2018.02.24

村井チェアマンが語るJリーグ「アジアからの選手補強やクラブ間の交流がアジア全体の発展に通じる」

2018年、Jリーグは25周年を迎える。村井満チェアマンは「一度でも多くスタジアムを訪れ、迫力あるプレーを繰り広げる選手たちに声援を送っていただければ幸いです」と話す
サッカー総合情報サイト

 Jリーグの村井満(むらい・みつる)チェアマンは海の向こうにも目を向けている。「アジアのプレミアリーグ」へと成長を遂げ、日本サッカーのみならずアジア全体のサッカーの活性化を図るのが狙いだ。

 さまざまな取り組みを通して、アジア諸国からの注目度は増している。タイではJ1・J2の試合が放映されており、Jリーグは着実に世界的なコンテンツとなりつつある。日本に住みながら、国外からも熱い視線が注がれるJリーグを楽しまない手はない。

 2018シーズンのJリーグは2月23日(金)に開幕。約9カ月に及ぶ激闘を一人でも多くのファンがスタジアムで観戦すれば、選手たちの士気は高まり、必然的にサッカーの質が上がる。そしてプレー面においてもビジネス面においても、Jリーグはさらなる発展を遂げていく。
 

構成=菅野浩二
写真=兼子愼一郎
協力=公益社団法人日本プロサッカーリーグ、一般財団法人スポーツヒューマンキャピタル

■Jリーグはアジア全体をマーケットと考えている

 Jリーグをより価値のあるコンテンツとするため、あるいはサッカーというエンターテインメントビジネスを成長させJリーグの理念を実現するため、私たちJリーグは各クラブが本拠地を置くホームタウンに加え、海外とJリーグという組織本体にしっかり向き合うべきと考えています。

 ビジネスの世界ではマーケットを拡大する施策は欠かせません。ターゲットとして選定した潜在顧客の範囲を広げるのが一つの基本的手法であり、実際、私たちは国外にも目を向けています。
 
 Jリーグはすでに「アジア戦略」を打ち出しており、アジア全体をマーケットと考えています。1試合に登録できる外国籍選手は1チーム3名以内を原則としながら、タイ、ベトナム、ミャンマー、カンボジア、シンガポール、インドネシア、マレーシア、カタールといった「Jリーグ提携国」の選手については外国籍選手ではないものとみなす規定を採用しています。これはアジア各国からの注目度を高めるのも一つの狙いです。

タイにおけるJリーグの認知度。Jリーグ パブ リポート 2017 ウィンターより

「Jリーグ提携国」の設置により、各クラブとも東南アジア諸国連合の有力選手を補強しやすくなりました。2016年12月、北海道コンサドーレ札幌は「タイのメッシ」と呼ばれるチャナティップ選手の獲得内定を発表しました。チャナティップ選手は2017年7月から札幌でプレーしていますが、彼の加入は戦力アップにとどまらず、札幌のブランディングにもプラスに作用しています。

 昨年5月にはタイの大手テレビ放送局「トゥルー・ビジョン」が明治安田生命J1リーグ・J2リーグのテレビ放送を開始。チャナティップ選手のデビュー戦に際して、Facebook Liveで試合前の様子を動画配信したところ、341万人もの方が閲覧する結果となりました。コンサドーレというサッカークラブだけでなく、北海道や札幌という地を知っていただくことにつながったものと思います。

 今シーズンはセレッソ大阪がチャウワット・ヴィラチャード選手、ヴィッセル神戸がテーラトン選手、サンフレッチェ広島がティーラシン選手を獲得し、新たにタイのプレーヤーが3人がJリーグでプレーすることになりました。開幕前にはFC東京が「2018 Jリーグアジアチャレンジ in インドネシア」と銘打ち現地のバヤンカラFCと試合を行っています。

2018シーズン、Jリーグでプレーする5人のタイ人選手。左からティーラトン(神戸)、チャナティップ(札幌)、ジャキット(FC東京)、チャウワット(C大阪)、ティーラシン(広島)


 
 東南アジアからの選手補強やクラブ間の交流は間違いなくフットボールマーケットの拡大につながっていくはずです。たとえばサッカー観戦もプランに入れた訪日観光客の増加が期待できるでしょう。

