2017.11.23

【ライターコラムfrom千葉】人事を尽くして天命を待った千葉…J1昇格プレーオフで今季の集大成を見せる

ジェフユナイテッド市原・千葉
7連勝中の千葉。勢いそのままJ1昇格を狙う [写真]=Getty Images
千葉県在住のフリーライター。Jリーグ(ジュフユナイテッド市原・千葉と浦和レッズ)をメインに取材活動をし、県内アマチュアスポーツも追いかける。

 人事を尽くして天命を待った。だからこそ、サッカーの神様はそれを見逃さなかった。

 明治安田生命J2リーグ戦最終節の横浜FC戦では、開始1分にオウンゴールを献上し苦しい展開となったが、30分、町田也真人が「『行け!』という気持ちで思い切り蹴りました」と角度のない位置から右足で突き刺し同点に追い付くと、J1昇格プレーオフへの進出には“勝利が絶対条件”のホームチームは後半アディショナルタイム90+2分にCKを近藤直也がドンピシャのヘディングシュートで合わせフクアリ劇場に歓喜を呼び込んだ。

 ヒーローになった近藤は言う。「ベンチに(前線に)上がっていいかを訊いて、それから前にポジションを取りました。CKからいいボールがきてフリーだったので、あとは入れるだけで自信もあり、最後に『決めてやろう!』という気持ちだけでした」

近藤直也

後半アディショナルタイムに劇的決勝点を挙げた [写真]=Getty Images

 これでジェフユナイテッド市原・千葉は、順位を8位から6位に上げる大逆転を演じ、J1昇格プレーオフに滑りこんだ。チームがプレーオフに進む条件として自らの勝利はもちろんのこと、5位・徳島ヴォルティス(勝ち点67)、6位・東京ヴェルディ(勝ち点67)、7位・松本山雅FC(勝ち点66)の結果に左右されていた。厳しい状況の中でも選手たちは最後まで諦めずに戦って結果を出した。それがクラブ新記録となる7連勝につながり、積み上げた勝ち点『68』は、3位で終えた2014年に並ぶものとなった。

 背番号3は“努力をしなければ運に身を任せる資格もない”ことを知っているからこそ、足の状態が万全ではない中でも自ら調整を怠らずコンデションを上げピッチでは100パーセント以上のプレーを見せている。

「僕らには失うものがありません。このサッカーをして、そしてハードワークをして、走り切るサッカーをすれば結果はついてくると信じています。最後まで自分たちのサッカーを貫きたいです」(近藤)と可能性がある限りはすべてを懸ける覚悟だ。

 また、J1昇格プレーオフにかける執念は熊谷アンドリューも格別だった。

 9月下旬に暴行容疑の不祥事を起こし、クラブから公式戦4試合の出場停止と減棒の処分を下されていたが、出場停止が明けた第32節・大分トリニータ戦の81分からピッチに立ち復帰を果たした。

 自分自身を深く省みる日々を送り「多くの方に多大なご迷惑をおかけしてしまいました。自分が軽率な行動をとってしまったにも関わらず応援をしてくれる人がいるので、ピッチで恩返しをしたいと思います。ここからは自分が出来る限りのことをするしかありません」と固く決意を誓った。

 クラブの幹部たちは若き才能の前に再び道を作ろうと尽力してくれた。また、フアン・エスナイデル監督も彼の才能を認めているからこそ信頼してピッチに送った。熊谷自身も、自分が必要とされ期待を込めて送り出されたことを意気に感じ熱いプレーを披露する。第41節の名古屋グランパス戦ではボランチの一角で先発出場をすると、1点目と3点目の起点になった。サッカーをする喜びを噛みしめながら「自分たちのやりたいサッカーができて、自分もチームの勝利に貢献できて良かったです」(熊谷)と気持ちが溢れ出した。

 信頼を裏切らないように、チームにとってベストなことは何か。勝つためにも何が必要か。与えられた役割を全うするために腹を括った。

熊谷アンドリュー

恩返しを誓う熊谷アンドリュー [写真]=Getty Images

 そして、自らもチームの“集大成”と位置付けた最終節の横浜FC戦では、素早い寄せとパワフルなボディコンタクトを発揮。機を見ては鋭いパスを前線に送り攻守両面で重要な役割を果たした。終了間際には近藤が前線に上がるとセンターバックのポジションに入りJ2得点王のイバをケアし、攻めに転じる横浜に流れを渡さないように泥臭いプレーを続けた。

「ドゥさん(近藤)は上がると結果を残してくれるので信じているし、本当に感謝しています」と、劇的な勝ち越し弾にほんの少しだけ頬を緩ませる。

 そして、ラストプレーとなったセットプレーを凌ぐとチームメイトと抱き合い喜び爆発させていた。試合を振り返り「勝つ気持ちがみんなから出ていたことで劇的な勝利になったと思います。一人ひとりの勝ちたい意識が強かったです」と、この試合の勝因に挙げた。

 また、ボランチでコンビを組む佐藤勇人は「(熊谷は)ボールを奪うパワー、球際、足元の技術もあります。今年、一番ひと皮が向けた選手だし、一番将来性があると感じます。例の件で一時、チームから離れましたが戻ってきた時の彼の顔つきを見ると『やってやろう』、『チームのためになろう』という姿勢を練習でも出しています」と、雌伏の時を経てなおも成長する熊谷を評した。

 ただ、チームと熊谷の戦いはここで終わった訳ではない。J1昇格にはあと2つの勝利が必要だ。千葉にとってJ1昇格プレーオフ準決勝はリーグ3位の名古屋との対戦が決定した。引き分けではリーグ戦上位チームの勝ち抜けが決まっているからこそ、勝つことでしか道は開けない。

 熊谷は言葉に力を込めて言った。

「(名古屋との前回対戦では)いい試合が出来ました。自分たちは変わらず“ハイプレス・ハイライン”で勝負して試合に勝ちたいです。自分たちのサッカーをすれば勝てない相手ではない。1年間やってきたことを貫いて、J1に上げることで恩返しをしたいと思っています」

 厳しい戦いを制することでチームの血肉になっていく過程は、この7連勝の間に確かに見て取れた。その中、どん底から浮上のきっかけを掴んだ若者が全身全霊を懸け、チームのためにハードワークを続けることが悲願のJ1昇格への助走にもなるはずだ。

 笑顔で今シーズンを終えるためにも、ハイエナジーを武器に戦い抜いて行く。

文=石田達也

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