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【ライターコラムfrom松本】「上」を目指す快足FW前田大然、“突貫小僧”からの脱皮

2018.06.27

前田大然は武器のスピードに加え、得点力も備わってきた [写真]=J.LEAGUE

 もはや「速いだけのボウズ」ではない。

 松本山雅FCのFW前田大然。50メートル5秒8という圧倒的なスピードを誇り、昨季はレンタル移籍先の水戸ホーリーホックで13ゴールを挙げた。そして今季、満を持して復帰。20試合終了時点で4ゴールという数字だけを比較すれば昨季より少ないものの、ピッチで披露するパフォーマンスは確実にスケールアップしている。


「水戸で1年間試合に出て点を取れたことが一番大きいと思うし、去年より今年の方が明らかにできることは増えている」。そう語る口ぶりには一定の手応えがにじむ。一瞬で相手DFを置き去りにするスピードに加えてゴール前での落ち着きが光り、プレーの選択肢も増えた。

 そのきっかけとなった初ゴールは、くしくも古巣の水戸から奪った。83分。中美慶哉のパスに対し、相手DFの逆を突く巧みなファーストタッチが決まった時点で勝負あり。あとは眼前のゴールに蹴り込むだけだった。それまでの試合では「惜しい」で終わるシーンが多々あったものの、「最初のゴールがきっかけになって2点、3点と取れた」と振り返る。

 第18節・京都サンガF.C.戦の決勝点は、「突貫小僧」のようなイメージを裏切る柔らかなループシュート。そして第20節でジェフユナイテッド千葉から奪ったカウンターの同点弾は、トップスピードに乗った状態で冷静に最適なプレーを導き出した。「(味方が2人)見えてワンタッチで出そうと思ったけど(千葉DF)近藤(直也)選手に当たると思ったので、中に切り返して自分で行った」と説明する。

前田大然

京都戦では鮮やかなループシュートをきめた [写真]=J.LEAGUE

 それだけではない。「ボールを受けるだけじゃなくて逆に僕が出す側にもならないといけないし、自分で打開する力もつけないといけない」と話す通り、第19節の大分トリニータ戦では相手DFを引き付けておいて前田直輝にパス。先制弾をアシストした。この試合は22分に退場者が出た影響もあり、攻守にフル回転。チームが集計していたトラッキングデータによると、46回という驚異的なスプリント回数を叩き出していた。

 高卒ルーキーだった2年前の面影はなく、すっかりチームの核となった若きストライカー。今では自陣深くでも前向きにボールを持てば、スタジアムの期待感は爆発的に膨らむ。ただ、自らは「充実はしているけど得点が少ないし、FWとしてこの得点で満足しちゃいけない。まずは2桁得点を取らないと」とさらなる結果を追求している。

「できることを来年、再来年と増やせればもっと上に行けると思う」。その「上」が示すものはもちろん日本代表だ。加入当初から東京五輪の代表入りを公言しており、今年はU-21日本代表パラグアイ遠征メンバーに入って3試合2得点と存在感を発揮。そして現在、開催中のFIFAワールドカップにも熱視線を送っている。

「4年後にまた日本が出てああいう舞台でやりたい。実際に(U-21)代表でだいぶ意識が変わったし、もっともっと上に行けば現実的な目標になってくると思う。(2022年カタールW杯まで)あと4年。何があるかわからないので、目の前の1日1日を大事にしていくだけ」。洋々とした未来をつかむため、まずは松本でJ1昇格のカギとなること。それこそが、この男に与えられたミッションだ。

文=大枝令

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