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【J1昇格プレーオフ準決勝 プレビュー】勢いに乗る千葉は名古屋に“トリプル”なるか…福岡対東京Vはサイドの攻防に注目!

2017.11.25

J1昇格プレーオフ準決勝では名古屋と千葉、福岡と東京Vが激突する [写真]=J.LEAGUE

 2012年。大分トリニータが果たした6位からの下克上。2013年。四国初のJ1を勝ち獲った徳島ヴォルティスの歓喜。2014年。伝説になった“山の神”降臨。2015年。三度繰り返された長居の悲劇。2016年。ファジアーノ岡山の夢を打ち砕く苦労人・清原翔平の昇格弾。常に勝者と敗者のコントラストを色濃く映し出してきたJ1昇格プレーオフが、今年もいよいよ幕を開ける。

 6度目を迎えるこの大会。過去には徳島や今年J1自動昇格を決めたV・ファーレン長崎、愛媛FC、岡山など2000年代後半以降にJリーグへ参入したクラブにとって、悲願達成に挑むステージという印象も強かったが、今年は1993年の創設時からリーグに在籍してきた、いわゆる『オリジナル10』の名古屋グランパス東京ヴェルディジェフユナイテッド千葉といった“老舗商店”が軒を連ねており、やや例年とは趣を異にしている印象がある。新たな名勝負の生まれる予感に溢れた2017年のJ1昇格プレーオフ。大きな期待を抱きつつ、名古屋対千葉、アビスパ福岡対東京Vの2試合をそれぞれプレビューしていきたい。


 まずは最終節で3位に浮上した名古屋と、劇的な展開で6位に滑り込んだ千葉がパロマ瑞穂スタジアムで激突する一戦。今年の対戦成績は千葉が2戦2勝とシーズンダブルを達成している。とりわけ第41節の直接対決では千葉がハイプレスで名古屋を圧倒。0-3の快勝を収め、アウェイのゴール裏から喝采を浴びた。

 このゲームのポイントは、名古屋が前回対戦時に掻い潜れなかった千葉のプレッシャーを回避できるかと、ハイラインの裏側をうまく突けるか否か。そういう意味でも名古屋の前線がどういう顔触れになるかは興味深い。候補はシモビッチ、佐藤寿人、ガブリエル・シャビエル、玉田圭司、押谷祐樹あたりか。中でもシモビッチが出場すると、名古屋と言えどもスタイルは多少変化する。アバウトなボールでも起点になれる彼が、スタメンで出場するか、途中投入されるかは、ゲームの様相を大きく左右してくることが予想される。

 やや気になるのは最終ラインのビルドアップ時。第41節では左サイドバックの和泉竜司が町田也真人にボールを引っ掛けられ、そこから2失点目を奪われると、直後にもセンターバックに入った櫛引一紀の中途半端なパスからカウンターを食らい、3失点目を喫している。もちろんそのリスクを承知の上で戦っているはずだが、メンタル面でその2失点がどういう影響を及ぼすかも、注視する必要はありそうだ。

名古屋のシモビッチ(上)と千葉の近藤(下)によるマッチアップもありそうだ [写真]=Getty Images

 一方、怒涛の7連勝でプレーオフへ進出してきた千葉は、間違いなく最も勢いのあるチーム。さらに名古屋に快勝を収めた時のいいイメージを持って、この90分間へ入れるアドバンテージは見逃せない。守備のキーマンは近藤直也。開幕当初は極端なハイラインのコントロールに苦しんだ印象もあったが、既に最適なバランスを見出した感があり、守護神の佐藤優也が無理に飛び出すシーンも格段に減少。また、最終節には劇的な決勝弾を叩き込むなど、頼れる主将として存在感を高めてきた。

 攻撃陣で注目したいのはシーズン途中に福岡から期限付きで加入した為田大貴。左サイドハーフの定位置を掴むと、その鋭い突破力は千葉の大きな武器に。加えて前述の名古屋戦で見せたような得点力も有しており、ここまでチームの攻撃を牽引してきた清武功暉をサブに追いやるほどのパフォーマンスを継続。契約の関係で、準決勝に勝っても決勝の相手が福岡の場合は出場できないだけに、この一戦へ懸ける想いの強さは想像に難くない。どんな展開にせよ、打ち合いになりそうな雰囲気は十分。キックオフは16時。今からその瞬間が待ち遠しい。

