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【ライターコラムfrom福岡】中原貴之が411日ぶりに立ったピッチ…大ケガを乗り越え再び昇格の“立役者”へ

2017.06.28

ファンは中原の復活に期待を寄せる [写真]=J.LEAGUE PHOTOS

 411日ぶりの公式戦だった。

「試合を楽しみたいという、思いが強かった」


 FW中原貴之。ベガルタ仙台から2015年にアビスパ福岡へ移籍し、そのシーズンは第3節にスターティングメンバー入りすると、ロングボールからシンプルに攻撃を組み立てる福岡のスタイルにおいて、ターゲットマンとして欠かせない存在になった。中原が先発するようになり、第4節から11戦無敗と勢いに乗った福岡は、最下位から5位へと浮上した。この年、福岡はJ1復帰を果たすが、間違いなく中原は、その立役者だった。

2015年は大きな得点源として昇格の立役者に [写真]=J.LEAGUE PHOTOS

 しかし翌年の2016年5月。トレーニング中に左ひざ前十字靭帯を損傷し、6月に手術を受けて以降、長期離脱を強いられた。中原にとって、J1という舞台で再挑戦するはずのシーズンだった。

「リハビリが6カ月間。正直、自分のパフォーマンスが以前、どうだったのかさえ思い出せなかった。ただ(復帰後は)試合に出られるという嬉しい気持ち、新鮮な気持ちで取り組めている」

 2016年5月8日ぶりの公式戦。今月21日に行われた天皇杯2回戦で、411日ぶりのピッチに立ったのだ。

 宮崎県代表の宮崎産業経営大学との一戦。開始3分で三島勇太の先制弾。25分には城後寿、56分には石津大介とゴールを重ねて福岡が3点リードしたものの、76分に1点を返され、流れは相手に傾いている時間帯だった。中原が出場したのは85分。「5分しかなかったけど、流れが悪かったので、落ち着かせられるように」と考えていた。

 しかし追加点を奪われ、3-2となった。そして試合はアディショナルタイムへ。そこで、好機が訪れた。左からのクロスに合わせて動き直した中原が、一瞬だけ相手DFのマークを外し、クロスボールの角度を変えて、ボールをゴールへと流し込んだ。

「ゼロで終わらせることが大事だったと思うけど、とにかく試合を楽しみたいと思ってピッチに立ち、得点できたことは嬉しい」

 そう話す中原は、1年前に比べて、上半身が一回り大きくなった印象だった。手術をし、歩くことさえままならない状態から、走り出し、ボールを蹴って、411日ぶりにピッチに立つまで……。苦しみ抜いた跡が、その身体の鎧となって表れたかのようだった。

 25日の明治安田生命J2リーグ第20節愛媛FC戦に、中原の姿はなかった。しかし今年も、昇格の“立役者”となることを、たくさんのファンが待ち望んでいる。

文=新甫條利子

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