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【ライターコラムfrom柏】ついに本領発揮…「非常に良い状態」のハモン・ロペスが逆転優勝への鍵を握る

2017.09.02

3試合連続フル出場中のハモン・ロペス [写真]=JL/Getty Images for DAZN

 ハモン・ロペスが、ここにきて本領を発揮し始めている。

「加入か6カ月以上が経ちます。日頃から選手たちと生活をともにする中で、それぞれの特徴を十分理解しています。加入当時の課題だったフィジカル面もトレーニングを重ねるごとに良くなっている実感がありますので、結果を貪欲に求めていきたい」(ハモン・ロペス


 この彼自身の言葉によれば、フィジカルコンディションの向上とチームメイトの特徴把握がチームへのフィットを促進させ、現在の活躍へつなげたようだ。

 今季、柏の補強の目玉としてベガルタ仙台から鳴り物入りで移籍を果たしたハモン・ロペス。クリスティアーノ、ディエゴ・オリヴェイラと形成するブラジル人トライアングルの破壊力には大きく期待が膨らんだが、開幕戦での負傷によって戦線離脱を余儀なくされ、復帰後も思うようにコンディションが上がっていかず、5月から6月にかけては出場のチャンスを与えられても爪痕を残せない。普段の練習後も彼の表情は重かった。

得点量産が期待されるも、結果を残せず [写真]=JL/Getty Images for DAZN

 一時は復調の兆しが見られなかった。さらにキム・ボギョンの加入によって序列が下がり、気持ちが折れてしまわないかという懸念もあった。

 だがそんな心配をよそに、彼は突如として復調を果たす。前述のコメントにもあったコンディションの向上、チームメイトの特徴把握、戦術面へのフィットがあったのは確かだが、ハモン・ロペスがチームメイトとの距離を縮めた出来事があったことはあまり語られていない。

 その出来事とはこうである。7月8日のセレッソ大阪戦から12日の天皇杯3回戦大分トリニータ戦と、遠方アウェイの連戦となった柏は、大阪から直接大分へ入った。その遠征先のホテルで、ブラジル人選手たちがマリオカートに興じていると、そこへ大津祐樹が加わってきた。

「ハモンが、めちゃめちゃマリオカートが下手だったんです。俺も下手だったので、『2人で頑張ろうぜ!』と言っていたんです(笑)」(大津)

 仙台時代からのチームメイトである鎌田次郎は「ハモンは良い奴だけどシャイなんです」と柏加入当初から常々話していた。シャイな性格で、なおかつ外国籍選手ならば、日本人選手とは気軽にコミュニケーションを取りづらかったのかもしれない。しかしそこへ、誰にでも明るく接する人懐っこい大津が気さくに接していたことで、ほかの日本人選手たちもハモン・ロペスをいじるようになった。チーム内でハモン・ロペスが日本人選手と談笑する機会が格段に増えていった。

 こうしたコミュニケーションの増加が、コンディションの向上と相まって、一気に状態が改善されたと見るべきだろう。距離が縮まり、ピッチ外では冗談を言い合い、それがピッチ内の関係にも好影響をもたらす。実際に現在のハモン・ロペスの好調について、大津は「その遠征のことが影響していると思いますよ」と話している。

チームにも徐々にフィットしてきている [写真]=JL/Getty Images for DAZN

「守備も頑張ってくれているし、高さがあるのでセットプレーの守備では跳ね返してくれる。本人もスタートはケガもあって苦しんでいた中で、最近は試合に絡んでいるというので表情も明るいし、(ユン)ソギョンともコミュニケーションを取りながらチームのためにやってくれている。ゴールがなくてもすごく献身的にチームのために頑張ってくれているので、頼もしい」

 キャプテンの大谷秀和は、最近3試合のハモン・ロペスのプレーをそう評した。大谷の言うとおりリーグ戦ではまだ得点こそ決めていないものの、第22節の清水エスパルス戦から3試合連続スタメンフル出場を果たし、彼らしい瞬間的な速さとテクニック、そして身体の強さを駆使して攻撃の起点を作るとともに、同じくケガで前半戦を棒に振った左SBのユン・ソギョンとの連携によって左サイドの攻撃を活性化させている。リーグ戦6戦無敗と好調をキープする柏の中で、ハモン・ロペスが示す存在感は大きい。

「これから終盤戦を迎えるにあたり、我々がどの順位で終えられるか。そこへ向けてチームは前を向いて進まなければいけない。我々はチャンピオンを目指していますし、今は非常に良い状態にあります」(ハモン・ロペス

――非常に良い状態にある。

 前半戦の彼からは到底想像もできなかった言葉だ。それを今は憚ることなく口にできるほど自信も回復している。試合で見せるゴール前でのダイナミックなプレーも蘇った。おそらく得点は時間の問題だろう。

 前半戦に活躍できなかったハモン・ロペスの存在は、見方によればリーグ終盤戦へ向けた戦力的な上積みである。この背番号20が額面通りの活躍を見せられれば、鹿島と開いた勝ち点6の差を跳ね返すことは決して不可能なミッションではない。

文=鈴木潤

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