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【コラム】“やんちゃ坊主”平本一樹が踏み出した新たな一歩…ぶれない意志で目指すGMの道

2018.04.05

36歳で現役を退き、今季より町田ゼルビアで「PRリーダー」の肩書で活動している平本一樹

 やんちゃ坊主、悪童といった枕詞が似合ってしまうストライカーだった。「実際、素行はよくなかったですからね」。現役を退いて4カ月。ネクタイを緩め、少しふくよかになった頬をさすりつつ苦笑い。

 平本一樹。むらっ気はあるけれど、ハマった時の躍動には手がつけられない。主に東京ヴェルディでプレーし、J1、J2リーグを合わせて413試合で74得点を挙げた36歳。現役を退いてゼネラルマネジャー(GM)をめざし、町田ゼルビアで「PRリーダー」との肩書を得て新たなスタートを切った。


 クラブには哲学があり、その哲学に沿ってGMが監督を決め、選手を集めるのがチーム編成の常道。こうした筋が日本ではないがしろにされているのではと疑問を抱くことがあったという。プロデビューを果たした高校3年時から7年間にわたって東京Vで面倒を見てくれた「恩師」、いまは町田の唐井直GMの存在も大きい。Jリーグでは数少ないGM一徹のプロパーに、やんちゃ坊主は見放されず、かつ冷徹に評価された。いわゆる忖度とは無縁。「誰にも、何にも、自分という軸がぶれない」とその姿勢に影響を受け、編成の責任者を志した。

 オフに東京Vから契約満了を告げられ、唐井GMのもとへ節目の報告に訪れた。将来の希望を伝えると、GMの職責をこれでもかと並べられた。英語を操るのは前提。現場を束ねるだけでなく、クラブ内外とのシビアな交渉も山積みだと。でも熱意は冷めず、何度かのやりとりを経て「就職」は決まった。2012年に町田でプレー。頼まれなくても進んで地域交流に参加する姿勢がクラブに好印象を残してもいた。

 チラシ配りから自治会へのあいさつ回りまで駆け出しの業務は幅広い。合間に覚えたてのワード、エクセル、パワーポイントと格闘する。「クラブに関わる全ての仕事を経験し、あらゆる立場の人の気持ちをわかるようになりたい。そうやって徐々に、自分の器がどの程度のものか、みえてくる気がする」

 最近、性格も顔も丸くなったねと言われる。酒を飲めば俺、俺、だったのが、まず相手に耳を傾ける。かつての平本一樹のようにゴツゴツした個性が輝ける組織を築きたい。

 東京の片隅のJ2クラブで、自分らしい人生を模索する若者が生かされている。そこにサッカーがあるからこそだろう。

文=中川文如

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