2017.09.19

【ライターコラムfrom川崎】全ては車屋のために…清水戦でチームメートが行っていた「お膳立て」

川崎が敵地で快勝した [写真]=J.LEAGUE
川崎フロンターレの取材を中心に活動。将棋界にも精通。著書に「将棋でサッカーが面白くなる本」(朝日新聞出版)。「川崎フロンターレあるある1&2」、「将棋ファンあるある」(TOブックス)。「サッカー脳を育む」(中村憲剛/ぴあ)では企画&構成も担当。将棋はアマ三段(日本将棋連盟三段免状所有)。

 AFCチャンピオンズリーグ準々決勝第2戦、浦和レッズに悪夢ともいえる大逆転負けを喫してから中2日。

 IAIスタジアム日本平に乗り込んだ川崎フロンターレの選手たちは、序盤から清水エスパルスを圧倒。終わってみれば、3-0で完勝劇となった。

 この試合に向けて、チームメートがこぞって挙げたのがACL浦和戦で一発退場になった車屋紳太郎の名前だ。例えば、浦和戦の翌日、キャプテンの小林悠はこんなエピソードを明かしている。

「(試合翌日練習後の)シャワーで一緒になったんですけど、『すみませんでした』と言ってきた。『別にお前が謝ることではないじゃないよ』って言いました。ピッチでみんなで取り返していこうと思ってます」

 同じく、車屋に対して「愛のムチ」ともいえる宣言をしていたのが、同郷の先輩である谷口彰悟だ。「あいつのところで、どんどん仕掛けさせます。『お前いけるだろ?』というようなメッセージのパスをどんどん出します(笑)」と、左センターバックである彼は、左サイドで車屋を走らせる組み立てを宣言していたほどである。

 清水戦前半、3日前の浦和戦でボールを放棄して過ごした後半45分のサッカーを取り戻すかのように、川崎の選手たちはボールを握り倒すサッカーを展開。丁寧なビルドアップで清水守備陣を動かしていくと、14分にセットプレーで谷口のヘディングで先制。

 そして試合のハイライトは25分だ。中盤で組み立てを担っていた森谷賢太郎は、連携面に問題を抱えていた相手の右サイドエリアを狙っていたことを明かす。

「相手の19番の選手(ミッチェル・デューク)が、そこまでシンタロウ(車屋紳太郎)についていなかった。それだったら、ショウゴ(谷口彰悟)がダイレクトで出せば抜けられる。ショウゴはああいうパスを出せるし、ここはグラウンドもいいので」

 中央で受けようとした左サイドハーフの長谷川竜也に相手の右サイドバック村松大輔が食いついたことで空いたスペースを見逃さず、谷口が糸を引くようなスルーパスを供給。背後を取った車屋紳太郎への、まさに「お前、いけるだろ?」というメッセージのパスだった。

「立ち上がりから左サイドのところ。相手の右サイドの連携で、マークの受け渡しがうまくいってなくて、いけそうだなと思っていた。あのシーンもシンタロウがあの位置で対応していたので、間違いなくチャンスになると思っていた。あいつも裏をとる動きをしていて、自分もその逆を取れました」(谷口彰悟)

 車屋にパスを通したのが谷口なら、車屋のオーバーラップを引き出したのは長谷川だ。「タッツンニー」「シンツァンニー」とよくわからない呼び方でお互いを呼ぶ仲である両者だが、長谷川は「自分が中に入った時にシンタロウくんが絶対に上がってきてくれる。それがやりやすいという話は、今年からずっと話している」と明かす。自分が中央でボールを受けることで右サイドバック村松がついてくること、そして空いた場所に車屋が走り込んでいることを確信したひきつけ方だった。ミッチェル・デュークの背後にできたスペースに抜け出した車屋は、中央の小林悠に冷静にアシスト。

小林の追加点をアシストした [写真]=J.LEAGUE

 キックオフまでの間、いつもよりも少し手荒い祝福が車屋には送られていたが、この追加点の場面からは、チームメートがみな、車屋にお膳立てをさせるための「お膳立て」をしていたともいえるのかもしれない。

 試合後のミックスゾーン。多くの報道陣に囲まれていた車屋は、「まだまだ」、「もっともっと」という言葉を繰り返していた。

「まだまだだと思います。これからもっともっと結果にこだわってやらないといけないし、切り替えてやっていかないといけないと思います」

「まだまだサポーターも満足していないだろうし、もっともっとゴールにつながるプレーをやらないといけないと思います」

 チームに欠かせない左サイドバックは、シーズン終盤に向けて、さらにギアを上げてスパートをかけていく。

文=いしかわごう

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