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横浜FMとパートナー企業が創り出す価値、スポンサーシップの活用とは!?

2017.05.26

 横浜F・マリノスは4月30日、日産スタジアムで行われた明治安田生命J1リーグ第12節ガンバ大阪戦のキックオフを前に、スポンサー企業向けに「スポンサーシップの活用とは。~横浜F・マリノスとパートナー企業で創り出す価値~」をテーマにしたセミナーを開催した。

 このセミナーの開催は昨年に続き、今年で2回目。「City Football Group Day」として行われた同試合のイベントの一環として開催されたもので、企業同士がノウハウ・知見を共有することで、スポンサーシップをより有効に活用することを目的に、シティ・フットボール・グループ(以下CFG)の日本法人であるシティ・フットボール・ジャパン株式会社と共同で開催。今回は西鉄旅行株式会社、株式会社協和医療器、ジヤトコ株式会社の3社が登壇し、スポンサーシップに対する考え方や戦略など、各社の具体的な活用例が発表された。


 各社の事例発表に先立ち、本年1月に代表取締役社長に就任した横浜マリノス株式会社の古川宏一郎氏が登壇。「横浜F・マリノスはJリーグクラブで唯一、海外のビッククラブと資本提携し、外国籍選手の獲得、ユース選手やコーチの交流などフットボール面での提携効果を取り上げていただける機会は多いが、この提携によってマンチェスター(イギリス)、ニューヨーク(アメリカ)、メルボルン(オーストラリア)、横浜(日本)とそれぞれの地域での施策や新しいアイデアをクラブ間で相互活用できる。すなわち、4つの都市でテストマーケティングをやっているようなもので、事業面での提携効果も感じている」とCFGとの資本提携の現状を説明した。

 その上で、「スポーツマーケティングという面では欧米と比べても日本は可能性を追求し切れていないと指摘され、私自身も感じている」と言及。今後のクラブの目指すべき方向性として、「クラブの広告枠を購入するというスポンサーシップの考え方から、クラブの持つ資産をいかに活用するか」へのシフトチェンジの重要性を挙げ、「クラブの持つ資産とスポンサー様の持つ資産の掛け算でリターンを最大化する、という考えのもと、クラブとパートナー企業でともに価値を創り出していくという活動を、これからどんどん進めていきたい」と決意を語った。

上:横浜マリノス株式会社の代表取締役社長、古川宏一郎氏 下:CFGの日本法人代表、利重孝夫氏

 次に、横浜F・マリノスと資本提携を結ぶCFGの日本法人代表、利重孝夫氏から「2011年にスポーツ基本法が制定され、2015年にはスポーツ庁が設立。そして、昨年6月にはスポーツ未来開拓会議の中間発表が行われた。今までの教育的視点からのスポーツ振興ではなく、プロフィットセンターとして転換させていくことで、2025年には現在の3倍の15兆円というスポーツGDPを実現させるべく、さまざまなビジョンが打ち出されている」とマクロ的観点から日本のスポーツ産業全体の動向について説明。

 その上で、「スポーツが持つ、人々を熱狂させ、集う場を創り出す特徴を、如何にして信用やブランドといった経済的な力に進化させていくか?」とスポーツマーケティングビジネス拡大の重要性を説き、グローバルに先進的な事業展開をしているCFGとの提携を活用し、横浜F・マリノスが日本におけるリーダー的な役割を担っていくと語った。

西鉄旅行株式会社 社長室課長の松本健一郎氏

 横浜F・マリノスとCFGとの取り組みの背景を受けて、スポンサーシップの戦略的活用と成果について3社が登壇。最初に、西鉄旅行株式会社 社長室課長の松本健一郎氏が「スポーツツーリズムの拡大~横浜F・マリノスとの取組を例に~」について講演を行った。

