2018.03.10

【ライターコラムfrom東京V】「サッカー選手だからこそできること」元仙台の田村直也が続ける復興支援

07年に仙台でJデビューした田村直也は13年まで7シーズンプレーした [写真]=J.LEAGUE
フリーライター。横浜Fマリノス、ジュビロ磐田の公式ライターを経て、2007年より東京ヴェルディに密着。プロ野球でも取材・執筆活動中。

「その日に試合ができることを、大切にしたいと思っています」。

 今週末に行われるJ2リーグ第3節のホームゲームへ向け、田村直也はかみしめるように、丁寧に、胸の内を語った。

“その日”――
 3月11日。東日本大震災が発生した日である。7年もの月日が流れたが、あの日のことは、今でも鮮明に憶えている。

 ベガルタ仙台に所属しており、クラブの地元・仙台で被災した。
「僕がいたのは内陸だったので、揺れはめちゃくちゃすごかったですが、それでも、『僕、このまま死ぬんだ』とまでは思わなかった。直後は、電気が止まっていて、テレビも見られなかったので、地球がこんなにも大変なことになっていて、津波が来ていることも、全くわからなかったんです。だから逆に、『自分たちは生きよう』ということだけしか考えられなかった。まずは、家族を守ろうということで必死でした」

 2〜3日後、徐々にさまざまな情報が伝わってきた。「僕たちよりもひどい被害に遭った人がたくさんいるんだと知りました。僕らも、パンを貰うために小学校で並んだり、ガソリンを買うために、スタンドに並んで車の中で寝たりしましたし、当時子供が1歳だったので、オムツもなくて困ったりと、それなりに大変でしたが、その何倍も苦しい思いをしている人が、同じ宮城の中にたくさんいたので……」。チームは一時解散となったが、そのまま仙台に残り、ボランティア活動に尽力した。

 そんな中、忘れられないのが、4月23日のJリーグ再開試合だった。仙台は、アウェイ・等々力競技場での川崎フロンターレ戦だったが、復興を願い誓う両チームの熱いエールの交換に、同じ日本人として、日本中が心熱くした瞬間でもあった。「川崎のサポーターも、ベガルタのサポーターも、スタジアム中のみんなが手をつないでベガルタの応援歌を大合唱してくれたのは、本当にすごかった」。さらに、自分よりもはるかに苦しい思いをしている人々が、「土日だけは試合を応援しに来てくれたり、テレビで見てくれて、『その瞬間だけは忘れることができる』ということを言ってくれたことが、今でも忘れられません」。そして、心底思ったのだという。「サッカーには、そういう力がある。そんな仕事ができていることが、本当に幸せだと思いました」。

2011年のJリーグ再開試合の川崎戦は田村にとって「サッカーの力」を感じた忘れられない一戦となった [写真]=J.LEAGUE

 その思いは、今もずっと変わっていない。

 2014年から、ユース時代に所属していた東京ヴェルディでプレーしているが、毎年、3月11日には、クラブのホームページを通じて、被災地へ追悼メッセージを送ってきた。さらに、被災直後から少しずつ進めてきた、復興支援を主眼のひとつとするサッカー教室&アパレル会社『TMFC』を昨年9月に設立。12月23日には、『クリスマスチャリティーサッカー教室〜REMEMBER(リメンバー)3.11〜』を自身のホームタウンである東京都多摩市で開催し、集まった義援金を仙台市に、ボールやビブスなどのサッカー用品を小学生のクラブチームなどに寄贈した。こうした活動は、すべて「恩返し」だと、田村は話す。「なりたくてもなれない方が多い中、僕は、多くの人の助けや支えもあって、プロサッカー選手になることができました。サッカーを仕事にすることができた代表の1人として僕がやれることは、プロとして、自分がしっかりサッカーを楽しむことと、見てる人を楽しませること。そして3つ目は、地域貢献。今回のチャリティー『REMEMBER(リメンバー)3.11』も、そのひとつと言えると思います。これからも、続けたいですし、プロ選手として表舞台に出ている以上、発信力は少しはあると思うので、良い方向にみんなを引っ張っていきたい。そのためにできることは、もっとあるんじゃないかなと思っています」。

 穏やかな表情で第二の故郷・仙台への思いを語っていたが、話題がサッカーに移ると、表情は一変した。「それ(3月11日に試合を行うこと)はそれ、試合は試合です。しっかりと結果でヴェルディのファンを喜ばせたいという気持ちが強いです」。開幕から2試合、3点、1点と、勝ち点は積むことができた。「まだまだ課題は多いですが、これを続けていけば、必ず良いサッカーができると確信しています」と言えるほどの手応えを感じているからこそ、「10節ぐらいまでに、去年とは違ったプラスアルファの部分を表して、『今年のヴェルディはこういうサッカーなんだ』と感じてもらえるような、爆発的なインパクトを残せるようにしたい」と、意気込む。その最初の実現が、この3月11日の試合だったら、また格別だろう。「仙台の試合は、大きくフォーカスされると思いますが、僕は僕なりに、思いを込めて戦いたいなと思っています。たぶん、これからもずっと、3月11日14時46分は、あの日のことを思い出すんだろうと思います。今回は、試合中なので、試合前にしっかりとそういう方々のことを考えながら戦いたいと思います」。

 後悔、反省、悲しみ、苦悩、感謝、喜び……3月11日、震災を通じたこの7年間の様々な感情を胸に、田村はピッチに立つ。

文=上岡真里江

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