2017.11.08

【ライターコラムfrom松本】松本に馴染んだパウリーニョ…愛着を胸に瀬戸際の戦いへ

パウリーニョ
J1昇格へ決意を語ったパウリーニョ [写真]=J.LEAGUE
1978年生まれ、東京都出身。長野県内の新聞社で15年まで勤務し、現在はフリーライターとして松本山雅FCを中心に信州スポーツを幅広く取材。クラブ公式有料サイト「松本山雅FCプレミアム」編集長も務める。

 日本にすっかり溶け込んだブラジル人ボランチは、ピッチの中央でひときわ強いエネルギーを発している。

 1-1のドローに終わり、J1自動昇格の可能性が消えた明治安田生命J2リーグ第40節カマタマーレ讃岐戦。松本山雅FCのパウリーニョは「これからは命を懸けて、試合が終わったら倒れるくらいの全力を出さなければいけない」と語気を強めた。普段から抑揚の強いポルトガル語を話すが、通訳を介すまでもなくその「気迫」はひしひしと伝わってきた。

 この試合のパウリーニョは、攻守にわたって奮闘が光っていた。前半からリトリートする讃岐に対し、ノールックのサイドチェンジで好機を演出。左右を攻略すれば相手DF陣がゴール前に密集してバイタルエリアが空くため、得意のミドルシュートを狙ってポジション取りをしていた。要求していたマイナスのクロスが入る場面はなかったものの、「みんなチームが勝つために全力を尽くしたので仕方がないこと」と不平を漏らすこともなかった。

 サッカーに限らず、望む結果を得られなければ責任回避をしたくなるもの。しかしパウリーニョは現状を真摯に受け止め、その上で気丈に未来をつかもうとする。「ポジティブに同じ方向を向いて、ピッチ内で最大のパフォーマンスを出すことが大事」。松本の中では若い部類の28歳だが、「ピッチの中では年齢は関係ない。アグレッシブにプレーしたりチームを盛り上げたり、積極的にコミュニケーションを取ったりして仲間を引っ張っていくのが自分のスタイル」と頼もしい。

パウリーニョ

2016年6月に加入。今季はチームの中心に [写真]=Getty Images

 ただ、ヒートアップしすぎることもあると自覚しており「時々コントロールしてもらうことが必要かもしれないけど」といたずらっぽく笑う。実際に試合中はピッチ内で工藤浩平らが、ベンチからは反町康治監督やフェリペ通訳がジェスチャーを交えて「抑えて、抑えて」となだめる場面は少なくない。

 プレーでも言葉でも戦う姿勢を前面に出すのには理由がある。2010年に初来日して以降はJ1、J2の5クラブに在籍。どの街でも快適に過ごしてきたというが、中でも昨夏以降プレーしている松本は「街の落ち着いたリズムが肌に合っている」のだという。「温かく迎え入れてくれたサポーターには感謝しかないし、自分らしいサッカーもできて本当に幸せ。サポーターはJ1に値するので、その目標に達するには何としてでも(J1昇格)プレーオフに入らないといけない。今は崖っぷちギリギリのところにいる」。松本への愛着が強いからこそ危機感は募り、生来の闘志はよりかき立てられる。「muito」(本当に)と力強く繰り返す話ぶりからも、そのことが如実ににじむ。

 次節はJ1自動昇格へ一戦も落とせない4位アビスパ福岡とのアウェイゲームに挑む。5位松本にとっても、J1昇格プレーオフ圏内を死守するため白星必須の大一番だ。「福岡はレベルの高いチーム。ディフェンスは堅いし中盤のテクニシャンも多いし、前線のウェリントンも気を付けないといけない。でも勝てるチャンスは十分にある」と、全身に気迫をみなぎらせるパウリーニョ。全ては松本が「muito feliz」(本当に幸せ)であるために。

文=大枝令

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