2017.07.18

笑顔の引退試合で感じた“空気”とは…鈴木啓太「こんなに幸せなことはない」

鈴木啓太
引退試合後にファン・サポーターに挨拶する鈴木啓太 [写真]=兼子愼一郎
サッカー総合情報サイト

「懐かしさも感じましたし、こんな時間が長く続けばいいなと思いながらも、それでも次に進まなければいけない。ただ、本当に素晴らしい雰囲気の中でサッカーをさせてもらった喜び、こんな幸せな気持ちになることはないと思います。選手である時が一番、ということを現役時代に元選手だった方々から聞いていましたけど、まさしくそのとおりだなと感じるので、今の選手たちにはそういったことを強く伝えたい」

 “赤い同窓会”と銘打って企画された鈴木啓太の引退試合。その名のとおり、浦和レッズでともにタイトル獲得を経験したワシントン、ロブソン・ポンテ、マリッチら外国籍選手を始め、オシム・ジャパン時代にともに日の丸を背負ったかつての仲間たちが集まった。

 前半はBLUE FRIENDSの一員として、後半はREDS LEGENDSとして、慣れ親しんだボランチでプレー。特に前半は、前線に上がって何度もゴールを狙った。19分には左CKからのボールを大きく振り抜き、ゴールを遥かに超えてしまう、いわゆる“宇宙開発”を披露し、スタンドからは笑いと大きな拍手が送られた。鈴木も笑顔で両手を挙げ、サポーターの声援に応えた。

 この日、放ったシュート数は10本。当然ながら、両チーム合わせて最多本数だ。それでも、16分に相手DFをかわして右足で先制点を挙げると、43分には中村俊輔からのパスに抜け出し、左足で2点目を決めた。「僕自身、点を取らせてくれるために多くの忖度(ソンタク)があったように感じましたけど(笑)。個人的に(現役時代に)1試合で2ゴールを取ることはなかったので、非常にうれしいですね」と笑顔を見せた。

「16年間の生活の中で、すべてがいい思い出」と振り返った鈴木。18歳でプロ入りしてから、16年。浦和のJ2時代も、ナビスコカップ優勝時も、J1リーグを制覇した時も、天皇杯戴冠時も、そして2007年にアジア王者に輝いた時も、たくさんの仲間たちと苦楽をともにし、浦和レッズと一緒に歩んできた。

「同じピッチで選手たちとサッカーをしている瞬間に、僕の中で、ふと時間が止まった瞬間があったんです。空気と言うんですかね? このスタジアムでグラウンドに立って、真っ赤に染まっているスタンドを見た時に、自分の居場所だったんだなあと。いつも見ていた光景だったものがとても懐かしいものに変わっていた時に、とても不思議な感じがしましたし、その空気というのが、僕の中での昔を思い出すことだったのかなと」。

「浦和の男で始まり、浦和の男で終わります」と涙ながらに語り、現役生活に別れを告げたあの日から約1年半。鈴木は自身の引退試合で2ゴールを挙げて、有終の美を飾った。

「本当に終わりなんだなって。もう1年半経っているんですけど、それでもやはり一つの区切りというところで……。でも、あのスパイクを皆さんの前で脱がせていただくということに感謝したい。さみしさもありましたけど、逆に言えば、それが次への始まりなので、これからはそれ(スパイク)を革靴に変えて頑張りたい」

 2つのチームで時折、笑顔を見せながら90分間走り切ったあと、鈴木はグラウンド内に設置されたステージに上がった。ゆっくりと紐をほどき、スパイクを脱ぐと、静かにそれを置いた。「サッカー選手としてこんなに幸せなことはないと感じながら、今日の引退試合を自分の胸にしまって、これを活力にして、次のステージに進みたい」。

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