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【ライターコラムfrom横浜FM】改革途上ゆえのジレンマ。「新スタイル」と「伝統」を両立できるのか?

横浜FMはここまでリーグワースト2位の17失点を喫している [写真]=J.LEAGUE

 横浜F・マリノスが苦しんでいる。直近5試合で勝ち星がなく、リーグ戦10試合を終えて勝ち点9の15位と低迷。いつ降格圏に足を踏み入れてもおかしくない状況だ。

 順位以上に気になるのが失点の多さだ。17失点はリーグワースト2位で、昨季までの『堅守』のイメージは見る影もない。ここまでクリーンシートはわずか2試合(いずれも勝利)で、反対に6試合で複数失点を喫している。これでは勝ち点がなかなか積み上がっていかないのも当然だ。

 ミッドウィークに行われた札幌戦では、44分にセットプレーからDF金井貢史が決めて先制に成功。前半を終えて得点はこの1点のみだが、ポゼッション率を始めとする内容で札幌をほぼ圧倒したと言っていい。

 しかし、後半に入ると状況が一変する。札幌がシステムを4バックに変更するとパス回しが滞り、ミスを頻発する。「前半と比べるとゲームコントロールの部分は落ちたかもしれない」とアンジェ・ポステコグルー監督が認めたように、主導権争いで優位に立ったのはホームの札幌だった。

 勢いを失ったトリコロールは、ミス絡みのボールロストから2失点。呆気ない敗戦に守備の要の中澤佑二は「簡単に失点している」と首を横に振った。これで直近3試合の黒星はいずれも先制しながらの逆転負け。“先行逃げ切り”を得意とした昨季とは180度異なる内容になっている。

第9節の湘南戦は4-4の引き分け。ウーゴ ヴィエイラの3得点も勝利には結びつかなかった [写真]=J.LEAGUE

 新たなスタイルの構築に取り組んでいるがゆえの産みの苦しみという見方もできるが、だからと言って優勝を目標に掲げているチームが結果を度外視してもいいという道理はない。先制点が無念の空砲となった金井は「このスタイルを信じてプレーするのは当たり前。試合に勝つために1対1や球際の争いに勝つという基本的なことをやらなければ勝ち点3は取れない」と課題を指摘する。

 リーグの中で特異なスタイルを見せているのは揺るがない事実であり、結果が伴うことでさらに魅力的なチームになる可能性は秘めている。「間違いなく前進しているので、何かを変えるつもりはない」という指揮官の実直な姿勢も、何かを変えるためには必要なのかもしれない。ただ、ドラスティックな改革には大きなリスクがはらむ。

 昨季以前のチームはお世辞にも得点力に長けているとは言えず、03年、04年の連覇以降はリーグ優勝から遠ざかっている。だが、どうだろう。攻撃力が乏しいからこそ、チームは得点を奪うことではなく、失点しないことに神経を傾けてきたという見方もできなくはない。守備力以上に守備意識の高さを持つことで、常に失点数が少ないというチームカラーを築き上げてきたのである。

 その象徴である中澤は「今はスタイルが先に来ているので、小さなところを見つめ直さないといけない。新しいことをやっているからと逃げてはいけない」と現実を見据える。新たなチャレンジによって長く培ってきた伝統が失われていく様子は、番記者として一抹の寂しさと不安を覚える。『アタッキングフットボール』と『堅守の横浜F・マリノス』は決して相反するものではなく、共存できるものだと信じたい。

文=藤井雅彦

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