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【ライターコラムfrom松本】セルジーニョ、好調・松本の原動力…「小さな巨人」を駆り立てるものとは

松本の攻撃をけん引するセルジーニョ [写真]=J.LEAGUE

「小さな巨人」とも呼べるほど、その存在感は大きい。

 明治安田生命J2リーグで今季初の2連勝を挙げ、5戦負けなしでじわりと順位を上げてきた松本山雅FC。V字回復を果たした要因を探ると、166cmの小柄なブラジル人MF・セルジーニョに行き着く。チーム内で最も競争の激しいシャドーのポジションにあって、第6節から先発の座を確保して無敗。すでに来日1年目の昨季を上回る4ゴールを挙げている上、献身的なプレスで守備面でも多大な役割を果たす。「非常に幸せにサッカーができている」。その口ぶりには、確かな手応えがにじむ。

 コンディションがいいから惜しみなく走れるし、周りが見える。だから必然的にボールも集まる。モンテディオ山形を下した前節のアシストはその象徴的なプレーだろう。23分、セットプレーの2次攻撃。ゴール前を固める山形に対し、セルジーニョは手薄な右サイドへスプリントをかけて縦パスを引き出した。「クロスの前には必ず頭を上げる。そのスペースが見えたので誰かが入ってくると信じて上げた」と、ファーサイドへクロス。これが浦田延尚の頭にピタリと合う絶妙なアシストとなった。

 第2節のアルビレックス新潟戦で決めたテクニカルなヒールシュートのように、得点パターンはほとんどが2タッチ以内。狭いエリアでの仕事はお手のものだし、密集エリアでの落ち着きぶりも光る。ただ今季当初、その存在感は限りなく薄かった。前田直輝や永井龍ら新加入のアタッカー陣に注目が集まり、3-1-4-2の新陣形を試していた時期。「ポジション争いが厳しくなることを覚悟しながら臨んでいる」と語っていたが、2トップの一角としてもインサイドハーフとしても今ひとつフィットし切れていなかった。

 潮目が変わったのは新潟戦。1点ビハインドの60分に工藤浩平と同時に交代投入されると、チームは3-4-2-1にシフトして一気に流れを引き寄せる。そして同点ゴール。だが調子が上向きになってきたある日、反町康治監督に声をかけられた。規律を重んじる指揮官から「コンディションがいいのは分かっているし起用したいが、いい加減なプレーをするなら送り出せない」と練習態度について苦言を呈されたのだ。自身も「好調をキープできているのはあの話し合いがあったおかげ」と認める。

 こうした経緯もあって好調・松本の核となっているセルジーニョ。ブラジルなどでプレーしてきた経験から、Jリーグと松本の特異性も身に染みている。「サポーターのおかげで山雅は成り立っていて、自分たち選手はプレーできている。ブラジルでは調子のいい時しかサポートしてくれなかったから、悪い時にも応援してくれるのは初めての経験で感謝している。カザフスタンも選手をリスペクトしてくれたが、ここまで気持ち良くプレーさせてくれるわけではなかった」と振り返る。

セルジーニョ

甲府戦で決勝点 [写真]=J.LEAGUE

 だからこそ、なのだ。第9節のヴァンフォーレ甲府戦。ゴールを決めた直後、サポーターがひしめくゴール裏へと一目散に駆け出した。専用球技場のホーム・アルウィンなら距離も近いが、場所は山梨中銀スタジアム。幾重にも並ぶピッチ内看板を飛び越えながら、陸上競技のトラックを横切って喜びを分かち合った。「サポーターがいなかったらあのゴールは生まれていない。みんなで勝ち取ったゴール」とうなずく。

 もちろん、「みんな」という言葉にはチームメイトもスタッフも家族も含まれている。「家族が幸せに過ごしているのもサッカーに大きく影響していると思う。チームの大事なピースになっていると感じられていて嬉しいし、逆に自分もみんなのことを大事にしている。グラウンドでうまくいくように日頃からコミュニケーションを取ることを心がけている」とセルジーニョ。自らを取り巻く全てへの感謝を胸に、松本をさらなる高みへと導いていく。

文=大枝令

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