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【ライターコラムfrom山形】システム変更で失点に歯止め。守備をベースにジャンプアップの3連戦となるか

2018.04.27

加賀(右)を中心に3バック変更した山形は6節~11節まで2失点と守備が安定した [写真]=J.LEAGUE

 長丁場のJ2リーグも、ゴールデンウィークを前に10試合を終了。モンテディオ山形はと言えば、3勝3分4敗の勝点12で、ほぼ五分の勝ち星をそのまま反映した12位という順位にいる。J1昇格を目標に掲げるチームとしては一見パッとしない成績だが、番記者の感触としては「さあ、ここから」である。

 ここまで10試合の戦い方は、5試合ずつではっきり分かれる。開幕からの5節は、昨季1年間かけてようやく形になり始めていた、後方からビルドアップしてゴールを目指すサッカーを継続・発展させようとした。しかし、開幕の水戸ホーリーホック戦で0-3と完敗した後、勝点は拾いながらも失点が続く。昨季の主要メンバーが何人か抜け、その一人である菅沼駿哉(ガンバ大阪に移籍)の穴を埋めると期待されたブラジル人DFジャイロ・ロドリゲスが、キャンプ中に負傷し長期離脱となったことも響いた。


 木山隆之監督に軌道修正を決断させたのは、第5節ホーム横浜FC戦だ。前半17分までに3失点。終盤で2点を入れて追いあげはしたが、試合後の会見では悔しさを隠さなかった。「ホームの試合でしっかりと自分たちのプレーをしてやろうという選択が間違っていたのか。もっと守備的に、もっとがっちりやるべきだったのか、そこは僕自身の判断のミスかもしれません」と話した時には既に心は決まっていたのかもしれない。そしてこの試合を境に、今季のベースと考えていた4バックから3バックにシステムを変える。目指すサッカーに向かって選手たちの成長を促しながら耐えるのも一つの選択だが、今はその時ではないと、守備の整備に舵を切った。

 迎えた次節、今季始めて3バックで臨んだ第6節東京ヴェルディ戦は0-0。ドローとはいえ、今季初の無失点試合となった。この試合から、ベテランのDF加賀健一が復帰したのも大きい。キャンプ中からコンディション調整が続いていたが、3バックの右に入ると、持ち前のスピードと強気のラインコントロールで最終ラインを安定させた。プロ17年目の経験を持ち、ちょっとやそっとのことでは動じない加賀の存在は、共に3バックを形成する栗山直樹熊本雄太にとっても心強い存在だろう。かくして、そこからの5試合は失点が激減。1節~5節の失点11に対し、6節~10節の失点は2。第8節愛媛FC戦、第9節京都サンガF.C.戦はいずれも完封で今季初の連勝となった。

 開幕当初は「試合をすると誰かが怪我をする」と木山監督が嘆くほど怪我人が出て、先発メンバーが試合ごとに変わっていた。しかしここ3試合は同じスタメンが続いている。特に守備陣の顔ぶれが定まったことはチームにとって大きい。

「失点が多かったチームを3バックにして、一回失点をしっかり減らして立て直すことを考えた時には、後ろは今の時点であの3人がベストだと思う」

 そう評価を与える指揮官は、「弱点だったセットプレーの攻守で、クリ(栗山)とクマ(熊本)がいることが一つのストロングになっている」と、空中戦や対人に強い二人の良さが活きる戦い方に一定の手応えを口にした。

戦線復帰した中山は4試合に途中出場して2ゴールをマーク [写真]=J.LEAGUE

 仕切り直して守備を整備したチームで迎えるゴールデンウィークの3連戦(栃木SC、アビスパ福岡、カマタマーレ讃岐)。怪我人も戻って来て、やっと本当の意味でチーム内のポジション争いが始まったところだ。

「長い怪我をした人たちが、ようやく試合に出られる状態になった。今やっと全員で『さあ誰が一番良いんだ?』という話になる」(木山監督)

 しかも、長い怪我から戻ったMF南秀仁やFW中山仁斗は、怪我をする前よりも身体が強くなり、キレもある。中山は復帰後4試合に途中出場して2ゴールをあげた。今、チームで最も得点の匂いのするFWである。

 総力戦となる連戦では、高いレベルの競争が新しいヒーローを生む。そうして勝点を積み上げることができれば、その安定感をベースに、再び理想を追うチーム構築も可能になる。木山監督は、「J1に定着する力をつけて昇格する」という就任時のミッションを忘れてはいない。

 現在、昇格プレーオフ出場権が得られる6位との勝点差は5。チームに自信が戻って来たこのタイミングで迎える3連戦で差を詰めて、弾みをつけたいところだ。

文=頼野亜唯子

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