2017.06.21

【ライターコラムfrom浦和】“泥臭さ”と“粘り強さ”を失った浦和…苦境脱出のきっかけを掴めるか

浦和レッズ
磐田に敗れ、肩を落とす浦和の選手 [写真]=JL/Getty Images for DAZN
東京都出身。大学卒業後、フリーランスとして活動を開始。現在は主に浦和レッズ、日本代表を定期的に取材しており、翻訳も手がける。

 昨シーズン、自分たちの強さを支えていたものが今年は見えなくなっている。浦和レッズは2016年シーズンにクラブ史上最少、リーグ史上でも3番目に少ない総失点28という数字を残し、年間勝ち点1位という結果を出した。ところが、今シーズンは1年前に手応えを得たはずの粘り強い守備がきれいに消えてしまっている。

 ここまでのリーグ14試合ですでに20失点。このままのペースだと年間で48、9失点となり、昨年の倍近い数字になる。14試合中12試合で失点しており、昨年は14試合で7試合だったことを考えると、こちらも倍近い数字となっている。

 失点増加の原因として挙げられるのは、今年になってさらに挑戦的な選択を指揮官がしたことだ。ミハイロ・ペトロヴィッチ監督はシーズン前のキャンプで「相手の陣地で試合を進める」という指針を選手に示した。それは敵陣で攻撃を仕掛け、敵陣でボールを奪うということであり、そのためにディフェンスラインを高く設定し、高い位置から積極的にプレッシングをかけるので、リスクが大きくなる守備のやり方だ。

 もっとも、このアグレッシブなスタイルは現在、そこまで徹底されていない。シーズン開始からリーグでもAFCチャンピオンズリーグでもカウンターからあっさりと失点したり、ピンチを招いたりすることが続いたため、守備陣が話し合い、バランスを考えて守備をすることで意思統一を図ったからだ。実際、3月末の時点で遠藤航は「リスクを負ってやっていくという話はしたけど、いい時はバランスが良い時。今は去年のやり方に立ち返りながらやっている」と話していた。

遠藤航

磐田戦に出場した遠藤航 [写真]=Getty Images

 ただ、チームは生き物である。プログラムのように入力を元に戻せば、同じ出力になるというわけにはいかない。それまで当たり前のように持っていた感覚、連動、勘は何かを変えたことで微妙にズレていく。一度狂った歯車を戻すのは言うほど簡単なことではない。

 守備の意識を去年のバージョンに戻しても、あっさりとカウンターから失点するところ、不用意なミスから失点するところはあまり治っていない。去年は大きく減らすことに成功した「安い失点」が今年になって復活してしまっている。

 さらに、非常に気になるのは、守備の選手たちが感じているチーム全体の雰囲気だ。18日のジュビロ磐田戦で4失点した後、森脇良太は「今日もボールに行くにしても強く行けない。それは浦和のスタイルじゃないなと。去年までだったら厳しく行けたところでも、今は言葉は重たいかもしれないですけど、少し諦めてしまっている」と表情を曇らせていた。

森脇良太

森脇(右)は磐田戦でも粘り強さが欠けていたと反省した [写真]=JL/Getty Images for DAZN

 奇しくも遠藤も似たようなことを感じていて、同じく磐田戦後に「一つのプレーというより戦う中で、攻撃の中での動きの量がなくなったり、ボールを失った後の切り替えが遅くなったり、相手にボールを持たせる時間が長くなったり。アタッキングエリアでボールを持たれたのに誰もプレッシャーに行かないとか」と話した。つまり、2人とも泥臭いプレー、粘り強いプレーというものがなくなってしまっていると感じているのだ。

 そう言えば、“泥臭く”や“粘り強く”というワードは昨年、様々な選手から頻繁に聞こえてきた。それが自分たちの強みだと誰もが認識していた。しかし、今年はそれがなくなっていると選手自身が感じている。

 浦和は今、危うい状況にある。日本代表活動によるリーグ中断でコンディション、戦術を調整する時間は十分あったにもかかわらず、泥臭く、粘り強く戦えていなかったのだ。このまま負のスパイラルに飲み込まれてしまう可能性もある。

 槙野智章は「もしかしたら今はメンバーに入っていない選手の台頭だったり」と控え組が起爆剤になるかもしれないと話した。それが正解なのか、それはやってみないとわからない。だが、このまま手をこまねいていては、嫌な流れをズルズルと引きずりかねない。苦境を脱するためには、何かきっかけが必要だ。

文=神谷正明

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