2017.06.02

【ライターコラムfrom京都】J2屈指の高さを誇るベルギー人FWオリスの数字に表れない貢献度とは?

ベルギー人FWのオリスはKリーグや中国リーグを渡り歩き今季京都に加入した [写真]=J.LEAGUE PHOTOS
京都サンガF.C.を中心に取材するサッカーライター

 4月上旬に21位まで順位を落とした京都サンガF.C.はキック&ラッシュへの戦術変更により不安定な時期を切り抜けた。細かいパスをつなぐポゼッションスタイルから一転、前線へロングボールを供給するシンプルな攻撃へ。その中で持ち味を発揮しているのがケヴィン・オリスだ。

 192センチという長身とフィジカルコンタクトの強さを生かした空中戦の強さはJ2屈指。田中マルクス闘莉王と形成する2トップは対戦相手の脅威となっている。また、シュートも強烈だ。J2第15節の東京ヴェルディ戦、1-1で迎えた後半35分に相手選手を一人かわして右足を振りぬいたミドルシュートは地を這うような軌道を描いてゴール左隅に突き刺さった。スタジアムで、あるいはTVやモニターの前で驚嘆の声をあげた人も多かったのではないだろうか。

 ベルギーのクラブの育成機関で育ち、看護師の資格も持つ長身FWは昨年までKリーグクラシック(韓国1部)の仁川ユナイテッドでプレーしていた。近年は下位が定位置で財政面も豊かではないクラブはオリスやマテイ・ヨニッチ(セレッソ大阪)といった選手をつなぎ止めることが難しい状況にあり、オリス自身も限られたサッカー人生において新たなチャレンジを模索していた中、京都から届いたオファーを快諾する。

192センチの長身とフィジカルコンタクトの強さを生かした空中戦の強さはJ2屈指 [写真]=J.LEAGUE PHOTOS

 ロレンツォ・スターレンス(2001年・大分トリニータ)に次ぐJリーグ史上2人目のベルギー人プレーヤーとして来日して4ヵ月半が経過したが「全てがアメイジングだよ。ここにはサッカーに集中できる環境があり、多くの人が自分や家族を支えてくれている」とピッチ内外において充実感を覚えている様子だ。

 仁川のイ・ギヒョン監督は「昨季はチーム事情もあって、彼の力を生かしきれたとは言えない。優れた選手がいるであろうJリーグのチームなら、本来の実力が発揮できるのではないか」と話していた。ここまで10試合3得点(第16節終了時)とまずまずの結果だが、数字には表れない貢献度がある。それは闘莉王との関係性だ。2トップの役割分担は状況によって変化するが、後方から送り込まれるロングボールを相手DFと競り合うことが多いのはオリスだ。最前線もしくは少し下がった位置で彼が身体をはることにより、闘莉王はゴール前でパワーを発揮することができる。逆にオリスが欠場した試合の闘莉王はターゲット役をこなす一方、決定機に絡む機会が減っていた。チーム戦術だけでなく”FW闘莉王”の得点力を生かす上でも、欠かせない存在となっているのだ。

 第12節カマタマーレ讃岐戦では言葉の問題で誤解が生じてしまい、プロ生活で初めてレッドカードを提示されてしまうが、チームスタッフや関係者は「彼はレフリーを侮辱するような人間ではない」と口を揃える。オリス自身も結果的にチームに迷惑を掛けたという自責の念から、眠れない夜を過ごしたという。それだけに3試合ぶりの出場となった前述の東京V戦での活躍は目を見張るものがあった。豪快なプレーに目がいきがちだが、常々「自分の得点よりもチームの勝利が重要なんだ」ということを口にしている。激しい空中戦を繰り返した試合後は顔に傷やあざがあることも珍しくない。ある時、「髪の毛を剃れば(頭には)もっとたくさんの傷があるよ」と笑いながら話していた。そして「でも、いいんだ。それが自分の役割だし、チームの勝利につながればね」と続けている。前線を支える男は、利他の精神を持ち合わせたナイスガイでもあるのだ。

文=雨堤俊祐

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