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「W杯の試合に出場したい」招集外が続くGK西川、決意に力を込める

2017.09.04

浦和レッズでプレーする西川周作 [写真]=Getty Images

 日本代表が歓喜に浸った3日前に比べ、埼玉スタジアム2002の雰囲気は少しもの寂しかった。3日のJリーグYBCルヴァンカップ、準々決勝第2戦。浦和レッズはセレッソ大阪と2-2で引き分け、アウェーゴール数の差で2連覇の望みを絶たれた。

 前半にセットプレーから2失点。ゴール左隅に決められた丸橋祐介のFKを「素晴らしいシュートだけど、それをGKが防がなければチームを助けられない」と悔いたのは西川周作だった。逆に追い上げた後半は最後尾から持ち味を発揮。50、52分、CKやクロスを捕っての素早いフィードで立て続けに決定機を導いた。「ピンチはチャンス、と考えながらプレーしている。みんなと意識を共有できた。守備で後追いになってしまう場面も減っているし、間違いなく、チームはいい方向に進んでいる」。監督交代から1カ月。静かな口調で努めて前向きに振り返った。


 ミックスゾーンで取材の輪がほどける。この人に3日前のことを聞きたくて、立ち去ろうとする背中にもう一度、声をかけた。

「オーストラリア戦ですよね。観客席から見ていました。仲間が取ってくれたワールドカップ出場権のおかげで、また一つ、目指すものが明確になった」。例の人懐っこい笑みが西川の顔に広がった。

 アジア最終予選の途中まで正GKだった。今年に入って調子を落とし、3月の2試合は先発を外れた。浦和の失点はかさみ、6月以降は招集もされていない。自分のいない代表が、好内容の勝利でロシアへの扉を開いた。素直に喜べるのか、複雑な思いを抱えているのか。

「いやいやもう、素直に喜びましたよ。代表に選ばれていない僕がやるべきは、チーム(浦和)でこつこつと結果を残すことだけだから。チームあっての代表なので」

 その代表、若いフィールドプレーヤーによるベテランの突き上げが激しい。31歳の西川が34歳の川島永嗣(メス)に定位置を奪い返されたGKの座を巡っても、22歳の中村航輔(柏レイソル)が進境著しい。「刺激は受けます。ハリルさん(ヴァイッド・ハリルホジッチ監督)は明確に、調子がいい選手、リーグで結果を出した選手を呼んで使う。だからチームで結果を残し続けることが代表への道になる。ただ……」

 もう一つの決意に、西川は力を込めた。

「(登録枠の)23人に入るというより、僕は、ワールドカップの試合に出るというところを目指したい」。2014年のブラジル。開幕直前の親善試合ザンビア代表戦で先発に指名され、3失点を喫した。本番の3試合270分間はベンチから見つめた。「やっぱりね、あのタッチラインの向こう側の世界は、ピッチに立った選手しか感じられない。選手である以上、あのピッチに立ちたいと、みんな、思っているはず。そういう(レベルの高い)競争をしていきたい」

 国を背負う喜びを怖い物知らずに表現できる若手が現れた。長く代表を支えてきた面々は、重圧と向き合いながら、遠くジッダの地で巻き返しを期す。そして日本で、かつての雪辱を胸に誓いつつ腕をぶす者がいる。彼らの発散する熱が高まるほどに、日本の可能性は広がる。

 話をオーストラリア戦に戻そう。快勝の後。観客席の西川と、スタッフとともにピッチに繰り出した浜野征哉・日本代表GKコーチの目が合った。普段から連絡を交わし、相談と激励をやり取りする仲。「手を振って喜びを分かちあえて、よかったです」

 集まっては散り散りに、を繰り返すのが代表の常であり儚さ。そんな組織ならではの細やかな人間模様を映す、いいエピソードだった。

文=中川文如

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