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【ライターコラムfrom千葉】千葉の“バンディエラ”佐藤勇人、鍛練を重ね勝利のために体を張り続ける

2017.09.08

千葉のバンディエラ・佐藤勇人 [写真]=J.LEAGUE

 もう1つも落とせない――。

 J1昇格を目指すジェフユナイテッド市原・千葉にとって次節ザスパクサツ群馬戦は絶対に勝たなければいけない試合だ。プレーオフ圏内6位の東京ヴェルディとの勝ち点差は6。


 直接対決となった前節の試合では2-2のドローで終わり勝ち点差を詰めることは出来なかった。

 この試合で6試合ぶりにスタメン出場を果たした佐藤勇人は「(後半は)守備の部分を改善することが出来たし、1対1の勝負で負けないということを徹底することが出来たので流れが来た。ただ引き分けに終わってしまったことが悔しい」と振り返った。

 ただ、チームはここにきて勝ち切れない状況が続いている。試合内容で相手を上回るも中々、結果が伴わず直近4試合(2分け2敗)は勝ち星から遠ざかっている状況だ。J1昇格を懸けたプレーオフ争いも残り11試合を迎える中で昇格に向けて残された道は勝利のみとなる。

今季はここまで10試合に出場している [写真]=J.LEAGUE

「上に行くためにどう結果を残すかが大事。危機感を持ってやっているので結果につなげたい。チームが勝たなければ自分が出場する意味はないし、チームが勝つための1つのピースになれれば」と千葉のバンディエラである佐藤勇人は不退転の決意を口にする。

 今シーズン、フアン・エスナイデル監督の下で攻撃的なスタイルを前面に押し出し挑戦を続けている千葉。その中、佐藤勇人のポジションもダブルボランチの一角からアンカーへと変更した。スタメンの座は的確なゲームメイクに秀でる若手の熊谷アンドリューに譲ることも増えているが、35歳のベテランは熾烈なポジション競いに臨んでいる。

「自分がピッチに立てなくて負けた時は本当に悔しい。ただ、ピッチに立った選手に最大限のサポートをするだけ。そのために自分は存在しているし、そのために練習をしている」

 同じポジションにいいライバルがいることで競争はレベルアップにつながり、練習から全力勝負を続けているのだ。

 シーズン当初は「監督に教わりつつ、海外の試合を見る時間が自分の中で増えている。特に守備の仕方の部分で前から奪いに行く所は監督が理想としているのでやり切りたい」と日々の練習から貪欲に取り組んだ。またベンチにいる時間を無駄にはせず「(熊谷)アンドリューのプレーを見て勉強もしている。自分が出場したら、やることがはっきりしている分、すんなりと入れている」と、これまでとはひと味違う新境地に対し笑顔で話した。

 一方、アンカーのポジションを争う熊谷は感謝の言葉を口にする。

「自分も勇人さんのプレーを見て勉強をしている。ボールへの予測と反応の速さ、落ち着いてボールを受けて捌き安定感がある。そこを見習って意識した結果、自分も良くなった。(競争は)勇人さんがいるから自分が頑張れている感じはある。そこは勇人さんに感謝しなければいけない。そしていい試合、悪い試合に限らず、勇人さんが、一番最初に僕の所に来てくれて、ためになることを言ってくれる。いい先輩、レジェンドです(笑)」

佐藤勇人とポジションを争う熊谷アンドリュー [写真]=J.LEAGUE

 前節に引き続き、今節の群馬戦も熊谷が出場停止のため佐藤勇人のスタメン出場は濃厚だ。ここまでリーグ戦10試合に出場しているが、このポジションは、戦術的対峙が繰り広げられる場所でもある。佐藤勇人が中盤を広範囲に動きボールを奪い切ることで、自然とチームがボールを持つ時間が増える。その中で彼の背中からは、ピッチのど真ん中、勝敗を左右する中盤での重圧や厳しさを楽しみながらプレーをしている印象さえも残る。

「周りのスペースをカバーし、みんなに声をかけ守備を修正すること、チームが苦しい時に汗をかき、良い状態の選手にシンプルにパスをつないでテンポを作るのが自分の特長」と黒子に徹し堅実に、そして忠実に水を運ぶ。数々の修羅場をくぐり抜けてきた男はピッチ上で味方を鼓舞し“戦う空気感”を漂わせる術を持ち得ている。

「セカンドボールを拾う予測をかなり意識している。自分が出来ることをして、チームのプラスになることをやり続けたい」

 残り11試合。ここから先は如何に“ラストスパート”をかけられるかが大きなポイントになる。

「残り試合が限られている中で、自分たちのスタイルを貫き続けることが大事になる。勝ち点3を取りにいくことを目指すことは変わらない。何とか上位に食い込んで行きたい。群馬戦に向けしっかり準備をしたい」

 終盤戦に欠かせないものは“勢い”になる。この勢いを生み出していくためにも千葉のバンディエラは強い気持ちと覚悟を持ってチームをけん引して行く。

 錆びつくこのない戦術眼を研ぎ澄ませ、アウェイでの大一番に挑む7番。鍛練を重ねピッチに立ち、チームの勝利のために体を張り続ける。

文=石田達也

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