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【ライターコラムfromG大阪】レギュラー奪取、さらなる飛躍へ…初瀬亮を支える“腐らない心”

2017.10.13

レギュラー定着を目指す初瀬亮 [写真]=JL/Getty Images for DAZN

 目立ちはしないが、密かに結果を残し続けている男がいる。初瀬亮だ。

 皮切りは、9月20日に戦った天皇杯全日本サッカー選手権大会・ラウンド16の柏レイソル戦。1-3の状況で迎えた68分にピッチに立つと、右サイドからファーサイドへとクロスボールを送り込み、井手口陽介のヘディングゴールをアシスト。9月30日の明治安田生命J1リーグ第28節、横浜F・マリノス戦では74分から出場した4分後、彼が右サイドから上げたクロスが相手DFにあたってこぼれたボールを長沢駿がヘディングで仕留めた。10月4日の2017JリーグYBCルヴァンカップ準決勝第1戦、セレッソ大阪戦で同点ゴールを決めた井出遥也のゴールを演出したのも初瀬だ。右サイドから放り込んだマイナスのクロスボールをゴール前中央で井出が右足でダイレクトで仕留めた。
  
 柏戦から数えれば、公式戦5試合で3アシスト。うち、先発出場はC大阪戦だけで決して多くの出場時間を与えられているわけではないと考えても、驚異的なペースだろう。J1では彼が主戦場とする左右サイドバックで藤春廣輝やオ・ジェソクらが安定したパフォーマンスを示している現状があり、なかなか先発出場のチャンスを得られていないが、彼らにプレッシャーをかける意味でも十分なアピールだ。

 それでも、思うように先発出場のチャンスが巡ってこないことに、初瀬が不満を唱えることはない。もちろん、言うまでもなく「先発に試合に出たい」という思いは常に心にある。だが、今は与えられた時間、ポジションで結果を残すことが最優先だと言う。


今季は着実に出場機会を伸ばしている [写真]=JL/Getty Images for DAZN

「攻撃面ではハルくんやジェソに負けていないという自信はあります。ただ1対1の守備や走力の部分は、彼ら以上のものを出せているかといえば、まだまだ足りない。特に走力については、単に距離やスピードということではなく、チームにとって効果的に走れているか、チームを助けられる走りができているかという部分で物足りなさは感じているし、試合に出ているハルくんやジェソのプレーから学ぶことも多い。ただ、そうやっていろんなことを同じポジションの選手から吸収することを続けていればいつか必ずチャンスは来るし、そこで信頼を勝ち取ればまた次のチャンスを掴むことができるはず。その繰り返しの中で代表選手を押しのけて先発のポジションを奪えたら……。見えてくるものも大きいはずですしね。だからこそ、今はどこで使われようと監督の求める仕事をできる自分でいられるように、自分をしっかり磨くこと。そのことに気持ちを集中させています」

 本人曰く「アカデミー時代から僕は雑草だったから」と笑う。ジュニアユース時代も、同期の市丸瑞希や髙木彰人が1年生から試合に絡んでいたのに対し、初瀬がレギュラーの座をつかんだのは2年生の終わり。ユース時代も同期メンバーのうち5選手ほどが1年生からAチームでプレーしたのに対し、初瀬は1年生の終わりにケガ人が出たことで、急遽Aチームに呼ばれ、その時、途中出場した練習試合でゴールを決めて、左サイドバックのポジションを手中にした。

 そうして『遅咲き』だったアカデミー時代、自分を支えた『腐らない心』はプロになった今も、初瀬の大事な宝物。「それを備えた自分である限り、いつか必ずチャンスは訪れ、そこで結果を残せる自分がいる」と初瀬は言う。いや、それを身をもって実感してきたからこそ、今もコツコツ、黙々と。いつか大輪の花を咲かせられると信じて。

文=高村美砂

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