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【ライターコラムfrom金沢】「何分出ようとチームの力になる」…マラニョンが見せた覚醒の兆し

2018.07.19

スピードと推進力が武器のマラニョンがフィットの兆しを見せている [写真]=J.LEAGUE

 J2第23節・ジェフユナイテッド千葉戦。良い立ち上がりを見せたツエーゲン金沢は先制したものの、その後はセットプレーで3失点。試合が難しくなったのは言うまでもない。それでも、オウンゴールで1点を返すと、途中出場したマラニョンの同点、逆転ゴールで金沢は4-3の勝利を収めた。マラニョンは自身の得点後、その喜びをじっくりと噛み締めた。「サッカーの中でゴールシーンは一番の楽しみで、うれしいことでもある。千葉戦は負けている状況からの逆転勝利というのもあった」。

 今季から金沢に加入したブラジル人FWのマラニョンはブラジル、タイでのプレー経験があり、金沢の和田昌裕強化・アカデミー本部長がタイのポートFCで監督を務めていた頃、そこに選手として在籍していた。スピードと推進力を武器に、金沢で活躍する姿が期待されていたのだが、ここまで順風満帆とはいかなかった。


 シーズン序盤から攻守両面で柳下正明監督の要求するタスクをこなせない試合が続き、ゲーム中はしきりに指示が飛んだ。もちろん、異国のサッカーにすぐ馴染むのは容易ではない。監督も辛抱強く先発起用していたが、改善する様子は見えず、前半45分のみで交代した第17節・京都サンガ戦以降は控えに回る機会が増えた。攻撃時のポジショニング、動き出し、そういった部分で相手より先手を取れば、特徴を発揮しやすい状況を作り出せるが、なかなかうまくいかなかった。

 マラニョンは「もちろんベンチにいて満足している選手はいない」としつつ、「チームメイトも尊重しているし、監督の決定も尊重している。90分だろうと5分だろうと10分だろうと、何分出ようと自分はチームの力になれるように最大限やる」と現状を受け止めた。守備の重要性も理解しており、その意識は高い。しかし、実際の試合でファーストディフェンダーとして十分に機能していたかといえば、そうではない。「自分はプレスするのは好き。だけど、状況によってはもちろん行ってはいけない状況もある。細かいところを修正していけたらもっと良くなっていく」。この言葉に偽りはなく、スイッチが入ったときには迫力を持ってボールを追う。チームが90分間のほとんどをスイッチオンの状態で守備をした第8節・千葉戦では、前線で攻守に存在感を発揮した。だからこそ、そのメリハリ、ベクトルが周囲と噛み合えば、まずは1列目の2トップが規制しながら、という守備にすんなりハマるのではないだろうか。

第23節・千葉戦では攻守に存在感を発揮。2ゴールの活躍でチームを勝利に導いた [写真]=J.LEAGUE

 ここで話を第23節の千葉戦に戻すと、マラニョンの1点目は左サイドバック・沼田圭悟のクロスに対し、ニアサイドへ突っ込み足で押し込んだもの。一見、単なるクロスからの得点かもしれない。だが、柳下監督は「ようやくだよね。ニアに入っていって、スピードもあった。ああいうことを毎試合やってくれれば」と、どこか感慨深い。それもそのはず。サイドからのクロス、ゴール前への入り方は日々の練習で力を入れているところで、その中でも特にニアに入ることを選手たちに求めてきたからだろう。例えニアで合わなくとも、そこで相手DFとともに1枚潰れることでファーの味方がフリーなる可能性がある。

 冷静にPKを決めた2点目も素晴らしいが、チームとしての狙いを体現した1点目を、ついに訪れたフィットの兆しと捉えるのは都合が良すぎるだろうか。「毎日トレーニングからハードワークして、自分に足りないところを良くしていきたい」。今後もマラニョンのパフォーマンスに注目したい。

文=野中拓也

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