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【ライターコラムfrom柏】取り戻した感覚と平常心…待ち望んだエースの復調がチーム上昇気流へ導く

2018.08.30

クリスティアーノは長崎戦で11試合ぶりのゴールを決めて、チームの勝利に貢献した [写真]=J.LEAGUE

 8月25日の明治安田生命J1リーグの長崎戦で、柏は今季最多の5得点を挙げて勝利を収めた。その前に敗れた磐田戦同様、序盤に先制を許し、一時は嫌な空気が流れたが、それを払拭したのが21分と24分に叩き出したクリスティアーノの同点と逆転弾だった。

 これまで、クリスティアーノは得点から遠ざかっていた。彼が得点を決めたのは第12節の湘南戦が最後。第23節の磐田戦まで11試合無得点が続いていた。前述の湘南戦でJ1通算50得点に到達し、2015年の柏加入以降は14得点、16得点(うち7得点は甲府で決めたもの)、12得点と3シーズン連続で二桁得点を記録した。そんなストライカーにとって11試合も無得点が続いたこと、さらにその間はチームも3勝8敗と結果が出なかったことも含め、さぞかしもどかしさを感じていたに違いない。チャンスがなかったわけではない。ただ、決定的な場面のシュートはことごとく枠から逸れ、得意とするFKも好位置であるにもかかわらず全て壁に阻まれてきた。彼の「決めなければいけない」という強い思いが、ボールタッチを微妙に狂わせていた。


 第22節のFC東京戦と続く磐田戦はスタメンから外れた。2試合のスタメン落ちと、長崎戦で3試合ぶりにスタメンに復帰させた理由を、加藤望監督は次のように語る。

「決してプレーは悪くはないと思っていましたが、ゴールを取る感覚をちょっと忘れかけていると思い、それをもう一度思い起こすためにも、一回外からゲームを見ることも大事じゃないかなという判断のもと、2試合ベンチスタートをさせました。それでだんだん『ゴールを決めたい』という意欲が練習から湧き出てきて、今回はスタートから使うことにしました」

 クリスティアーノ自身、「無得点の間も特に焦りはなかった。平常心でプレーできていた」とは言うものの、彼の言葉の端々からは本音が滲み出ることがある。

「長崎戦の2得点で、この苦しい時期が終わってくれることを願うよ」

 会話の途中で、そう言って笑みを見せたクリスティアーノ。やはり無得点の間は忸怩たる思いがあったことをうかがわせた。

 この2得点では、まだ“完全復活”とは言い切れないかもしれないが、風向きは変わり始めている。例えば同じ長崎戦の89分のFKの場面。これまでは頑なに「俺が蹴る」と言ってFKのキッカーを譲らなかったクリスティアーノだが、長崎戦では相手の壁の作り方を見て「(手塚)康平が蹴った方が入ると思った」とキッカーを手塚に譲った。すでに2得点を決めていたことによって、冷静な目でそのシチュエーションを分析できていたのだろう。そのクリスティアーノの読みどおり、手塚は鮮やかな弾道でネットを揺らした。少しずつだが、狂っていた歯車がかみ合い出した。

復調の兆しを見せたエースが、チームを牽引する [写真]=J.LEAGUE

 佳境を迎えたリーグ戦。残り10試合に向けて、クリスティアーノは意気込みを口にする。

「長崎戦では5点を奪って勝つことができましたが、これが5点ではなく、たとえ1点で、そして自分が得点を決めていなかったとしても、勝利はチームに勢いを与えます。自分の得点はもちろん幸せに感じますし、これから勝ち続けると確信しているので、それぞれが貢献できるという気持ちを持っていけば、ここから上位に食い込むことは可能だと思います。そして自分も、チャンスがあればこれからもどんどん得点を狙っていきます」

 思いがけず残留争いに巻き込まれた柏だが、復活の兆しを見せたエースがチームの浮上を促すか。

文=鈴木潤

By 鈴木潤

『柏フットボールジャーナル』などで執筆するフリーライター。柏レイソルを中心に、ラグビーなども取材。

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