 続いては4位でフィニッシュした福岡と、ミゲル・アンヘル・ロティーナ監督の下で5位と躍進した東京Vが対峙する準決勝。福岡にとって本来のホームであるレベルファイブスタジアムが改修中のために使用できず、ロアッソ熊本がホームとして利用しているえがお健康スタジアムが、その舞台となった。今年の対戦成績は福岡から見て1勝1分け。直近の対戦に当たる第39節は、ウェリントンに冨安健洋と攻守の要を出場停止で欠きながら、福岡がアウェイで勝ち点1を持ち帰っている。

 両チームのスタイルを考慮しても、堅い展開で推移していくことが想定される中で、福岡の生命線は言うまでもなくウェリントン。19ゴールという得点数以上にチームへの貢献度は高く、前からのプレスも献身的にこなしつつ、体を張ってセットプレーを獲得するシーンも多々。2本のPK失敗に退場処分まで受けた第38節の千葉戦を経て、さらにエースとしての自覚が増した感も。2年前の昇格プレーオフを戦った経験値も心強い。

 ゲーム全体を見渡せば、大きなカギを握るのはサイドの攻防。右サイドバックの駒野友一と左サイドバックの亀川諒史が誇る縦への推進力はJ2トップレベル。特に右サイドハーフでの起用が予想される山瀬功治と駒野は、同い年で20年近い友人ということもあってか、スムーズな連携を披露する。国際経験も豊富な36歳の2人が福岡にもたらす安定感と落ち着きが、こういう一発勝負のゲームほど効果を発揮するはずだ。

攻撃の核を担う福岡のウェリントン(上)と東京Vの安西(下)[写真]=Getty Images

 そのサイドという意味で、東京Vのキーマンは22歳の安西幸輝。本職はサイドバックだが、今年は左右のウイングバックに加え、さらに高い位置の両ウイングでも躍動。最終節の徳島戦では、こちらもJ2屈指のサイドプレーヤーと言っていい馬渡和彰と見応えのあるマッチアップを繰り返し、能力の高さを改めて証明した。彼の起用法も含め、知将ロティーナが繰り出す采配からも目が離せない。

 そして、全体のバランスを司るのは中盤アンカーに位置する内田達也。移籍初年度ながら開幕から定位置を確保すると、持ち前のバランス感覚でチームをコントロール。高い危機察知能力でピンチの芽を潰しつつ、シンプルなパスで攻撃の起点を創り出すなど、東京Vに欠かせない選手へ成長している。また、今シーズンの得点数は2点だが、どちらも劇的な決勝ゴール。最終節でもチームをプレーオフへ導く得点を記録するなど、ここ一番で“持っている”男ぶりを見せ付けた。

 最後に付け加えておきたいのは中盤のリザーブに控える橋本英郎と中後雅喜の両ベテランの存在。それぞれガンバ大阪と鹿島アントラーズでタイトルの味を知る2人が、このビッグマッチで効果的な仕事をする可能性は十分にある。おそらくは1点勝負。ゴールを奪うのは本命か、はたまたあっと驚く伏兵か。

 泣いても、笑っても、今年のJ2に残されたのはわずか3試合。そのすべてが好ゲームになることを期待しながら、今年の270分間からも記憶に残るような、新しいドラマが生まれることを願ってやまない。

文=土屋雅史

■J1昇格プレーオフ準決勝

11月26日(日)13:00 アビスパ福岡 vs 東京ヴェルディ @えがお健康スタジアム /DAZN
11月26日(日)16:00 名古屋グランパス vs ジェフユナイテッド千葉 @パロマ瑞穂スタジアム /DAZN NHK名古屋

■J1昇格プレーオフ決勝
12月3日(日)16:00 未定 vs 未定/DAZN NHK BS1

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