2018.04.21

【ライターコラムfrom磐田】金髪に口ひげ、紛失したネクタイ…チームの調子を左右するゲン担ぎと伝統の居残り練習

川又堅碁
髪を金に染め、調子を上げた川又堅碁(中央) [写真]=J.LEAGUE

 ジュビロ磐田の練習場、静岡県磐田市にあるヤマハ大久保グラウンド。全体練習の終了と同時に、警備員がスタンドにいた練習見学者をピッチ内に誘導する。選手と写真撮影をしたり、サインをもらうなどのファンサービスが始まる。だが、最近はここからファンの待ち時間が長い。多くの選手が行う居残り練習が終わらないのだ。

 試合で結果を残せなかった選手はとくに熱を入れる。代表格がFW川又堅碁だ。0-2と敗れた11日のガンバ大阪戦。55分に敵陣で相手DFの横パスをカットした決定的な場面で、シュートは枠をとらえられなかった。「あれを決めないと、勝敗を左右する。イージーなシュートこそ大事。FWとして責任は重い」と試合後に悔しい思いを口にしていた通り、翌日は名波浩監督の指導を受けながら、同じ角度からのシュートを何本も打ち続けた。

 練習はうそをつかない。そう考える選手の多くはゲン担ぎにも事欠かない。川又は今季の開幕直前、突然自慢の口ひげをそった。そこからチームは得点力不足に陥った。2月25日の川崎フロンターレとの開幕戦。昨季最少失点の磐田と、最多得点の川崎という“ほこたて対決”で、磐田は押し気味に試合を進めた。しかし序盤の決定機に、ペナルティエリア内で川又が空振りをした。後半も磐田が反撃したが、結果は0-3。名波監督が「川又がひげをそるからだ」と冗談とも本気ともとれる嘆きを口にした。川又のひげが生えそろわない3月3日の名古屋グランパス戦も0-1と完封負け。先発を大幅に入れ替えた同7日のルヴァンカップ・清水エスパルス戦も0-1と、1点が遠い試合が続く。

 同10日のFC東京戦。今季のチーム初得点を決めたのは、前日に金髪にしたMFアダイウトンだった。「スローインを受け、前を向いたら目立つ頭があった」と振り返るMF中村俊輔のクロスに、アダイウトンがバックヘッドで合わせた。すると、同18日のサンフレッチェ広島戦前に、川又も金髪にしてみせた。この試合は0-0と引き分けたものの、好調の広島から勝ち点を奪った価値ある試合。8節まで7勝1分けと不敗の広島にとって唯一勝ちきれなかった試合でもあった。そして川又は今月1日、浦和レッズ戦で2ゴールを挙げる活躍を見せた。

アダイウトン

今季初ゴールを決めたのは金髪にしたアダイウトンだった [写真]=J.LEAGUE

 ちなみに、名波監督にもシーズン序盤にチームが不振に陥った“原因”があった。昨季から試合で着用していた2本のネクタイのうちの1本を開幕前に紛失。負ければ変える2本のネクタイを交互に使用するルーティンができなかったことが影響したという。

 負傷で長期離脱することになったアダイウトン、ムサエフの背番号が入ったTシャツを着用して先発選手が入場する“儀式”も復活させた。昨夏にドイツから3年ぶりに復帰したMF山田大記の発案だった。「アダのため、ムサのため」。試合での負傷で戦列を離れた選手を思う心は、チームが一丸となるためにも大事なことだった。

 名波監督は「アスリートは単純な生き物」と言う。居残り練習、ゲン担ぎ、仲間へのリスペクト……。かつて居残り練習はFW中山雅史やFW高原直泰、そしてMF名波浩ら元日本代表選手が欠かさず続けていた。単純なことだからこそ、勝つために精いっぱいの努力を惜しまないのが、このクラブの伝統でもある。

文=岩田大五

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