2017.05.15

【ライターコラムfrom清水】全国大会4連続優勝! 清水ジュニアユースの強さの秘密とは?

JFAプレミアカップを制した清水エスパルスジュニアユース ©S-PULSE
スポーツ専門誌の編集者を経て、95年からフリーのスポーツライターに。静岡に拠点を置き、県内のチームを中心に取材を行っている。

「エスパルス強し」

 ゴールデンウィーク中(5月3日~5日)に行われたジュニアユースの全国大会「JFAプレミアカップ2017」を観戦したサッカー関係者は、少なからずその思いを強くしたはずだ。

 清水エスパルスジュニアユースは昨年、U-15年代の3つの全国大会で三冠を成し遂げ、メンバーが入れ替わった今年もプレミアカップで連覇して、4大会連続の全国制覇。しかも、その勝ち方は昨年のチーム以上の圧勝だった。

 3日間で5試合を戦うハードスケジュールで試合時間は60分だったが、全て2点差以上をつけての完勝。ほぼ相手陣内で戦うハーフコートゲームになる時間が長く、フィニッシュの面で課題が見られた分、ゴール数は伸びなかったが、決定機の回数からいえば、もっと点差がついて然るべきだった。とくに、事実上の決勝戦と言われた準決勝のセレッソ大阪U-15戦でも、60分間ずっと主導権を握り続けて、まったく危なげなく快勝(2-0)したことは、観る者に強い印象を残した。

名古屋との決勝戦の様子 ©S-PULSE

 そんな強さの最大の要因は、ボールを“奪う力”で相手を圧倒していたことにある。ボールを失った瞬間に素早く守備に切り替え、前線から積極的にプレスをかけて囲い込み、すぐに奪い返してしまう。1対1の勝負で体格差があっても当たり負けすることなく、タイミング良く足を出してボールを引っかける場面が非常に目立った。そして、奪ったボールは簡単に失うことなく確実につなぎながら、狙えるときはDFラインの裏やサイドを突いて相手ゴールに迫っていく。そのため相手にゴール前まで押し込まれる場面が少なく、自ずとワンサイドゲームになっていった。

 今年のチームの特徴について、彼らを1年生のときから指導してきた横山貴之監督は次のように語る。

「ボール際のところでしっかりボールに行けて、そこでの球際の強さもあると思います。それが1回で終わらない連続性が、個人でもあるし、周りとの連動でも出せていた。こぼれたところの次を狙うのも早いですね」

選手に指示を送る横山監督 ©S-PULSE

 特筆すべきは、そうした球際の強さが、パワーに頼ったものではないということだ。他チームと比べて体格で勝っているわけではないが、身体の芯が安定し、よく足が動く、足が出るという特徴が、選手全員に共通している。

 準決勝をスタンドで観ていたとき、近くにいた中学生たちが「エスパルス(の選手)は小さいけどボディバランスがいいよね」と感嘆していたが、それは誰が見ても違いとして感じられる特徴だった。

 その背景には、現在清水の育成部門が積極的に推し進めている「アスリート育成プロジェクト」がある。ボールを扱う技術だけでなく、姿勢の矯正、体幹の強化、食事の指導などによって、将来につながるアスリートとしての基盤を育成年代から培っていこうという取り組みだ。

 そのうち姿勢の矯正という面は、2015年に就任した齋藤佳久トレーナー(理学療法士)を中心に進めているもの。「すべての動作のスタート地点として、身体の基本姿勢が正しく整っていなければ、効率の良い動きはできないと思います」(齋藤)という考え方から始まっている。

握手をして選手を送り出す齋藤トレーナー ©S-PULSE

 学校で授業を受けているときの座り姿勢や歩いているときの姿勢といった日常の姿勢に始まり、プレー中も姿勢について細かく指導している。それも単純に背筋を伸ばすということだけでなく、骨盤の前傾や重心の位置などにも指導が及ぶ。

 そう言われて横山監督の話を聞いているときの様子を見ると、選手全員の背筋がピンと伸び、顔が上がって、監督の目を見ながら話を聞いている姿が印象的だった。中田英寿や本田圭佑、長友佑都といった海外のトップリーグでも当たり負けすることなく、自分の力を発揮できた選手に共通するのも“姿勢の良さ”だ。

横山監督の指示を聞く選手たち ©S-PULSE

 それと並行して、体幹やバランスの強化にも取り組み、週2回は練習後に夕食を用意し、理想とされる運動後30分以内に食事をとれる体制を整えている。父兄に対する栄養指導も欠かさず、肉体的な成長を促すことにも意欲的に取り組んでいる。

「今の子どもたちは外遊びの経験が少ないし、サッカーしか教わってきてないので、サッカーはできるけど体育の成績は悪いとか、側転や前転・後転がうまくできないとか……。サッカーの前に、まずアスリートじゃないなと感じる子が多かったんですよ」

 齋藤トレーナーは、このプロジェクトを提唱したきっかけをこう語る。その考えに共感して新任トレーナーを強力にサポートしたのが掛川誠GKコーチで、食事の導入にも尽力し、プロジェクトを円滑に進めるうえで大きな役割を果たしてきた。横山監督も個人個人の攻守における1対1の強さや、予測に基づいた対応という部分には以前からこだわっており、齋藤と連携しながら2年間地道な強化を図ってきた。

戦況を見守る掛川GKコーチ ©S-PULSE

「ボール際の強さは、中1のときから齋藤と一緒に取り組んできている成果がはっきりと出ていると感じます。その意味では(2連覇は)クラブ全体で出せた成果かなと感じています」(横山監督)

 齋藤の指導を1年生の頃から受けてきた初めての世代が、今の3年生。当初は実験的な試みだったが、昨年から大きな成果が出始め、今は地域の他チームにも影響を与えつつある。トップチームの小林伸二監督も「今のうちからそういうものを持っているのは、必ず将来に生きてきます。練習で守備がぬるかったら攻撃も伸びないですし、すごく大事なところをやってくれていると思います」とお墨付きを与える。

 選手たちの目標はもちろん2年連続の三冠だが、コーチングスタッフたちはもっと先の成功をしっかりと見据えている。

文=前島芳雄

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