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【ライターコラムfrom仙台】ベテランとなって帰ってきた関口訓充…変わらない“声”と変わった“プレー”

2018.06.09

経験を携えて仙台へ戻ってきた関口訓充 [写真]=J.LEAGUE

 ベガルタ仙台が戦術練習などを行う紫山サッカー場は、豊かな自然に囲まれている。今の時期であれば雀や鶯、雉の鳴き声が響く。練習でボールを蹴る音も響けば、選手やコーチングスタッフが指示を飛ばしたり意見を交わしたりする声も聞こえてくる。

その中でも、一際目立って聞こえる声、高めの声の主が関口訓充だ。「そこで準備を早く!」とパスの受け手に要求することもあれば、「ナイスシュート、○○!」と味方を励ます声が飛ぶこともある。○○内には基本的に選手名が入るが、時には咄嗟に思いついたあだ名が入るときもある。


 4月10日に加入してからまだ2カ月とは思えないほど、彼はこの仙台というチームに馴染んでいる。それもそのはず、加入したといっても“戻ってきた”のである。帝京高校卒業後、2004年に当時J2の仙台でプロ生活をスタート。それからJ1昇格など仙台というクラブと歴史をともにする中で成長し、2010年と2011年には当時の日本代表にも選ばれた。“爆走ドリブラー”の二つ名のように、ボールを持てば果敢に相手DFと一対一の勝負を挑み、決定機を演出。フリーランニングや守備の追い込み方も成長していった。その後、2012年にチームを離れ、浦和レッズやセレッソ大阪といった強豪クラブで経験を重ねていった。

 C大阪を離れてからしばらく所属チームが見つからなかったが、春の過密日程で攻撃の選手に負傷者が相次いでいた仙台からの連絡を受け、6年ぶりの古巣復帰が決まった。「自分がまだまだ動けるうちに、このクラブに貢献したい思いがありました」。やんちゃな若手は、いつの間にかベテラン選手になっていた。

関口訓充

C大阪でのプレー経験もある関口 [写真]=JL/Getty Images for DAZN

 

 数カ月実戦から離れていたこと、6年前とは仙台のスタイルが大きく変わってきたこと、何より公式戦の日程が詰まっていて練習試合で関口を試す機会がないことから、フィットには時間がかかる可能性もあった。

「戦術的なところはまだまだ覚えなければいけないことはたくさんあります。でも、仙台を離れてからも何人もの監督のもとでやってきたし、『こういう展開だったら、こうする』というのもわかってきたので、そこは経験を生かしたい」

 その言葉どおり、ぶっつけ本番の状態から公式戦出場のチャンスをつかむに到り、明治安田生命J1リーグ第13節・湘南ベルマーレ戦では復帰後初の先発出場。第15節・鹿島アントラーズ戦では、左サイドから切れ込んで石原直樹の先制ゴールをアシスト。追加点につながるCKも関口が蹴った。前回在籍時も武器にしていた小回りの利くプレーを生かしたのが前者なら、当時はまだ少なかった戦況や選手配置を見極めたプレーは後者。それぞれ、成長を見せた試合だった。

「今は経験を伝える立場。加入当時はおとなしい印象があったので、盛り上げるところから、自分ができることをやっていきたい」。関口のプレーが、声が、チームを助ける場面はこれからも来るだろう。

 今の仙台は、2018JリーグYBCルヴァンカップのプレーオフステージで湘南と対戦しており、第1戦を0-3で落としたことで苦しい状況に追いこまれている。

「正直なところ、アウェイゴールを取れないうちに最後に3点目を取られたのはしんどいところ。でも、それは自分たちが招いた結果なので、ひっくり返さないといけません。しんどい中で、一人ひとり、人任せにならずに戦えれば、このチームはさらに上に行くことができます」

 しかし、昨季にC大阪でプレーオフステージを経験し、優勝したチームの中にいた関口は、この状況でも前を向く。

「球際のところで激しく戦ってきて、中盤で引っかけてカウンターをしかけて……という湘南の戦い方ははっきりしています。そうやって出てきてくれるのであればこちらとしてはその方がやりやすいし、面白い試合になると思いますよ」

 プレーも勝負も楽しんできたベテランは、大一番となる第2戦でも、勝利に向けてチームを前に進めようとしている。

文=板垣晴朗

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