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【コラム】“明と暗”を分ける最終決戦…J1昇格プレーオフ決勝、90分後の未来は夢か絶望か

2017.12.01

明暗がくっきりと分かれるのがJ1プレーオフ決勝だ [写真]=J.LEAGUE

 正と負の感情がこれほど複雑に交錯するゲームは、J1昇格プレーオフだけかもしれない。

 チームの目標を叶える。自らの夢を掴む。ファン・サポーターのために表舞台へ復帰する。そうしたポジティブな感情は、選手たちの全身を貫く。試合終了のホイッスルに拳を突き上げたチームとその選手には、まばゆい明日が、希望に満ちた未来が、待っている。


 その一方で、負ければ何一つ得るものはない。2017年のJ2で掴んできた多くの勝利も、J1昇格プレーオフ準決勝でライバルを退けたことも、すべて意味を失ってしまう。恐ろしいほどの喪失感と底知れぬ絶望感に、敗者は包まれていく。

 濃淡の激しい勝負が繰り広げられるのは、歴史が証明している。

 12年のJ1昇格プレーオフを勝ち上がったのは、年間順位6位の大分トリニータだった。ジェフユナイテッド市原・千葉との決勝は、0-0のまま推移していく。ドローのままなら年間順位5位の千葉が昇格の権利を得るが、勝負はまだ着地点に辿り着いていない。

 後半終了間際の86分だった。DFラインの背後へ抜け出た林丈統(大分)のシュートが、GKの頭上に緩やかなループを描く。準決勝で3位の京都サンガF.C.を破っていた大分が土壇場でリードを奪い、4年ぶりのJ1復帰を果たしたのだった。

林丈統

途中出場の林丈統が勝負を決めた [写真]=J.LEAGUE

 翌13年のJ1昇格プレーオフでも、年間順位で下位のチームが主役を演じる。4位の徳島ヴォルティスが5位の千葉、6位の京都を連破し、初のJ1昇格を掴んだのだ。

 ノックアウト方式のトーナメントは、そもそも波乱の要素を含む。それにしても、3度目のJ1昇格プレーオフとなる14年はセンセーショナルだった。

 年間順位4位のジュビロ磐田と同6位のモンテディオ山形が激突した準決勝は、1-1のまま後半アディショナルタイムへ突入する。スクランブル態勢で2点目を求める山形は、右CKにGK山岸範宏が攻め上がる。キッカーの石川竜也が左足でインスイングのボールを入れると、背番号31を着けた守護神がニアサイドで跳躍する。ゴール左上スミヘ吸い込まれたヘディングシュートが、山形を決勝へ導いたのだった。山形は決勝でも千葉を破り、6位からのJ1昇格を達成した。

 引き分けが呼び込んだドラマもある。15年の決勝だ。

 年間順位3位のアビスパ福岡と同4位のセレッソ大阪の一戦は、後半の60分にC大阪が先行する。それまで好守を連発していた福岡GK中村航輔の牙城を、当時35歳の元日本代表FW玉田圭司が破った。

 年間順位で上回る福岡は、引き分けならJ1昇格を引き寄せられる。対してC大阪は、勝利が絶対条件だ。福岡の井原正巳監督は同点へ持ち込むため、C大阪の大熊清監督はリードを守るために、70分過ぎから次々にカードを切っていく。

 試合会場のヤンマースタジアム長居のピッチに、歓声と悲鳴が降り注いだのは87分だ。相手ゴール前まで駆け上がった福岡DF中村北斗が、ペナルティエリア内から右足で豪快な一撃を蹴り込む。福岡はそのまま終了のホイッスルを聞き、3位チーム初の昇格を果たしたのだった。

 C大阪が歓喜に包まれた16年からは、松本山雅FCとファジアーノ岡山の準決勝に触れるべきだろう。年間順位6位の岡山が22分に先制するが、松本は74分にパウリーニョのヘッドで追いつく。1-1のまま後半アディショナルタイムとなるが、ここから試合が動くのだ。

J1昇格は果たせなかったが、6位岡山が3位松本を下した [写真]=J.LEAGUE

 90+2分、岡山の赤嶺真吾が決勝ゴールを流し込む。しかし、劇的な勝利で決勝へ勝ち上がった岡山の野望も、年間順位4位C大阪に打ち砕かれた。

 ワンプレーが千金の重みを持ち、一瞬の好判断がチームに極上の歓喜を呼び込む。通常のゲームなら試合に影響を持たないミスが、積み上げてきたものを瓦解させる引き金にもなる。

 ピッチ上に夢と絶望が描かれるJ1昇格プレーオフは、あまりにも情熱的なバトルであり、残酷なサバイバルでもあり、誰にも予想がつかないのだ。

文=戸塚啓

2017 J1昇格プレーオフ決勝
12月3日(日)16:00 名古屋グランパス vs アビスパ福岡 @豊田スタジアム/DAZN NHK BS1 NHK名古屋

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