湘南のキャプテンを経験した高山薫と永木亮太がキャリアを振り返る [写真]=谷口尋彦
キャプテンを経て成長したふたり
クラブ創立50周年の節目に、人として30歳の節目を迎える高山薫と永木亮太。ともにキャプテンを経験したことで、選手として人間として大きく成長したと語る。この町で多くの人に出会い、支えられた財産を手に、彼らはさらに飛躍していく。
川崎フロンターレのジュニアユースで曺貴裁監督の指導を仰いだ 高山薫と永木亮太は、反町康治監督が指揮を執った2011年に湘南ベルマーレでプロのキャリアをスタートさせた。J2からJ1へ 主戦場を移さんとするクラブの成長途上に、キャプテンを担った彼らが、その足跡を振り返る。
文=隈元大吾(KUMAMOTO DAIGO)
写真=谷口尋彦(TANIGUCHI HIROHIKO)
――まず2人がベルマーレでプロとして歩み始めたところから進めていきたいと思います。永木選手は大学4年の10年7月に特別指定選手になりました。
永木亮太(以下:永)練習参加したときにベルマーレはすごくすんなり入れました。周りの選手が 話しかけてくれたし、サッカーもやりやすかった。あとやっぱり曺さんがコーチでいたことが大きかったですね。悩んでいるときに曺さんからいろいろと話を聞いたうえでベルマーレがいいなと思った。そのときは曺さんが監督をやるとは思っていなかったですけど、また曺さんと一緒にやれるのはいいなと思いました。
――思えば初出場は鹿島アントラーズ戦(J1第 11節)でした。
永 そうです。すごく緊張しました。前日スタメン組に入って「え、俺、明日スタメンなの?」みたいな(笑)。守備は頑張った……というか守備しかしてないけど(笑)。だってあの試合、ボールポゼッション率はたぶん相手が70%ぐらい。ずっと押されて0-1で負けた。
――高山選手はひと足先にデビューした永木選手をどのように見ていましたか?
高山薫(以下:高)そのときテレビでアナウンサーが「永木は将来、ベルマーレを背負って立つ選手になるだろうと、反町監督が話していました」と言ってるのを聞いてジェラシーを感じました。ユースのとき、俺は一応キャプテンをやっていたし、そこは負けたくない気持ちがあった。でも大学に行って亮太は1年からずっと出てたし、抜かれた感を少し覚えてた。
永 そうなんだ(笑)。
高 しかも亮太が特別指定になって試合に出始めた頃、俺はプロになれるかまだ何も決まってないから、先を越されてるなと思って焦った。いいなあ、ヤバいなあみたいな。だから亮太のことは刺激になりましたね。プロに入ったら自分との戦いだったから、そういう感情はなかったけど。
永 でも薫とは中学から一緒にやってるから、俺はその当時どちらかというと薫を追いかけてるような感覚だったよ。薫は1学年上の試合にスタメンで出てたし、選抜にも入ってたから、俺もジェラシーを感じてた(笑)。しかも薫は選抜の友だちがたくさんいたし。
高 ああ、そうだね(笑)。違うチームの人を知ってることがカッコいいみたいな変な意識がたぶんあったんだよね。
――プロ1年目の11年はJ2で14位と苦しいシーズンでした。
永 苦しかったですね。ケガ人がたくさんいたし。
高 でも、そこは捉え方が違うよね。だって俺は試合に出られないところから始まってるから、ある意味出ることへの執着しかなかった。今はチームがその成績だったらヤバいと思うけど、そのときはとにかく出たかったから、正直チームの成績の印象はないもん。結果的に低かったなとは思うけど。
永 でも薫はチームでいちばん点を取ってたよね(笑)。
高 そうなんだよね、実はね。
永 俺は試合には出られていたから薫みたいな感覚はあまりなくて、試合で自分のプレーがうまくいくようにという気持ちが常にあった。特に1年目は波があって、悪いときは落ち込んだし、とにかく自分のことで精いっぱい。勝てなくても自分のプレーがよければ満足感を得られたりして、自分の評価を上げることに必死だった。
高 1年目ってそんなものだよね。
――曺監督が就任した12年、2人はプロ2年目にして、すでに存在感を放っていました。
永 その年は薫もほぼ出たでしょ。
高 そうだね。でもそのときはチームのことを気にする意識も芽生え始めてはいたけど、(坂本)紘司 さんや(下村)東美さん、古さん(古橋達弥)と、ベテランの選手が引っ張ってくれたからすごくやりやすかった。実際ストレスなくやれていたと思う。
永 そうだね。あの年のチームはすごく雰囲気が良かったな。
高 確かに12年良かったなあ……。メンバーを振り返っても楽しかったもん。そもそも下馬評が低いからプレッシャーもなかったし。
永 しかも曺さんの教え方もすごく分かりやすかった。みんな、とにかく追い越して、それが開幕からうまくハマって。
高 湘南スタイルと言われるようになって。
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