小手川(左)、岸田(中)、國分(右)など、全選手中、大分アカデミー出身の選手は10選手を占める [写真]=J.LEAGUE PHOTOS
トップチームを統括する強化部が、新たに育成年代まで組み込んだ『強化育成部』が組織され7年目。クラブはより安定的に選手を育て、移籍だけに頼らないチーム作りへの道、すなわち『育成型クラブ』への転換を再構築した。それまでも日本代表に名を連ねた西川周作(浦和レッズ)や清武弘嗣(セレッソ大阪)のほか、大分トリニータアカデミー出身のJリーガーは数多い。
今季の大分は、アカデミー育ちのMF小手川宏基をギラヴァンツ北九州から、DF岸田翔平をV・ファーレン長崎から呼び戻し、4年前にトップ昇格できず大学を経由したMF國分伸太郎を獲得した。U—18からはMF野上拓哉ひとりがトップチームに昇格となったが、チーム全30選手中、アカデミー出身者が10選手を占めるまでになった。
そして今回、新たな試みとしてアカデミーをサポートすることを目的とした『しらしんけんクラブ』を設立した。しらしんけんとは、大分の方言で一生懸命という意味だ。しらしんけんクラブと名付けられたその組織は、広く協賛金を募って育成の活動をサポートしてもらおうというもので、年間200万円を目標に募金を募り、クラブ運営費とは完全に切り離し、アカデミー活動の支援のみに使用する。
神川基アカデミーダイレクターは「魅力あるアカデミー組織を構築し、アカデミーで育った選手が第二の西川、清武のように将来トップチームや日本代表として世界で戦える選手を輩出することを目標にしている」と話す。
大分が日々の練習を行っている大分スポーツ公園のグラウンド。トップチームの選手たちが使う天然芝のグラウンドの隣に人工芝のグラウンドがある。ここで今、大分の未来を担う、さらに若い芽たちが育ちつつある。育成組織、つまりユースチームの選手たちだ。
神川アカデミーダイレクターは、大分の育成組織についてこう語る。
「人工芝を定期的に使えているのはU—18の選手ぐらい。その下の世代の練習環境はまだまだ整っていない。育成の強化は、すぐに結果が出るものではなく、時間がかかるもの。長い目で見て、子どもたちに接する必要を感じている」
大分のアカデミーは、ユース(U—18)、ジュニアユース(U—15)、ジュニア(U—12)、レディース、スクールのチームからなっている。
「すべてに共通する一番大きな目標は、世界に通用する選手に育てること。そして、その下のトップチームにつながる選手に育てるということがあるが、すべての選手がプロに進めるわけではない。自立したひとりの人間として認められるよう育成のコーチ全員で育てていくつもり」(神川アカデミーダイレクター)
短期間でおおきな結果を出すことは難しいが、クラブがしっかりと方針を掲げたことで良い方向に動き出していることは間違いない。ソフト面、ハード面の両面での充実を図り、今後も泊まることなく面白い試みを続けていくだろう。
文=柚野真也
By 柚野真也