 西鉄旅行は、昭和27年にフィンランドで開催されたヘルシンキ・オリンピックへの日本選手団の派遣を機に設立。現在は福岡に本社を置き、東京、大阪、名古屋、福岡を拠点に日本全国に展開している有数の旅行代理店だが、「売っているものが同じなので差別化をしていかないと生き残りが厳しい」と松本氏は語る。そのために「アプローチの仕方によってお客様にどのように見えるか。そこに主眼を置いて今はやらせてもらっている。従来はお客様から依頼を受けたり、売りたいものを売っていたが、今はスポーツに特化して新しい仕事を生んでいくことに中心点を置いて、B to Cにおいて新しいものをいかに作っていくかに主眼を置いている」という。

 そんな中で横浜F・マリノスとの取り組みとして挙げたのが、スポーツツアーだ。もともと西鉄旅行では約20年前からスポーツツアーを行ってきたが、かつてはゴール裏にいるサポーターをターゲットにした商品を販売していたという。しかし、それだけでは他社との競争に勝ち抜くことが難しかった。そこでマーケティングの仕方を変更。あえてゴール裏ではないファン・サポーターにターゲットを変えることで、お客様を“送る(送客)”のではなく、“つくる(創客)”へと方向転換した。

横浜F・マリノスのサポーターツアーにおいて、アウェイツアーでは専用の缶バッチを作ったり、車内でクイズ大会を行ったり、スタジアムで試合前のピッチに入れていただいたり、サッカーを知らない方にもサッカーを知っていただこうという取り組みをクラブと一緒に行っています。もちろんクイズ大会での賞品には選手のサイン入りグッズを提供していただいたり、スポンサードさせていただいていることを使わせていただきながら、新しいお客様をいかにして作っていくか。そこに力を入れています」

 効果は目に見えて現れている。取り組みを始めた2015年度には年間約300人だったツアー参加者が、昨年度には約3倍の1,000人に増加。その中でサッカーを見たことがない参加者は約40%だったという。アウェイの観戦ツアーから入ってきた人が意外にも多かったことに驚きを隠せなかったようだが、「F・マリノスさんと一緒に作っていくスポーツの新しい形にしていければと思っています。少しでも長くこの取り組みが続いていけたら、そしてF・マリノスが中心となってJリーグのクラブ全体にこういった動きができていけば、そこで得たお客様にまた新しい商品をしっかりと宣伝していく機会ができてきます。そういったところまで見据えながら、観光業の立場からスポーツの世界をしっかりと支えていきたい」と、松本氏は西鉄旅行が見据える今後の展開を語った。

株式会社協和医療器 専務取締役の小野寺俊弥氏

 続いて登壇したのは、青森県に本社置き、今年で創業30周年を迎える医療機器販売の株式会社協和医療器 専務取締役の小野寺俊弥氏。長年、青森で医療現場を支えてきたが、青森からの新たな展開を求めて、2013年に東京支社を開設。治療のサポートだけでなく、予防にも目を向けた健康を支える企業を目指している。そんな協和医療器の小野寺氏は「アジアパートナーへの挑戦」について語った。

「アジアパートナー制度というのは、F・マリノスさんが考案した独自のビジネススキームです。これは単なるスポンサーシップではありません。F・マリノスさんを通じて海外のチームとスポンサーシップ契約を結ぶので、もちろんスポンサー料に応じた現地での企業ロゴの露出はあります。ですが、この制度にはもっと魅力的なことがあるんです」と聞く者の興味を引く。

 横浜F・マリノスは2013年7月にタイのスパンブリーFC、9月にミャンマーのヤンゴン・ユナイテッドFCとパートナーシップ提携を結んでおり、サッカーの技術指導はもちろん、経営のアドバイスなどを行っている。その見返りに、横浜F・マリノスをとおして各クラブのスポンサーになった企業については現地でのビジネスのお手伝いをするというものだ。

「私どもは医療環境衛生の整備をするためにミャンマーへの進出を目指しています。そこでF・マリノスさんとパートナーシップ協定を結ぶミャンマーのヤンゴンにある、ヤンゴン・ユナイテッドFCとスポンサー契約をさせていただきました。この制度を利用してミャンマーへの進出を計画しているわけです。ミャンマーは急速な経済発展をしていますが、医療環境は充実しているとは言えません。富裕層は高度医療を受けるために隣国へ行きますが、ミャンマーの医師は知識も技術もある。ただ、それを生かせる環境が整っていないだけなんです。そこで弊社は小さい会社ですが、その現状を変えていきたい。日本の医療機器、医療技術、医療資材、そして医療従事者をミャンマーへ持ち込み、ミャンマーの医療環境の水準の向上を目指したいと考えています。我々のような小さな会社は、夢はあっても実現は難しい。でも、このアジアパートナー制度を使うことで、一気にその目標実現が見えてくるわけです」

