2017.05.19

【ライターコラムfrom京都】FW闘莉王に代わり守備を支える下畠翔吾 “心の強さ”で勝負する生え抜きの雑草系DF

第10節の大分戦で今季初出場した下畠は5試合連続で先発フル出場を果たしている [写真]=J.LEAGUE PHOTOS
京都サンガF.C.を中心に取材するサッカーライター

 第8節・愛媛戦から負けなしの試合が続いている京都サンガF.C.。FW起用されている田中マルクス闘莉王が攻撃面で強烈な存在感を放つ中、守備面では下畠翔吾が地味ながら確かな貢献を見せている。4月29日のJ2リーグ第10節・大分トリニータ戦で今季初出場を果たすと、そこから高橋祐治とのコンビで最終ラインに安定感をもたらしている。

 キッカケはセンターバックの人材不足だった。闘莉王が前線へ移り、そこに負傷者が重なったことで下畠に出番が回ってきた。開幕前の序列はサイドバックの控えだったが、練習や練習試合を通じて今季から指揮を取る布部陽功監督が求めるものを体現して、少しずつ可能性を手繰り寄せていった。

 布部監督は下畠を抜擢したことについて聞かれると「安定感ですね」と即答した後に「彼はどんな状況でも、自分がいま何をすべきなのかを理解して取り組むことができる」と続けた。たとえばコーチング。布部監督は就任当初から声を出して意思疎通を図ることの重要性を選手に訴えていた。下畠は「DFラインの声でリズムを作る、というのが自分にはあまりなかった。そこは変わってきたのかな」と話している。前線の高さを生かす戦術にシフトしてからは、近くだけでなく遠くを見てプレーする意識も高まってきた。

闘莉王(左)のFW起用と守備陣の離脱者続出によって得たチャンスを見事に生かした [写真]=J.LEAGUE PHOTOS

 本職は右サイドバックだが、最終ラインならどこでもこなせるユーティリティー性でチームの苦境を支えて、そのままスタメンに定着する。思えば昨年も先発に定着しはじめたのは4月に入ってからだった。「今年も翔吾の季節がやってきたね」。練習場ではそんな声も聞こえてくる。

 強さや高さやスピードなどに優れたタイプではない。身体能力だけでいえば“持たざるもの”だ。そんな彼がピッチに立てるのは、敵味方の特徴や試合展開などを踏まえた状況判断を磨き続けてきたからだ。マークやカバーリング、その為に適したポジショニングや体の向きで粘り強く相手と対峙し、一人で駄目ならチームメイトとの関係性でボールを奪いにいく。また、守備戦術がマンツーマン気味からゾーンディフェンスへ変更されたことも、下畠にとっては追い風となった。

 アカデミー生え抜きでクラブ在籍10年目を迎える雑草系DFの最大の強みは、どんな状況でも下を向かないメンタリティーだ。出場機会の有無に関わらず日々の取り組みで手を抜かない姿勢は、石丸清隆・前監督も「あいつがいると安心する」と称賛。プロ1年目の下畠を天皇杯決勝という大舞台で公式戦デビューさせた大木武も、地道な取り組みで自分に出来ることを少しずつ増やしていけるパーソナリティーを評価していた。そして布部監督の下でも、着実に信頼をつかみつつある。

 取材の最後に、本人にこんな質問をぶつけてみた。

「下畠翔吾の良さって、どんなもの?」

 彼は少し苦笑いを浮かべた後、こう答えてくれた。

「自分の能力を練習でも試合でも100%出せることですかね」

 それ以上のプレーはできない。でも、今の自分にできることは出し切ってみせる。そして、その先には昨日よりも少しだけ強くなった自分がいるはずだから。内なる闘志を燃やして、下畠はピッチ上で戦い続ける。

文=雨堤俊祐

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