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【ライターコラムfrom横浜FM】神奈川ダービー完勝の横浜FM…中町公祐の“割り切り”が勝利をもたらす

2017.06.07

中町の経験が横浜FMに勝利をもたらす要因となった [写真]=Getty Images for DAZN

 川崎フロンターレと対戦した“神奈川ダービー”でのこと。1-0でリードして迎えた後半途中以降、中町公祐はある苦い残像を振り払うために思考をめぐらせていた。

 4日前、横浜F・マリノスは2017JリーグYBCルヴァンカップ グループステージ最終節を戦った。このサンフレッチェ広島戦を引き分け以上の結果で終えればプレーオフ進出を自力で決められる有利な状況だった。前半に先制を許したが、61分に仲川輝人のゴールで同点に追いつく。しかし86分に痛恨の失点を食らい1-2で敗戦。後半途中にベンチに下がっていた中町は、掴みかけたプレーオフ進出が手からすり抜けていくシーンを、ピッチの外から茫然と見つめていた。


ルヴァン杯では苦杯をなめた [写真]=J.LEAGUE PHOTOS

 翻って川崎戦のピッチには中町がいた。「試合の終わらせ方と危険なところで味方をどう動かすかを意識していた」と話す経験豊富なベテランは試合の機微を知っている。実は「残り25分くらいから足がつって大変だった」と試合後に明かしたが、ピッチでの立ち居振る舞いに違和感は全くない。周囲をうまく使いながら、自分は要所で危険なエリアを封鎖する。チームが勝つために得意の攻撃参加を控え、フォア・ザ・チームに徹して勝利を手にした。

 中町自身の今季は決して順風満帆ではなかった。開幕戦では出場機会が訪れず、先発機会が巡ってきてから2試合目の第5節セレッソ大阪戦で負傷。ようやく復帰したのが前述のルヴァン杯の広島戦であり、川崎戦は9試合ぶりのリーグ戦出場だった。その間は一進一退を繰り返すチームをピッチ外から眺めることしかできず、プレーヤーとして当事者になれなかった。一度失ったリズムを取り戻せず、踏ん張りきれないチームを見て、歯がゆさばかりが募った。だから「今までうまくいかなくなった時に、ピッチの中で対応できていなくて、監督が求めるものだけに固執してしまっていた。それは弱いチームの典型」とあえて辛口のジャッジを投げかける。

神奈川ダービーの勝利を喜び合う [写真]=Getty Images for DAZN

 もちろん自身が出場し、勝つためのプレーを体現しなければ説得力に欠ける。この日の中町は特に守備面で力を発揮し、全体をオーガナイズするという重要な役割を果たした。持ち前のサッカーIQの高さを存分に見せつけた。

 川崎フロンターレにボールを持たれる時間が長くても「圧迫感や威圧感はあまり感じていなかった」と涼しい表情で言う。そして「相手にボールを持たせてゲームをコントロールするという戦い方もある」とニヤリ。勝つために何をすべきか。この日で言えば、まず守ることだった。チームとして守りに軸足を置くという“割り切り”は、攻撃力も魅力の中町が守備に注力することで全体に浸透していった。

文=藤井雅彦

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