔しさをプレーにぶつけて成長することだけを考えていた。待望のチャンスは8月26日に行われた川崎フロンターレとの練習試合だった。チームは敗れたものの、監督やコーチ陣を納得させるプレーを見せていた。

 フアン・エスナイデル監督の右腕であるギジェルモヘッドコーチは「練習に対する姿勢も良く、川崎戦後に監督と話し合い、チョル(大野)にチャンスを与えたいと思いました。監督が求めているプレーをしていたからこそ、監督も信頼を置いて送り出したのだと思います。20カ月、一緒に練習をしてきた中で試合に出ることに等しいプレーを見せてくれています」と着実な成長に目を細めると「(練習から)しっかりとやれば勝ち取るという気持ちを忘れずにしてほしいですし、チャンスを掴むのに長い時間がかかったので、それを逃さないようにこれからも励んでもらいたい」とかける期待は大きい。

大野哲煥

ギジェルモヘッドコーチと握手をかわす大野 [写真]=JEFUNITED

 スタートとなる一歩を踏み出したが当然のことながらまだ実感はない。監督の信頼を100%勝ち得たかと言えば,正直まだその域には達してはいないだろう。チームにはロドリゲスや佐藤優也という経験豊富で技術的にも秀でた2人がいる。ポジションを奪うことは容易ではないが、この競争に勝たなければ何も始まらない。だが、若武者はさらなる努力が必要で、ゴールがまだまだ先にあると大野自身もそれを自覚しているからこそ力を込めて言う。

「キックが切れたり、つながっていなかったのでパーフェクトにしたい。その中で公式戦で得た収穫は自信です」

 だからこそ期待したい。チームの窮地を救うヒーローの出現を。第3の男から新守護神を掴みに行く過程は反攻への起爆剤となる。終盤戦を迎えるリーグ戦だが、上位進出への短期決戦を勝ち抜くにはラッキーボーイの出現は不可欠だ。追い上げるのはここから。大野のプレーはチームに勢いを点火させる可能性を秘めている。

文=石田達也

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