2017.09.01

【ライターコラムfrom名古屋】6つのポジションで起用される和泉竜司…大学No.1アタッカーから万能型への挑戦

驚くべきポリバレントぶりを発揮してチームを攻守両面で支える和泉竜司 [写真]=J.LEAGUE PHOTOS
雑誌社「ぴあ」勤務を経て2015年にフリーランスライターとなり、WEBメディア「赤鯱新報」を中心に名古屋グランパスを追いかける毎日。

「どこで出るんですかね?わかりません(笑)」

 こう言って困ったような笑顔を浮かべるのは、和泉竜司だ。2年前の大学ナンバーワンアタッカーは、プロ2年目の今季はその役割をまったく違うものとしている。左サイドバックに始まり、左ウイングバック、ボランチ、インサイドハーフ、ウイング、果ては3バックのストッパーまで。大学サッカー関係者が見れば「あの和泉が!?」と驚くであろうポリバレントぶりで、チームを攻守両面で支える一人となっているのだ。攻撃に専念させればより多くの得点を決めていたかもしれない選手だけに、少しもったいない気もするが、風間八宏監督が彼をそうやって起用するのはもちろん理由がある。

 和泉はとにかくボールを奪われないのである。さらに言えば、奪われたりパスミスをしたとしても、次の瞬間にはボールにアタックをかける切り替えの速さが群を抜いている。ポゼッション率の高いスタイルを構築してきた今季、対戦相手のほとんどが、そのパスワークを引っ掛けてのカウンターを戦術の一つに組み込んできた。だが、どれだけプレスの圧をかけても、和泉のところでは奪えない。ミスを誘ってもすぐに奪い返され、大概のプレスはドリブルで“はがされて”しまう。ボールを保持して攻め上がりたいチームにとってこれほど頼りになる選手はおらず、その需要はサイドから徐々に中央へと移っていき、そこからはユーティリティな使われ方をするようになったというのが前述の多彩な起用につながっていったというわけ。今節では出場停止の田口泰士に代わってボランチでの起用が予想されるが、「どこで出るにしても準備するだけです」ともはや構える素振りも見せない。彼にとってはそれはもう、日常茶飯事だからだ。

試合中に複数のポジションを選手交代のたびに変えていくのももはや恒例行事。本人も「どこで出るにしても準備するだけ」と平然としている [写真]=今井雄一朗

 しかし、ながら彼のおかげでチームは多彩なオプションを手にしている。ピッチ内に和泉がいれば試合中の布陣修正も容易な上に、選手交代もより攻撃的に行なうことができるからだ。例えば28節のFC町田ゼルビア戦では3バックの一角に入ったワシントンのエリアがうまく機能せずに劣勢に陥ったところで、ボランチにいた和泉とポジションを変更。すると和泉は得意の“はがす”ドリブルでビルドアップを優勢に傾け、ワシントンは本来のポジションでボール奪取能力を存分に発揮。結果的に和泉はそのまま3バックとして80分余りをプレーし、4-3の逆転勝利に貢献している。試合中に複数のポジションを選手交代のたびに変えていくのももはや恒例行事。本来の得点能力が見られないのは寂しいが、これもまた彼の持つ稀有な能力であることも間違いない。

 今節への準備の中では和泉が右ワイドに入り、ボランチを小林裕紀八反田康平に任せ、左ウイングに好調の青木亮太をスライドさせる超攻撃的布陣も試されていた。どこでも準スペシャリスト級の働きを見せられる和泉がいるからこそ、他のスペシャリストが生きる形を模索できる。そして和泉もまた、その枠に捉われない自由奔放な動きでチームを活性化している。DFラインにいようと前線にいようと、和泉のプレーは常に攻撃的なところで一致している。「ポジションは関係ない」と語る風間監督のコンセプトを最も体現するのは、背番号29であることに疑いの余地はない。だからこそ、彼は試合で使われる。負傷離脱していた時期があるにも関わらず、宮原和也楢崎正剛に次ぐチーム3位のプレータイムを誇っている事実はダテではない。

「どこでやってもやることは変わりません。相手コートで試合をして、守備も前から仕掛けていく。なるべく相手陣でサッカーをすることで、僕らの勝利は近づいてくる」。進化を続け、加速を続けるチームをポリバレントに支え、循環させる。「そろそろゴールが欲しいんですけどね」と本音ものぞかせる24歳は、水戸ホーリーホック戦ではどのような役割を与えられるのか、注目だ。

写真・文=今井雄一朗

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