 クラブ経営においてもプラス効果が見込まれます。実際、2016年に水戸がベトナム人のグエン・コン・フオン選手を獲得した際、クラブは国営ベトナム航空とスポンサー契約と結ぶことができました。さらには、ベトナム航空がハノイと茨城空港を結ぶチャーター便を運航することになり、サッカーを通して茨城県や水戸市の活性化の架け橋にもなりました。

■理念の実現に向けて、Jリーグ自体でも変革を実施

 ビジネスパーソンなら誰もが知っているとおり、ビジネスを成功させるには「かかわる人間すべてがめざすべきゴールを共有し、目的達成のために手を取り合いながら動くこと」が必要不可欠となっています。

 組織がスムーズに連係し、Jリーグの発展を加速させるという点において、私たち公益社団法人日本プロサッカーリーグも新たな一歩を踏み出しています。従来は関連会社が6つあり、結果、7つの法人が存在していました。組織の数が多いぶん、どうしても決断や動きが遅くなったり、ゴールの共有の徹底化が弱まってしまったり、いわゆる「タコツボ化」をしていた部分は否めませんでした。

 そのため、2017年4月に株式会社Jリーグホールディングスを立ち上げ、すべてを100パーセント子会社に変えています。ホールディングス化により評価制度や人事制度など法人としてのあり方を統一。社員全員が「日本サッカーの水準向上及びサッカーの普及促進」「豊かなスポーツ文化の振興及び国民の心身の健全な発達への寄与」「国際社会における交流及び親善への貢献」といった理念の実現に向けて仕事に取り組みやすい環境を整えました。

 7つの法人が別々にあった時はフロアもばらばらでしたが、現在はワンフロアで働くスタイルを採用しています。自然に自分の部署以外の業務内容を知るような環境にあり、リーグの理念の実現に向けてそれぞれが密に連係している光景が増えてきたという実感があります。

 そうした組織改革を通じJリーグは新たな化学反応を起こしてくれる人材を求めています。私たちが向き合っているのはサッカーというスポーツですが、お客様やかかわる従業員と視線を合わせ、コミュニケーションを密にとって、より価値のあるものを提供していくという点では一般的な企業活動と変わりません。

 2015年にJリーグは「Jリーグヒューマンキャピタル」(JHC)立ち上げ、現在は「一般財団法人スポーツヒューマンキャピタル」(SHC)として独立した活動も「スポーツ経営を担う人材の開発と育成」を目的としています。「Jリーグの成長戦略やJクラブの事業計画を考える」といった実践的な学びを通し、経営的な視点から財政基盤をより健全的なものにできる人材を各クラブに送り出すのが理想の一つです。

 経営人材の育成やSHCの取り組みはJ.LEAGUE PUB Report 2017 Winter(Jリーグ パブ リポート 2017 ウィンター)で確認できます。現在はJクラブで働くJHCの卒業生も紹介しています。

 私自身も前の職場は人材ビジネス業でしたし、異業種からの挑戦も大歓迎です。他の分野で培われたビジネスの知見や経験がうまくかみ合うことで、Jリーグはより多くのファンとサポーターに支えられるコンテンツになっていくはずと信じています。

 もちろん、まだまだ向上の余地はあります。それでも、25周年を迎えたJリーグは、多くの皆様の支えでここまでやってこられました。2018シーズン、一度でも多くスタジアムを訪れ、迫力あるプレーを繰り広げる選手たちに声援を送っていただければ幸いです。


\教えてくれた人/
村井満(むらい・みつる)さん
公益社団法人日本プロサッカーリーグの5代目チェアマン。早稲田大学卒業後、日本リクルートセンター(現リクルートホールディングス)入社。同社執行役員やリクルートエージェント(現リクルートキャリア)社長などを歴任し、2008年よりJリーグ社外理事。2014年1月31日から現職。埼玉県立浦和高等学校ではサッカー部に所属し、GKとしてプレーした。世界のサッカーを初体験したのは大学時代の1979年。日本で開催され、若きディエゴ・マラドーナを擁するU-20アルゼンチン代表が優勝を果たしたFIFA U-20ワールドカップを生観戦した。

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