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【ライターコラムfromG大阪】「大事な一歩」を踏み出した呉屋大翔…宿敵から奪ったゴールは“葛藤”からの決別

2017.10.27

ガンバ大阪でプレーする呉屋 [写真]=JL/Getty Images for DAZN

「いやぁ、良かったです。気持ちで押し込みました。チームが勝てればより喜びは大きかったと思いますが、僕にとっては大事な一歩でした」

 前節・浦和レッズ戦で決めた今季の明治安田生命J1初ゴールを振り返り、そう話したのはFW呉屋大翔だ。度重なるケガに苦しめられた呉屋にとっては待望の一発。特にコンディション的にも充実を見せていた最近は『試合』に飢えていただけに「やってやる」という気持ちは強かった。


「個人的には今シーズン、ずっとケガで苦しんできたし、チームにも迷惑をかけてしまった。復帰して以降は、チームも勝てていなかったのに使ってもらえない試合が続いていたので、この状況を覆すためにはどうしても結果が必要だと思っていました。ピッチに入るにあたっては、監督からも『一発決めてこい』と言われていましたし、何より自分自身の『決めたい』という気持ちがゴールに繋がったんだと思います。今シーズンの公式戦は、残り4試合になってしまいましたが、最後まで『ゴール』でチームに貢献することに拘って戦いたいと思います」

 振り返ること約1年前。大学ナンバー1FWとして鳴り物入りでガンバ大阪に加入した呉屋はリーグ戦のホーム最終節、アルビレックス新潟戦でプロ初ゴールを決め、ようやく「獲れない」呪縛から解き放たれた。だがその矢先、天皇杯に向けた準備を続けている最中に足首を負傷。戦列を離れると、リハビリは年が明けても続き、かつアクシデントもあって復帰は大幅に遅れた。しかも戦列に復帰したのも束の間、8月3日には練習中に左肩関節脱臼のケガを負い、全治約2カ月の診断を受ける。

「足ではない分、リハビリ中もやれることは多いし、積み上げてきたものを一気に全て失ってしまうようなケガではないので、そこは前向きに捉えたい。とにかく治すしかないので…。頑張って治します!」

 気丈に話していたが、その胸に悔しさやぶつけようのない苛立ちを抱えていたのは言うまでもない。いや、それ以上に胸のうちにある『葛藤』と戦っていたのは戦列復帰後か。呉屋が戦列に戻った際のチームは、勝てない状況が続いており、なおかつ攻撃陣も思うように結果が出せていなかったものの、5名の代表組が不在の中で臨んだ2017JリーグYBCルヴァンカップルヴァンカップ準決勝のセレッソ大阪戦でも、出場時間はわずかに4分。練習試合などでも『ゴール』という明確な結果を残せていなかった現状から、本人も反省の言葉を口にしていたが、それでも「出してもらえたら、やれるという自信はある」と強気な姿勢を崩すことはなかった。

呉屋

浦和相手に意味深いゴールを奪った呉屋(13番) [写真]=Getty Images


 そんな中で掴んだ浦和戦での出場チャンス。先発とはいかなかったものの、浦和に3度目のリードを奪われた直後の75分にピッチに立つと、アディショナルタイムも2分を数えた中で、DF初瀬亮が蹴った右CKを、最後は肩で押し込むような格好でねじ込んだ。

 思えば、その日から約1年前の10月15日。ルヴァンカップ決勝の舞台で、同じ浦和を相手に88分からピッチに立った呉屋は、延長後半も終わりに差し掛かった120分。ビッグチャンスの場面で放ったシュートはゴールポストを叩き、ライン上で相手DFに掻き出されてしまう。しかもPK合戦では、3人ずつ決めた後に4人目のキッカーとして立ち、まさかの失敗。結果、全員が成功した浦和に敗れるという屈辱を味わった。その時と同じ埼玉スタジアムのピッチで、同じ浦和から奪った、チームに勝ち点をもたらした今季のJ1初ゴール。呉屋にとってはいろんな記憶を塗り替える、意味深い一発だった。

文=高村美砂

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