2017.10.13

【ライターコラムfrom清水】“昇格請負人”小林伸二監督が語るJ1残留への心得「選手に責任はない」

小林伸二
“昇格請負人”と呼ばれる小林伸二監督は、清水を残留に導けるか [写真]=J.LEAGUE PHOTOS
スポーツ専門誌の編集者を経て、95年からフリーのスポーツライターに。静岡に拠点を置き、県内のチームを中心に取材を行っている。

 2015年に初めてJ2に降格してから1年でJ1に復帰した清水エスパルス。復帰初年度の今季は「9位以内」(小林伸二監督)という目標を掲げたが、第28節終了時点で7勝8分13敗の13位。9位のガンバ大阪とは勝点11差で、16位のヴァンフォーレ甲府とは勝点2差なので、まずは何としても残留を決めることが最大の目標となっている。

 残り6試合となって1節ごとにプレッシャーも強くなっているが、その中でひとつプラス要素と言えるのは、“昇格請負人”と呼ばれる小林伸二監督が、残留争いに勝ち残った経験も多いことだ。

 2002年にJ1へ初昇格させた大分を2003年に14位で残留させ、翌年はファーストステージを最下位で終えたセレッソ大阪をセカンドステージから率いて、ラスト2試合で連勝して残留に導いた。そして翌2005年は、最終節に勝てば年間優勝というところまでC大阪を躍進させた(最終順位は5位)。08年に初昇格させたモンテディオ山形も、2009年に15位、2010年に13位で残留させている。

 唯一1年で降格したのは14年の徳島ヴォルティスだが、J2の4位からプレーオフで初昇格したチームだけに、戦力的に厳しかったことは否めない。その意味では、当時の徳島に比べれば、今年の清水は戦力的に整っている。

清水エスパルス

残留を目指す清水 [写真]=JL/Getty Images for DAZN

「セレッソのように力のあるチームでもああなってしまうという例はよくありますが、そういう中で大事になるのは、持っている力をいかに当たり前に出させるかということだと思います。残留争いという状況に怯えるのではなくて、当たり前のプレーをしっかりやる、チャレンジしていくということです」(小林監督)

 そこまではどの監督からも聞く言葉だが、肝心なのは、いかに選手たち本来の力を発揮させるかという具体的な手腕にある。その一環として小林監督がよく言うのが「楽しくサッカーをやる」ということだ。

「描いていることを積極的にやれるとサッカーは楽しいですよね。よけいなことを考えるんじゃなくて、ゲームだけに集中する。そのためには、日頃のトレーニングから1日1日やれることをしっかりとやる。少し調子が悪かったら、悩むんじゃなくて、まず動く。動いて、ボールのタッチ数を少なくして、リズムに乗る。硬くなるということは動かなくなるということですから、動いてサッカーをするということもすごく大事です」

 そこに関連して、コーチングの声を出すということも従来以上に求めている。

「状況が悪いときに『フリー!』とか『来てる!』というのを言えば、ボールを取られにくくなるし、取られなければ自分たちのリズムを作れる。お互いのプレーを助け合うというのも大事です。声を出すとゲームの流れに乗れるという効果もあるので、その意味でも重要です」

 ベテラン指揮官がこれまで率いてきたチームと今季の清水が違うところは、失点をなかなか減らせないことにある。今季の開幕当初は、アウェイでは守備に重点を置いて手堅く戦い、結果も出してきたが、攻撃的に戦ったホームでは、逆に失点が増えてなかなか勝てなかった。

 その後、ホームでも手堅く戦うようになり、第16節・甲府戦(6/25)でようやくホーム初勝利(スコアは1-0)。徐々にホームでも結果を出せるようになってきたが、夏場は上位陣との対戦が続いて再び失点が増え、8月から9月は9試合中7試合で複数失点して、2勝1分6敗。失点のパターンとしてセットプレーやカウンターから失う場面が多く、個の力という面の原因もある。

「(降格するチームは)守り一辺倒でどうしても勝てないとか、何とか点を取ったんだけど守りきれないというケースが多いですが、(清水は)失点は少なくならない反面、点を取る力はあります。だから、今度はいかに守るかを考える。堅い守りを続けながら、そこから飛び出す力とかダイナミックにプレーする力、(ボールを失ったときに)戻る力というのを出していく。全部が一度に良くなるわけではないので、一歩ずつ前に進んでいくことが大事です」(小林監督)

 守備を重視しながら戦うことは、後退ではなく前進であると小林監督は言う。失点しないことに意識を注ぎながら、そこにプラスaして攻撃の力を出していく。ここからは、そうした進化を見せられるかどうかが勝負になる。

「とりあえず守って、何とか今シーズンを逃れるという考え方では、(今年残留できても)来シーズンは落ちますよ。次のシーズンで通用する準備をしているという持っていき方をしなければ、難しいと思います」

 あくまで進歩を続けた結果として残留があるというのは、昇格請負人らしい考え方だ。

 そして、いよいよ瀬戸際となった試合では、「怖がらずにいかに積極的にやらせるか」が重要になる。

「責任は選手にはないんですよ。責任は指揮官である私にありますから、心配せずに言われたことを思い切ってやればいい、そうすれば答えは出るんだということを、際(きわ)の試合では話します。ここで勝ったら、ここで負けたらと考えると窮屈になるし、動かなくなる。そうじゃなくて、やれと言われたことをやれば良いんだという持っていき方が、今までの経験でも結果を生んでいるような気がします」

 客観的に戦力を見ても、清水というチームには残留する力はあると小林監督は言う。

「しっかり守っていけば、点は取れますから、そんなにバタつかなくても良いと思います」

 考えてみればシンプルなことだが、想像以上のプレッシャーがかかるピッチ上で現実に本来の力を出すのは難しい。だからこそ、選手たちを良い方向に導いてきた経験が豊富な指揮官の存在は、大きな力となるはずだ。

文=前島芳雄

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