2018.03.30

【ライターコラムfrom山形】ひとまわり大きくなって、再び走り出した南秀仁の「ここから」

怪我から復帰した南は今季リーグ戦全6試合に出場 [写真]=J.LEAGUE
広告代理店等勤務を経てコピーライターとして独立。2006年からサッカー取材を始め、モンテディオ山形を中心にライティングを行っている。仙台市在住。将棋×サッカーコラボに傾倒する“観る将棋ファン”。

 およそ1年のブランクを経て、南秀仁が帰って来た。

 昨年、下部組織から長年暮らした東京ヴェルディを離れてモンテディオ山形に加入。「気心の知れた人たちのいるヴェルディにずっといるのは楽だけれど、それを続けていても成長はないのかなと思って」と、ブレイクスルーを期しての決断だった。その思いを体現するように、開幕から先発の座を勝ち取り、2017モンテディオの攻撃の中核を担う選手になるのだろうと周囲の期待は高まった。しかし開幕からわずか2試合を戦った後の3月初め、右第五中足骨骨折の怪我を負った。

 通常、この怪我の復帰までの期間は3カ月程度と言われるが、南の場合は少し治療の難しい折れ方をしていたために、思いがけず時間がかかった。結局、昨シーズンは最後まで別メニューのまま。シーズン終了後、木山監督が「ちょっと毛色の違う、チームの中で違いを出せる選手だったので、いなくなって攻撃は寂しくなった」と振り返ったように、チームにとって痛い長期離脱だったことは間違いない。

 しかし、今季は完全復帰でキャンプイン。開幕先発はならなかったものの、ここまで6試合全てに出場している。

 第4節町田ゼルビア戦では、昨年は果たせなかったホームデビューも実現した。ずっとスタンドから見るだけだったピッチに立ち、やっとホームのサポーターの前でプレーできた。積み重ねた悔しさの分だけ嬉しかった。

 ちなみにこの試合は1-1の場面で途中出場。停滞気味だった前線に動きをもたらした。やはり南の仕事場はペナルティエリア付近。自分で仕掛けるにせよ味方を活かすにせよ、目を凝らしたくなるシーンを作り出す。ただ、一度はリードを奪ったものの終了間際に追いつかれてドローとなり、新たな悔しさが残った。

前節の東京V戦では久しぶりに古巣のピッチでプレー [写真]=J.LEAGUE

 前節アウェイ東京V戦では、久しぶりに味の素スタジアムのピッチに立った。昨年は叶わなかった、愛着ある古巣との対戦だ。

「ヴェルディと試合をするというのは変な感覚で、何か不思議な感じがしましたが、楽しかったです」

 この日は66分からの途中出場。先発フル出場が理想だったが「もう1試合あるので」と、ホームで古巣を迎え撃つ日(第28節・8/11)を今から楽しみにしている。

 さて、冒頭に「およそ1年のブランクを経て」と書いたが、南自身にとって、この1年間が真っ白だったはずもない。長いリハビリ期間に図った筋力強化は確実に実を結んでいる。

「下半身の筋肉や股関節の可動域は、怪我が治ってきて動いてみると、怪我前よりも土台がしっかりしているなという感じ」

 実戦で、以前なら倒れていたであろう強い当たりを受けてもバランスが崩れない。鋭い踏み込みを支える筋肉や関節の柔軟性が増し、それは怪我の再発防止にもつながるようだ。実際に腰回りのサイズも増えているそうで、文字どおり「一回り大きくなって」、頼れる男が帰ってきた。

 待ちに待った“モンテディオ山形の南秀仁”の本格稼働。しかしそれはまだ始まったばかりだ。

 「ここからですね。8カ月休んでいたので、早く100パーセントの自分を見せられるように、もっとどんどんサッカーをして、日々努力していきます」

 まだ100パーセントではないんですね? と聞くと、普段はあまり表情を変えない彼が「全然!」と笑った。現在地はまだ「半分まで行っているかどうか」。再び走り出した山形の18番は、まず次節レノファ山口FC戦でのホーム初勝利を目指す。

文=頼野亜唯子

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