 まだまだ夢の実現に向けて走り続けている最中だが、「この制度を利用することによって他の手段を選択するよりも確実に成功への確率が高くなり、成功までのスピードが近くなる、非常に素晴らしい制度だと思っている。この制度には感謝している」とすでに手応えを感じている。そして「アジアへの進出を考えている方はぜひ、アジアパートナー制度を利用していただきたい。我々もミャンマーで成功して、そしてまた、ここで結果報告ができることを期待したい」と力強く語った。

ジヤトコ株式会社 常務執行役員&CIOの沢井晴美氏

 最後に、横浜F・マリノスと同じ日産自動車グループのトランスミッション専業メーカーで、その中でもCVT(無段変速機)で世界シェアNo.1のジヤトコ株式会社 常務執行役員&CIOの沢井晴美氏が「スポンサーシップにおける横浜F・マリノスとの協働」をテーマに講演を行った。

「私どもの活動は、弊社のビジネスに直接的には結びつきません」と語る沢井氏は、横浜F・マリノスへのスポンサーシップを「単なる協賛ではなくて、社内外のPRに最大限に活用しようと考えている」と新しい考えを披露した。「特に昨今はQoL(クオリティー・オブ・ライフ)や働き方改革などが話題になっていますが、従業員のモチベーションをしっかり上げて、それをまた会社に生かしてもらいたいと考えています。サッカーを軸としたスポンサーシップや、社会貢献活動の取り組みなどは、結果として、従業員のモチベーションの向上や一体感の醸成につながります」。

 ジヤトコがスポンサーシップ概要として具体的に紹介したのは、以下の3つ。

①クラブスポンサーとしての活動
②新関東理工系リーグの協賛
③フトゥーロカップの協賛

 ①については、冠試合の権利を活用してスポンサーシップを従業員に還元。同じチームをみんなで応援することで会社としての一体感を募っている。「サッカーを軸として、より多くの従業員が参加できるイベントとして、冠試合「One JATCO day」を実施しています。グローバルで約14,000人の従業員がいますが、従業員の家族も含め約1,000人がスタジアムに集まってくれています」。また試合前には従業員のフットサル大会を実施したり、サッカー教室を開いたり、従業員の家族も含めて楽しんでもらえているという。「従業員の子どもたちには抽選でエスコートキッズとして選手と手をつないで入場したり、One JATCOタオルを準備したり、従業員が一丸となってF・マリノスを応援できる取り組みを行っています」。

 その一方で、「お客様に直接お見せする商品ではないので、トランスミッションを作っている会社だと名前を認知してもらいたい」との思いから、②新関東理工系リーグを横浜F・マリノスと一緒に2013年から協賛している。「大学生でサッカーをやっている人だけでなく、人づたいで情報として広がっていってリクルートにもつながっています」とサッカーをうまく活用した好事例を発表した。

 横浜F・マリノスとの協働としてはもう一つ、2015年から協賛開催している③フトゥーロカップがある。「知的障がい者の方々のサッカーチームの大会を企画しながら、スポンサーシップに関連した社会貢献活動として実施しています」と沢井氏。協賛だけでなく、従業員のボランティアを募って大会のサポートも行っており、もともと「よき企業市民」として力を入れている植樹や清掃などの社会貢献活動の一つとしてフトゥーロカップにも力を入れているようだ。

「従業員のモチベーションをしっかりと上げていくこと。学生に広げていってリクルートにつなげていくことを狙いつつ、今後ともF・マリノスをサポートしながら、こういった活動を続けていきたい」。沢井氏はそう語って、講演を締めくくった。

By サッカーキング編集部

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